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ツカザキ病院眼科 疾患説明シリーズ Part3 流涙について ツカザキ病院眼科 疾患説明シリーズ Part3 流涙について

はじめに
流涙って?
はじめに
涙液は、目の表面を乾燥から防いだり、感染から目を保護したり、酸素やビタミンなどを供給したり、といった役割を持った液体です。涙液は、主に上眼瞼の奥にある涙腺という組織から常に分泌され、10%は蒸発し、90%は涙道を通って鼻からノドへと排出されます。この流れが無意識の間に起きています。
はじめに
原因は?
涙が多くて困る、という症状を流涙症と言いますが、原因は様々です。涙の分泌が少ない「ドライアイ」の症状として、「涙が多い」と訴えることも稀ではありません。白内障の原因として、実際に涙が多いわけではないにもかかわらず「涙が多い」と訴える方もいます。
しかしながら、代表的な原因はなんといっても、涙道での涙の通過が障害されてしまう「涙道閉塞」です。。
療法は?
涙道閉塞の治療には、主に ①涙管チューブ挿入術 と ②涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ) があります。
①涙管チューブ挿入術
閉塞してしまった涙道を再開通させ、シリコンやポリウレタンでできた「涙管チューブ」を涙道に留置します。以前は手探りで行っていた治療でしたが、近年、涙道内視鏡という涙道内を見るカメラが開発され、当科ではこれを用いて閉塞部を確認しながら治療を行っています。
涙管チューブは約2か月後に抜きますが、それまでの間もほとんど違和感なく、通常通りの日常生活を行うことができます。
①涙管チューブ挿入術
②涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ)
涙道の中でも、鼻涙管という部分が強く閉塞してしまって、上述の涙管チューブ挿入術では対応できない症例や、涙嚢(るいのう)という部分に炎症を起こしている症例に適応となります。涙道と鼻腔の間に、新たな涙の通り道を作る手術なのですが、涙道と鼻腔の間には薄い骨の壁がありますので、この骨に窓を開ける必要があります。鼻の付け根のあたりの皮膚を切開して、そこから手術を行う鼻外法と、鼻の中から内視鏡を用いて行う鼻内法に大別されますが、当科では可能な限り鼻内法で治療を行っています。鼻外法と鼻内法では術後成績に違いはありませんが、鼻内法は顔面に切開のあとを残さないというメリットがあります。重篤な心・呼吸器疾患などのリスクのない方は、原則として全身麻酔で手術を行います。
②涙嚢鼻腔吻合術
流涙症術前、術後比較写真
小児の流涙症 小児の流涙症
生まれたときに、鼻涙管の鼻への出口(鼻涙管開口部)が膜状に閉塞した状態だと、流涙やメヤニの原因となりますが、これを先天鼻涙管閉塞と呼びます。従来は、ブジーと呼ばれる針金状の器具を涙点から手探りで挿入し、膜状の閉塞を破るという治療が広く行われてきました。患児を押さえつけて行う必要があるのですが、暴れられると治療が危険で困難なものとなります。そのため、なるべく小さいうちにというのが常識だったのですが、最近では考え方が少し変わってきています。というのは、1歳までに90%近くが自然治癒するということが分かってきたため、あえて不確実な手探りの手技を行うことが疑問視されるようになったのです。統一的な見解というのはまだありませんが、当科では1歳半までは自然治癒を期待して経過観察し、自然治癒しなかった症例に対しては全身麻酔下で涙道内視鏡を用いて確実に治療することを基本方針としています。
本日は、ツカザキ病院眼科の涙治療の責任者である今村先生にお話しを伺います。

流涙について

  • 田淵
    なみだが多くて困ると訴える方は多いですねえ。
    でもなかなか良い治療法が一般眼科医には提示できないわけですが。
    どうでしょうか、「なみだ」でお困りの方を治せるようになって来てるんでしょうか?
    今村
    ドライアイはその言葉とともに一般にも認知され、積極的に治療されていますが、逆に涙が多いという訴えに対しては「少ないよりマシです」などと言って切り捨てとも言えるごまかしで済まされていることが多いと聞きます。しかし、原因にもよりますが、多くの場合は治療が可能で、喜ばれるかたが非常に多いんですよ。
  • 田淵
    「なみだがよく出る」という症状でも、原因となる病気がいろいろあるんですか。
    今村
    その通りです。涙は上のまぶたの奥にある涙腺という組織で作られ、常時少しずつ分泌されていますが、その大半は目頭にある涙点という小さな穴から涙道という管を通って鼻のほうに排出されるようになっています。その涙道が閉塞してしまうことによって、涙が多いという症状が出ていることが多いです。しかしながら、逆にドライアイの症状として涙が多いと訴えるかたもいます。その他、さかまつ毛や結膜弛緩症、白内障などで涙を訴えるかたもいますね。
  • 田淵
    なるほど。なみだの原因がなんであるかによって、治療方法が変わってくるんですね。
    今村
    そうですね。ですので、一人であれこれ悩むより専門医の診察を受けることが必要です。治療は早いほうが良い場合が多いですし。
    流涙インタビュー
  • 田淵
    となると、なみだの原因となる疾患を
    診断する技術が必要になるんですね。
    今村
    原因となる疾患を見極めるには知識と経験が必要ですし、たとえば涙道の閉塞なら涙道のどの部位が閉塞しているのかを診断する必要もありますね。
    緑内障インタビュー

まずは診断

  • 田淵
    どんな方法や検査で診断するんでしょうか?
    今村
    涙道の閉塞に関しては、外来ではまず通水検査というのを行います。これは、先の丸まった特殊な針を涙点から挿入し、水を送るという手軽な検査です。水がスムーズに鼻まで流れなければどこかが閉塞していることを意味します。さらに針の感触によって、だいたいどこが閉塞しているのかを知ることができます。
  • 流涙インタビュー
    田淵
    検査には痛みが伴うんでしょうか?
    今村
    患者さんの生まれ持った性質にもよりますが、痛みを言われることは少ないですね。
    仮に強い痛みを訴えられた場合は無理せず中断しています。

治療法

  • 田淵
    診断がついたら、どんな治療法があるんでしょうか?
    今村
    涙道の閉塞に対する治療法として代表的なのは、「涙管チューブ挿入術」と「涙嚢鼻腔吻合術(DCR)」という二つの手術です。
  • 田淵
    涙道閉塞を治療するかどうかの判断は何を基準に行うんでしょうか?
    ちなみに、絶対に手術した方がよい状態というのはあるんでしょうか?
    今村
    目の表面の涙のたまり具合を調べて多くたまっているかどうか、また涙の分泌量がどうか、などを総合的に判断します。たとえば、涙道閉塞にドライアイを合併している場合があり、涙道閉塞を治療することによって今度は逆に目が乾くという症状に悩むことになる可能性があるため、判断は慎重でなくてはいけません。つまり、治療しないほうが良い場合もあるということです。
    涙嚢炎といって、涙の通り道の涙嚢という部分に細菌による炎症を起こしている場合には、手術による治療が必要です。
  • 田淵
    睫毛乱生(さかまつ毛)治療は、どんな治療なんでしょうか?
    日帰りでできますか?
    今村
    軽度のものであれば、原因となっているさかまつ毛の毛根を破壊する「睫毛電気分解」という治療が有効です。局所麻酔をしてから極細の針をまつ毛の毛根に差し込み、通電することによって毛根を破壊します。もちろん日帰りでできます。ただし、しつこくまつ毛がまた伸びてくるケースも多く、何度か治療しないといけない場合があることも知っておいてもらいます。
    重症の場合は、眼瞼手術の専門医によるlid splitという手術が有効です。
  • 田淵
    ツカザキ病院眼科には眼瞼専門の清水好恵先生がおられますから、
    科内で医師同士で連携して診療を行っておられるという事ですね。
    結膜弛緩症治療は、どんな治療なんでしょうか?日帰りでできますか?
    今村
    ①たるんだ結膜を切り取って縫い合わせる方法
    ②バイポーラという止血用の血管凝固器具を利用して、たるんだ結膜に帯状に軽くやけどの痕をわざと作り、
    やけどの痕は縮むという性質を利用してたるみを取る方法
    の2つがありますが、当院では主に②の方法をとっており、喜ばれるかたが多いです。
    手術時間は数分で、日帰り手術です。術後しばらく点眼治療を行います。
結膜弛緩症 手術前 前眼部写真
[結膜弛緩症 手術前 前眼部写真]
矢印部がたるんだ結膜。このたるんだ結膜により瞬目に伴う違和感や、結膜嚢にたまる事の出来る涙の量が少なくなり流涙症状の原因となる
結膜弛緩症 手術後 前眼部写真
[結膜弛緩症 手術後 前眼部写真 ]
上の術前写真の同一部の術後写真。矢印の部分の結膜弛緩が改善されている。
  • 田淵
    涙管チューブ挿入術は、どんな治療なんでしょうか?日帰りでできますか?
    術後診察の流れはどんなもんでしょうか?
    今村
    涙管チューブ挿入術は、閉塞しているところを開通させ、涙点から鼻の中の開口部まで細いチューブを留置するもので、切っ
    たり縫ったりはしません。以前は、術者の手探りで行われていた治療でしたが、近年は涙道内視鏡といって涙道の中を見る非
    常に小さなカメラが開発されていて、より確実にチューブを留置することができるようになりました。
    日帰り手術で行っており、手術時間は数分~20分程度です。
    術翌日の診察後は2週間ごとに通院していただき、2か月後にチューブを抜いています。
  • 田淵
    涙嚢鼻腔吻合術(DCR)は、どんな治療なんでしょうか?日帰りでできますか?
    術後診察の流れはどんなもんでしょうか?
    今村
    涙道の中の涙嚢という部位と、鼻の奥のほうに、新たな涙の通り道を作る手術です。涙嚢と鼻の間には薄い骨の壁がありますので、その骨の壁に穴をあけて、バイパスを作ることによって、スムーズに涙が鼻のほうに流れるようにします。
    当院では鼻の中から手術を行う鼻内法という手術方法を採用していますので、顔面に傷を作るのを避けることができます。
    日帰り手術を行っている施設もありますが、術後の鼻血の管理のため、当院では現在7日間の入院を原則としています。また、全身麻酔のリスクのない患者さんには全身麻酔で手術を行っています。
    退院後は2週間ごとに通院していただき、2か月後に手術の際留置したチューブを抜いています。
  • 田淵
    治療効果や治療成績を教えて下さい。
    今村
    涙道手術の治療効果はてきめんに出る場合が多いです。
    涙管チューブ挿入術は、術後の経過が良好であった方は80%程度で、残りの20%程度の方は再度涙管チューブ挿入術を行うか、涙嚢鼻腔吻合術(DCR)などの他の治療が必要となります。
    DCRはここ数年で97%は術後の経過が良好で、3%に再発がありましたが、再手術後の経過は良好です。
    流涙インタビュー
  • 田淵
    先生の臨床上の現在のテーマは何でしょうか?
    今村
    自分の診断・治療能力を向上させ、より患者さんへの負担を軽減することはもちろんですが、原因不明の流涙症も実際には多く存在しており、その原因を探って臨床に役立たせることを念頭に診療にあたっています。今現在は、臨床研究として手術法による自覚症状の変化を心理物理学的に定量分析するとともに、治療効果そのものも前眼部OCTというレーザー装置を使って涙液量を精密に計測して客観的な方法で行うという試みを行っています。
  • 流涙についてインタビュー
    [前眼部OCTによる涙液量計測]
    ツカザキ病院眼科では、従来計測が難しかった涙の貯留量を前眼部OCTを用いる事で、精密に計測し涙道治療の効果判定に用いています。
  • 田淵
    ツカザキ病院眼科の涙道治療責任者として未来像を教えて下さい。
    今村
    近年、眼科の取り扱う分野の中でも放置されていた感のある涙道診療が変革の時代に入り、進歩を見せています。世界でも多くの医師が新たな治療に取り組んでおり、今では想像もつかないような治療法が現れることは間違いありません。当院ではこの流れに遅れることのないのはもちろんのこと、当院から有益な情報を発信して世界的に貢献できるようになることを願っております。
流涙でお悩みの方は、どうぞお気軽に当科を受診下さい。
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