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腹部大動脈瘤の手術

腹部大動脈とは?

大動脈 イメージ

腹部の内臓や足に血液を送る太い血管(直径約2cm)を腹部大動脈と言います。この壁が弱くなって、局所的にふくれた状態(正常の約1.5倍以上(直径約3cm以上))が腹部大動脈瘤です。原因の大半が動脈硬化によりますが、塩分の高い食事習慣や、喫煙といった生活習慣により、動脈に起こる変化です。特に高血圧の方、コレステロールの高い方、糖尿病の病気のある人では動脈瘤のリスクが高くなると言われています。また血管の炎症(感染などに伴う)で、動脈瘤は起こることもあります。

大動脈瘤は、その形から壁の一部が膨らんで瘤になった場合(嚢状大動脈瘤)と、大動脈の壁が全周にわたって膨らんだ場合(紡錘状大動脈瘤)に分けられます。

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どのような症状?

腹部大動脈瘤の厄介なところは、破裂するまでは痛みもほとんどなく、瘤があっても気付かない場合も多いことです。お腹を触ってみて拍動性の(脈をうつ)“こぶ”に気付いて、初めて受診される場合もありますが、多くの患者様は超音波検査やCT検査にてたまたま発見されることとなります。破裂する寸前まで症状がないという非常に恐ろしい疾患なのです。一方で破裂してしまった場合の症状は激烈で、急激な腹痛、腰痛を自覚し、大量出血にて腹部は膨満し、血圧が低下(ショック状態)し、意識を失います。突然死の原因となる疾患です。

放っておいたらどうなるの?

残念ながら、一旦こぶのように動脈が膨らんでしまうと元には戻りません。治療しない限り、徐々に多きくなり最終的には破裂する危険性が伴います。瘤が破裂してしまうともその死亡率は80〜90%(1)にも上るといわれています。一旦腹部大動脈瘤と診断されましたら、日々必ず守ってほしいのは血圧のコントロール(130/80mmHg以下)と禁煙です。症状がないからといって何年も放置するのは危険で、必ず定期的な経過観察が必要で、治療が必要なサイズになれば速やかに治療をすることが重要です。

破裂は予想できるの?

大動脈 イメージ
瘤の大きさや形である程度は判断できます。一般的には風船と同じで膨らめば膨らむほど破裂しやすくなります。1年の破裂率はおおよそ大きさが5cm以下のものでは約0.5〜5%、5~6cmでは3~15%、6cm以上では10~20%といわれております(1)。従って6cm以上の腹部大動脈瘤を有する方では、5年以内に半分以上の方が破裂するということになります。もちろんこれだけでなく、高血圧・喫煙等の様々な理由で破裂の危険は高まります。また大動脈瘤破裂の発生率は女性の方が、男性より4倍高いとも言われております。

治療法は?

いったん動脈瘤ができてしまうと、自然に縮小することはなく、残念ながら現時点では、有効な薬物療法もありません。従って、腹部大動脈瘤は破裂する前に外科的手術治療をするのが原則です。

ではいつ治療したら良いの?

症状のない腹部大動脈瘤の手術目的は、前述のように破裂予防であります。欧米では腹部大動脈瘤の大きさが55mm以上を手術の適応としております。日本では手術成績の成績が良いことから、手術の適応を径50mm以上としている施設も多いです(1)。また拡大するスピードも破裂に関係しており、半年に5mm以上拡大する場合は手術の適応になります。また上記の嚢状瘤の場合、形態によっては破裂の危険が高いこともあり、サイズに関係なく手術適応となる場合もあります。

外科的手術法とは?

手術方法は大きく分けて2通りの方法があります。まず一つ目は大動脈瘤を切除し人工血管に置き換える人工血管置換術です。そしてもう一つはカテーテルを用いて大動脈瘤内に、人工血管にステントといわれるバネ状の金属を取り付けたステントグラフトと呼ばれる医療器具を留置するステントグラフト内挿術です。これら二つの手術法の特徴を示しします。

ステントグラフト挿入術 人工血管置換術
方法 カテーテルを用いて大動脈瘤内にステントグラフトを留置する 腹部を切開して大動脈瘤を切除して人工血管に置換する
手術による切開部位 両足の付け根(鼠径部) 腹部
長所
  • ・人工血管置換術と比較して低侵襲
  • ・動脈瘤の形によらず手術可能
  • ・根治的
短所
  • ・瘤の形や動脈硬化の程度によっては解剖学的に適応にならない
  • ・定期的なCT検査が必要
  • ・追加治療が必要になることもある
  • ・お腹を切る開腹手術であり、ステントグラフト挿入術と比較して体の負担が大きい
入院期間 術後5日程度 術後10日程度
人工血管置換術
方法 腹部を切開して大動脈瘤を切除して人工血管に置換する
手術による切開部位 腹部
長所
  • ・動脈瘤の形によらず手術可能
  • ・根治的
短所
  • ・お腹を切る開腹手術であり、ステントグラフト挿入術と比較して体の負担が大きい
入院期間 術後10日程度

根治性を取るなら人工血管置換術が勝っており、低侵襲性という観点ではステントグラフト内挿術に軍配が上がります。

低侵襲という意味で、患者様からはステントグラフト内挿術を希望される声も多いのですが、そもそもステントグラフト治療は大動脈瘤の形態や位置、カテーテルを挿入する動脈の状態などで解剖学的に適応とならない(できない)場合もあります。

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ツカザキ病院での治療方針の決定法

ツカザキ病院には人工血管置換術、ステントグラフト内挿術、両方の治療に多数の経験をもつ専門医が在籍しております。患者様の全身を精査したのち、腹部大動脈瘤の位置や形状、動脈硬化の程度などを詳細に検討し、その患者様に最適と思われる治療法を提案させていただくこととなります。最終的には患者様の希望も十分に考慮し、どちらの治療を行うか決定していくこととなります。

人工血管置換術の場合術後10日程度、ステントグラフト内挿術の場合術後5日程度のリハビリテーションを行い退院することとなりますが、退院後も責任を持って外来通院にて術後フォローアップをさせていただいております。

また腹部大動脈瘤が破裂してしまった場合、突然の腹痛やショックなど命を争う一大事となりますが、その際は一刻も早い手術のみが命を救う手段となります。当院ではそのようは緊急患者様も24時間365日受け入れ、手術が行える体制を整えております。大切な命を救えるようチーム一丸となって日々診療にあたっております。

最後に

腹部大動脈瘤は破裂するまで症状が出ない恐ろしい病気です。当院では患者さまに最も適切な治療を提供できるよう心がけております。ご不明な点がありましたら外来担当医にお気軽に御相談ください。

(1)2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離ガイドラインより
【文責:心臓血管外科 石神修大、田内祐也】
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