ページトップへ

当院へのアクセス 079-272-8555
三栄会のご紹介
文字サイズ
検索
079-272-8555
アクセス
愛と情熱の脳神経外科BLOG
Top > 愛と情熱の脳神経外科BLOG > 10年楽しい。その先はもっと楽しい。

アーカイブ

  1. 2018
2018.11.30

10年楽しい。その先はもっと楽しい。

 学生時代、ポリクリ(病院実習みたいなものです)を回っていた時のお話。

 心臓血管外科で僕が出したレポートが教官の目に留まり、「良く書けてるじゃないか。お前、心臓血管外科入れよ」と言われました(教官は学生を教室に勧誘するのがお仕事なので、無理やり褒めただけかもしれません)。

 ここで「入ります!」と言ってしまえばそれで物語は終わりなのですが、心臓血管外科といえば脳神経外科と並んで緊急が多く、また入って10年は人工心肺を回すなどの下積みで、10年目からようやくメスを握れるといわれる超過酷な科です。
 当時の僕には、そういう過酷な科に行こうとは、これっぽっちも思っていませんでした。どっちかといえば、「マイナー」と言われる、比較的楽な科志望だったのです。

そんな学生だった僕は教官に答えて言いました。
「でも先生、心臓血管外科なんて入ったら、最初の10年はメスを握れないっていうじゃないですか。10年下積みって、僕耐えられないですよ」

ああ、大学病院の激務の中、わざわざ時間をとって会って下さった先生に、なんて馬鹿で無礼な答えでしょう。当時の僕を叱り飛ばしてやりたいですが、時間は元に戻りません。
しかしその教官は、僕をみて微笑んで言いました。

 「そうかもしれない。でもな、廣瀬、考えてみろ。例えばお前が40年働くとする。〇科や〇〇科の先生は、入って5年もすれば、医局内で肩たたきが始まる。「君、開業しなさい」ってな。その後35年間は、その5年で得た知識で生きていかなきゃいけないんだ。退屈すぎないか?
しかし俺たちは、10年メスを握れなくても、その10年間、下働きかもしれないが毎日新しい勉強ができるんだ。そしてメスを握れば、さらに新しい道が開ける。これって素晴らしいことだと思わないか?」

 これには僕もグッと来ました。そうか、そういう考え方もあるのか…。
 残念ながら、当時の僕はこういうありがたい話をしていただいても、メジャーな科へ挑戦しようとはしませんでしたが、その言葉は強く心に残りました。

僕が脳神経外科という、一番救急が多く、若手は「病院に住んでいる」と言われるくらい帰れない、そんな科を選択するのは、それから3年後。研修医1年目のことでした。最終的に決断したその時、背中を押してくれたのが教官の言葉でした。

その後10年以上、やはり大変な思いをしましたが、全く後悔しておりません。
ただただ楽しかったのです。

 あの教官にお会いしなければ、僕の人生はどうなっていたんだろうと、ふと考えることがあります。
 やりたいこともなく、ただ楽だ。という理由だけでマイナー科を選択していれば、それこそ正当な理由からマイナー科を選んだ先生には太刀打ちできず、ひどい医者になっていたのではないでしょうか。

 たぶん、人がキャリアを形成する上において、易な道と困難な道があるとするならば、困難な道を選んだほうがよいのでしょうね。

地域の先生方へ(紹介手順)