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愛と情熱の脳神経外科BLOG
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2019.02.19

魔法の一言

 5年目の、まだ駆け出し脳神経外科医だった頃。高血圧・糖尿病放置。肥満、アルコール依存症の患者さんが救急車で運ばれてきました。検査の結果、「脳出血です」と病名を告げたところ、初対面にもかかわらず、「お前のせいでこんな病気になったんや!」と言われ「えー!?」と思った経験のある廣瀬です。皆様健康にはお気をつけください。

 さて、初対面の患者さんに「お前のせい」と言われたというのはさておき、結構医者にけんか腰でつっかかってくる患者さんは多いです。特に交通事故の患者さんや、酔っぱらって転倒し、頭から血を流して運ばれてくる患者さんに多いですね。
 事故に遭った混乱や不安、酔っぱらった挙句に救急車で運ばれた恥ずかしさなどが「怒り」に変化し、一番近くにいる人間。すなわち「医者」にぶつけてしまうのでしょう。
 酔っ払いの人などは、暴力行為を働く方も見えます。殴られた医者も大勢知っています。しかし、僕の場合、ここ10年、そういったトラブルとは無縁です。

 一体何故かって?それは「魔法の一言」を使うからです。

 患者さんが運ばれてきたとき、まず僕が発する言葉。なんでもない言葉なのですが、これが効きます。

「大変でしたね」

 交通事故を起こし、頭痛と頸部痛を訴える患者さん。まず目を合わせて、「脳神経外科の廣瀬と申します。〇〇さん、大変でしたね。今一番痛いところは何処ですか?」

 酔っ払い転倒し、頭から血を流して運ばれてきた泥酔患者さん。「××さん、大変でしたね。脳神経外科の廣瀬と申します。頭の他に痛いところはありませんか?」

 この「大変でしたね」の一言で、患者さんの怒りはスッと消えます。その後は病歴もサクサク取れますし、「何処も痛くない!帰る!」なんていう酔っ払いさんもいません。

 事故を起こして保険会社に電話したとき、「まず、お身体は大丈夫ですか?」と聞かれますよね。あれと同じ効果です。

 「大変でしたね」と一言添えるだけで、患者さんは、僕を、「自分に相対する医者」から、「自分の側に寄り添う医者」と、認識を改めてくれるのです。

ダメな医者ほど「どうしましたか?」なんて、いきなり本題に入ろうとします。その前に「僕はあなたを心配していますよ」という一言。「大変でしたね」を添えるだけ。それだけで患者さんはスッと楽になります。そして自分が何に苦しんでいるのか、きちんと伝えてくれるようになるのです。

 本当に簡単な一言なのですが、本当に患者さんを心配していなければ伝わらない言葉でもあります。そして、患者さんとの良好な関係が一瞬にして築けなければ、時間の無い救急現場では、大きな見落としをする可能性もあります。そのために編み出した必殺技が「大変でしたね」。

 なんだそんなことか!と思われるかもしれませんが、次、あなたが救急車で運ばれた時(無い方がもちろんいいのですが)、「大変でしたね」と一言、医者から声をかけられてみてください。スッと心が軽くなりますよ。

 医療従事者にとって、もちろん知識や技量が大切ですが、一番大切なのは患者さんとのコミュニケーション能力です。
 簡単な一言でも、患者さんの心をくるりといい方向に向けられる言葉があります。そんな言葉を、いつも探しています。より、患者さんに寄り添える医者になれるように。

画像:public domain

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