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ツカザキ病院眼科 疾患説明シリーズ Part21 弱視、およびその治療 ツカザキ病院眼科 疾患説明シリーズ Part21 弱視、およびその治療

弱視について

  • 田淵
    兵庫医科大学での研修を終えて当院に戻って来てもらいました、三好先生。早速ですが、「弱視」について教えてください。
    三好 「弱視」とは、子供の頃に何らかの理由で物をはっきりと見ることが出来なかった為に、目から入った映像を認識する脳の成長が止まってしまった状態をさします。弱視の判定をするときの視力には裸眼(眼鏡なし)視力ではなく、矯正(眼鏡を掛けた)視力を用いて行いますが、幼い頃に何らかの原因で視力の成長が止まると、成人後に一見病気がないのに矯正視力が低くなってしまいます。病気やケガで一度はよく見えていた方の視力が下がった状態は、医学的には「低視力」や「ロービジョン」と言い、弱視とは区別します。
  • 田淵
    「弱視」の人は眼鏡やコンタクトをしても視力が上がらないのですか?
  • 三好

    上がりません。子供の頃に視力の限界値が決まってしまうのです。

    田淵
    なるほど、小児期に視力が発達していく過程があり、その時期にうまく成長できていないと視力の限界が決まってしまうということですね。それについて「視力の可塑性」という難しい概念がありますが、分かり易く説明して頂けますか。
    弱視、およびその治療
  • 三好
    まず「可塑性」とは、物体に外から力が加わった際に形を変え、その力を取り去っても元に戻らない性質のことです。身近な例で言うと、紙粘土やプラスチックなどでしょうか。
    もともと人間は生まれた直後からはっきりものが見えているわけではありません。生まれた後に鮮明な映像を見ることによって、脳の中で映像を認識する機能が発達します。その時期を「視覚の感受性」期間と呼んでいます。視覚の感受性は、生後1か月から上昇し始め、1歳半頃ピークに達し、その後徐々に減衰して大体8歳頃までに完成すると言われています。その期間に脳にきちんと鮮明な映像が送られていなかった場合、映像を認識する脳の発達が出来なくなってしまうばかりか、機能が低下してしまう可能性があります。このように、視覚の感受性期間内では、視力は変化し得る性質を持つため、このことを「視力の可塑性」と言います。しかし、最近は年齢が上がっても治療によって視力が向上する可能性があると言われています。当院でも10代から改善したケースがありますが、改善しない事もあり、感受性期の早い時期から治療をするほうが圧倒的に有利です。
    弱視、およびその治療
  • 田淵
    身長に例えるとわかりやすいかもしれませんね。身長は中高生の時に最も伸びるように、視力が最も発達するのは1歳半からで、成人してから身長はあまり伸びなくなるように、視力の発達も年々難しくなっていくということに似ていますね。
    それでは、弱視の原因には、どのようなものがあるのでしょうか。
  • 三好
    原因として、①常にピントが合わず(強い遠視や乱視)、目の奥にはっきりとした映像が映らなかったり、②左右で大きく見え方が違う場合、③黒目やその奥に濁りがあり邪魔になる場合、④視線がずれていつも片目で見ている場合、などがあります。
    医学的には、①屈折異常弱視、②不同視弱視、③形態覚遮断弱視、④斜視弱視と呼びます。
  • 田淵
    なるほど、色々な原因がありますね。となると治療法というのも原因によって異なるのでしょうか。
  • 三好
    弱視の治療では、ピントが合わないことを直すためには、眼鏡を掛けてピントを合わせる治療をします。眼鏡を掛けても最初はよく見えませんが、続けていくと脳が成長してきて「ぼやけた像」が「はっきりした鮮明な像」として見えるようになります。眼鏡を掛けずに「ぼやけた像」のままでは視力は良くなりませんので、眼鏡を掛け続けることがとても大切になります。
    また、視力の悪い方の眼を使うことを促すために、視力の良い方の目に眼帯のような遮閉具(アイパッチ)を付けて治療を行います。視線がずれて片眼で見ている場合は、斜視手術による眼の位置の矯正を行うことがあります。黒目やその奥に凝りがあり、邪魔になる場合にはその原因への手術を行います。
  • 田淵
    屈折矯正を基本として、良い方の眼を一定時間遮閉(健眼遮閉)をしたり、外科的に手術をして原因疾患の治療をしたりと、バリエーションが色々あるのですね、今回は健眼遮閉による治療についてもう少し説明して頂けますか。
  • 三好
    健眼遮閉による治療は視力の良い方の目を遮閉し、視力の悪い目を積極的に使わせて発達を促す治療法です。良い方の目を遮閉するための道具は、絆創膏タイプ(アイパッチ)と眼鏡装着型の布製の遮閉具が販売されており、最近では色々なタイプのものが出ています。眼鏡を装着できない子供や、嫌がって遮閉具を使えない子にはアトロピンという1週間ほど見え方をぼやけさせる目薬を使用することもあります。
    弱視、およびその治療 弱視、およびその治療
  • 田淵
    なるほど、遮閉シールにも専用のものがあるんですね。治療開始してからの診察の頻度はどれくらいなのでしょうか。
  • 三好
    概ね1~4か月ごとの診察になると思います。それぞれの患者様の弱視の原因や年齢、視力の改善傾向などの状況に応じて判断していきます。
  • 田淵
    弱視治療は成功することが多いのでしょうか。
  • 三好
    弱視はそれぞれの患者様で原因が異なり、発症年齢や発見される年齢もそれぞれ異なっていますので、一概には言えません。しかし、弱視は早期に発見され適切な治療が受けられれば、その予後は概ね良好であると言えます。適切な治療のためには、眼鏡装用、健眼遮閉や点眼の治療をご家庭で継続して行って頂くことが非常に大切です。
  • 田淵
    当科の位置する姫路市では、姫路市眼科医会が中心となって、3歳児健診での弱視児童発見に熱心に取り組んでいます。弱視治療における3歳児健診の重要性についてご説明してもらえますか。
  • 三好

    とにかく弱視治療で大切なことは早期に発見して、早期に治療を開始することです。視覚の感受性期間をすぎてから治療を始めた場合、視力発達の可能性は残念ながら低くなってしまいます。そのため、3歳児健診は弱視を早期に発見するためにとても重要な機会です。3歳児健診での眼科検査は視力検査に加えて、機器を用いた屈折検査で遠視、乱視の程度やその左右差を測定しています。詳しくは各自治体のホームページをご覧ください。

    ▶ 3歳児健康診査(姫路市サイト)
  • 田淵
    眼科にはいつ行ったら良いのでしょうか。
  • 三好
    成人と同じような視力検査ができるのは3歳半頃から可能ですが、それ未満でも簡易視力検査が可能です。視線が合わないなどの症状がある場合は、早めに受診して頂くことが早期発見につながります。ただ、お子様の機嫌や状態によって検査に時間がかかることもあり、何度か通院して病院の雰囲気に慣れると上手に検査できるようになる場合もあります。
  • 田淵
    なるほど。それぐらいの時期に念のために眼科を受診するというのは、アリだと思いますね。正しい時期に発見できれば、視力の発達を正常軌道に乗せることが出来るわけですからね。
    ツカザキ病院眼科の小児眼科チームは、清水有紀子先生を筆頭に多くのスタッフで成立していますが、診察が一筋縄ではいかない低年齢の患者様が対象であり、どうしてもチームへの負担は重くなります。三好先生も赴任されてから大変だと感じているとは思いますが、これからのツカザキ病院眼科における小児眼科医療への展望などあればお聞かせください。
  • 三好
    弱視は急激に悪くなる病気ではなく、一方の目がよく見えている場合が多いので、成人するまで気づかれないまま過ごしてしまうこともあります。その大部分は適切な時期に治療を行うと視力の向上が期待できるため、早期発見早期治療を徹底してきたいと考えています。ツカザキ病院の小児眼科を早期に受診して頂くことにより、弱視による不利益をこうむる子供が一人でも減ることを目指します。
黄斑円孔でお悩みの方は、どうぞお気軽に当科を受診下さい。
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