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ピックアップ Pickup / Column

廣瀬Dr

楽をしたければ楽にしろ!

楽をしたければ楽にしろ!

腹部外科で研修していた頃の話です。

先輩:「ヒロセ、仕事たいへんだろう?楽になるコツをおしえてやろうか?」
僕:「はい!コツってなんなんですか?」
先輩:「簡単だ。患者さんを良くすればいいんだよ」
僕:「は?」

いうまでもなく、我々の仕事は患者さんを治すことです。患者さんを良くしたいから、がんばって働いているわけです。そんな当たり前のことがコツ?どういうことなんでしょう?

先輩:「重症の患者さんをみるのは大変だろう?」
僕:「はい。そうですね」

もう20年前になります。当時は大きな開腹手術が多く、患者さんの負担も大切なものでした。もちろん主治医として診ている医者も、術後数日は泊まり込んでつきっきりで診ていました。

先輩:「お前も大変だろうけど、患者さんはもっと大変なんだよ。だから、早く良くしてあげれば、患者さんは楽になるし、お前も楽になるわけさ。要は、患者さんが楽なら、医者も楽できるんだよ」

天啓のような言葉でした。
別に間違った治療を行っていたわけではありませんが、当時の僕は患者さんの容態を把握する能力や、悪くなる前に手を打つような対処の仕方が、まだ甘かったのです。

それ以来、患者さんの状態をさらに注意深く観察し、悪化の兆候に神経を研ぎ澄ませ、悪くなる前に対処する方法を磨きました。

それが今、救急医療に生きています。

救急車から降りてきた患者さんをみたとき、まずファーストインプレッションを大事にします。
そして慣れてくるとおろそかにしがちなバイタルサインや兆候から、すぐに仮診断を下し、適切な治療を開始しながら検査を始めます。検査結果が出るまでにはどうしても時間がかかります。その短時間の間にも患者さんの状態は悪化するのです。

患者さんをみた瞬間から、全力で治療を開始する。
救急外来で行える治療はごく限られたものなのですが、それでも早期の治療開始は大きな効果を生むことができます。後々の入院経過に劇的な変化を与えるのです。

「患者さんを少しでも楽に!」そしてそれについてくる「医者も楽」というご褒美。だから、患者さんを良くするために、できることはなんでもやる。

20年を経て、医学も様変わりしてしまった今でも、先輩に言われた

「患者さんが楽なら、医者も楽できる」

は、僕の治療哲学として脈々と息づいています。

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