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内視鏡センター

当院の内視鏡センターは2022 年7 ⽉に開設され、3 つの内視鏡ブースと5 床のリカバリーを有しており、内視鏡ブースは感染やプライバシー対策により、各々独⽴した部屋として稼働しています。
また、センター内に併設されている透視室では透視下内視鏡検査をはじめとして、脳神経外科の脊髄造影検査やリハビリテーション科の嚥下造影検査、泌尿器科の尿路造影検査なども⾏われています。
リハビリテーション科 関連はこちら
泌尿器科 関連はこちら

 

■透視室実績 (2023/4/1〜2024/3/31)

診療科 主な検査・治療 年間件数
脳神経外科 脊髄造影検査、神経根ブロックなど 89件
リハビリテーション科 嚥下造影検査など 71件
消化器外科 術後造影検査、経⽪的ドレナージ治療など 60件
泌尿器科 尿路造影検査など 52件
整形外科 脱⾅整復など 40件
呼吸器科 気管⽀鏡など 29件
その他 11件
消化器内科 透視下内視鏡検査、経⽪的ドレナージ治療など 506件

内視鏡検査・治療について

特色

  • 消化器・胆膵疾患および呼吸器疾患に対して、最新の医療器機を導入し、安全かつ円滑に内視鏡診療を日々行っております。
  • がんの早期発見とともに早期に体の負担が少ない低侵襲治療が行えるよう努めています。
  • 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医を中心に内視鏡診断・治療にあたります。
  • 消化器疾患において、消化器内科医・外科医が連携し、科の枠を超えて診療情報を共有しやすい体制となっています。※詳しくは消化器センターのページへ。
  • 平日の通常診療のほか、夜間・休日もオンコール体制をとっており緊急内視鏡治療に対応しています。

 

扱う疾患

    • 消化管疾患のうち、消化管内視鏡による診断・治療を要するもの
    • 胆膵疾患のうち、胆膵内視鏡による診断・治療を要するもの
    • 呼吸器疾患のうち、気管支鏡による診断・治療を要するもの
      特に
  • 消化管腫瘍(胃がん、大腸がん)の内視鏡診断・治療
  • 胆膵疾患(がん・結石・炎症等)の内視鏡診断・治療
  • 消化管出血に対する緊急内視鏡

呼吸器疾患 関連はこちら

このページでは消化管および胆膵疾患に対する内視鏡診断、治療について紹介させていただきます。

 

 

主な内視鏡検査

  • 上部消化管内視鏡検査(経口・経鼻) ※胃カメラ
    (色素法・画像強調観察(NBILCI)・拡大内視鏡観察)
  • 下部消化管内視鏡検査  ※大腸カメラ
    (色素法・画像強調観察(NBILCI)・拡大内視鏡観察)
  • 超音波内視鏡検査(消化管・胆膵)
  • 超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)
  • 小腸カプセル内視鏡検査
  • シングルバルーン小腸内視鏡検査
  • 気管支鏡

 

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受けられる方へ

 

下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を受けられる方へ

 

下部消化管内視鏡検査時の前処置薬(下剤)について

■サルプレップ編

 

■ニフレック編

 

超音波内視鏡検査(EUS)

超音波内視鏡 (Endoscopic ultrasound: EUS) は、胃カメラの先端に超音波が発生する装置がついている内視鏡です。一般的に知られている腹部超音波検査 (Abdominal ultrasound: AUS)は皮膚を経由してお腹の中を観察しますが、皮下・内臓脂肪や胃腸内のガスなどに影響されやすく観察目的の臓器が見えないこともしばしばあります。EUSはそれらの影響が少ない状態で消化管(食道・胃・十二指腸・大腸)の壁から、そのすぐ外側にある臓器、血管、リンパ節の観察が可能です。当院では特に、膵臓や胆道(胆管、胆のう)、消化管粘膜下腫瘍の観察を目的に行っていますまたAUSに比べて解像度が高いため、より精密な評価が可能です。

検査にかかる時間はおよそ10分から30分程度で、胃カメラと比べてやや太い内視鏡を使うため、一般的には鎮静剤を多めに使用して検査を行っています。ただし、車・バイク・自転車等の運転を24時間以内に予定している方では鎮静剤は使用できませんのでご注意ください。

 

超音波内視鏡下穿刺吸引法 (EUS-FNA)

関連病名:膵腫瘍、胃粘膜下腫瘍、直腸粘膜下腫瘍、縦隔腫瘍、腹腔内リンパ節腫大など

超音波内視鏡でリアルタイムに観察しながら、食道や胃、腸の外にある標的となる腫瘍やリンパ節などを細い針で刺して組織、細胞を採取することを超音波内視鏡下穿刺吸引法 (EUS-FNA) といいます。採取された組織、細胞は顕微鏡で観察し診断(病理診断)を行い、結果が出るまでは最低1週間程度を要します.

膵臓の腫瘍に対するEUS-FNAの良悪性の正診率(正しく診断できる確率)は90%以上で、偶発症は約2%以下といわれており、身体への負担を最小限に抑えての腫瘍診断が可能な検査です。当院では12日(検査終了後に入院し、問題なければ翌日昼頃に退院)の短期間で、クリニカルパスを用いての入院となります。

 

 

 

主な内視鏡治療

 

内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD

関連病名:早期胃がん、早期大腸がんなど

内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD)は早期の消化管がんの治療の一つで、広範囲の病変であっても一括で内視鏡切除できる治療法です。

当院におけるESDの対象は早期の消化管がん (胃がん、大腸がん) で、リンパ節転移を生じる可能性が低い病変です。内視鏡的に使用可能な高周波ナイフを用いて粘膜下層レベルで病変を剥がし取る治療手技であり、条件を満たした早期がんであれば大きな病変であっても病変を一括切除することができます。また、内視鏡治療によりがんの治癒が得られているか、追加治療の必要性がないか正確な病理診断を得ることが可能となります。

■方法

      1. マーキング(病変周囲にマークを付け、病変の切除範囲を決定)
      2. がんの下の粘膜下層に生理食塩水を注入し、がんを浮き上がらせる
      3. 周辺切開(マーキング部位の外側をナイフで切開)
      4. 剥離(粘膜下層をナイフで剥離)

治療時間は大きさや部位などにより、1時間程度で終わる場合もあれば、数時間かかる場合もあります。また極めてまれですが、様々な原因によりESDを途中で中止せざるを得ない場合もあり、その場合は後日改めて外科手術が必要となります。

ESDに伴う主な偶発症は、治療時の穿孔、治療後の後出血、治療後の瘢痕狭窄による消化管の通過障害、誤嚥性肺炎などです。対象とする病変の部位や範囲によって、偶発症のリスクや治療に要する時間は異なります。
ESDで切除し回収した病変は病理組織検査 (顕微鏡による詳細な評価)を行います。病理組織検査の結果、転移を生じる可能性が高いと見込まれる場合は、追加で外科手術や化学療法(抗がん剤治療)をお勧めすることもあります。
ESDの詳細については、治療を予定する前に担当医から詳しくご説明します。疑問や不安などございましたら、お気兼ねなく担当医へお尋ねください。 

  

内視鏡的粘膜切除術/ポリープ切除術(EMR/ポリペクトミー)

関連病名:大腸ポリープ、大腸腺腫、早期大腸がん、胃ポリープ、胃腺腫、早期胃がんなど

内視鏡ポリープ切除術/粘膜切除術は大腸ポリープや早期大腸がんに対する治療法の一つです。スネアと呼ばれる円形のワイヤーを使って病変を切除しますが、切除方法には(1)粘膜切除術(EMR)と(2)ポリープ切除術(ポリペクトミー)があります。

 

粘膜切除術(EMR

スネアをポリープにかけて、高周波装置という外部機器を用いて電気で焼き切る治療です。また、安全に焼き切るために、事前に大腸ポリープの下に生理食塩水を注入します。切除後は潰瘍のような粘膜の傷ができるので、金属製のクリップで閉鎖します(クリッピング)。

大きな病変を切除する際には非常に有用な治療法ではありますが、通電による遅発性出血(24-72時間後)消化管穿孔(腸に穴が開くこと)が合併症としてあるため、合併症がその場で起きていなくても治療後に入院が必要となることがあります

 

写真上段:②~④は以下の通り

写真下段:切除後の傷に、クリップで傷をふさぎ、切除したポリープを回収し検査へ

 

ポリープ切除術(ポリペクトミー)

小さいポリープを複数個切除する場合、EMRでは時間がかかり、さらに合併症の発生が多くなってしまいます。そこで、小さいポリープに対してはコールドスネアポリペクトミー(CSP)という方法が主流となっています。従来、ポリペクトミー(ポリープ切除術)は通電を行って切除するものでしたが、『コールド』つまり通電せずにスネアを用いて切除する方法がCSPです。

出血が少なく、穿孔もほぼないことから、外来でも行える有用な治療法ではありますが、出血しやすい大きいポリープやがんを含む可能性があるポリープには適応がありませんので、その場合にはEMRが適応となります。

 

※注 意

胃のポリープを切除する際もポリペクトミー/EMRを行いますが、大腸とは異なり粘膜下層剥離術(ESD)に準じた入院期間が必要となることがほとんどです。クリニカルパスはありませんので、入院期間等に関しては担当医にご確認ください。

 

内視鏡的止血術

関連病名:胃潰瘍、十二指腸潰瘍、直腸潰瘍、憩室出血、内視鏡治療後出血、マロリーワイス症候群、食道胃静脈瘤破裂、消化管がんなど

貧血の進行や、吐血や黒色便、血便が見られた場合、消化管出血をおこしている可能性が考えられます。症状やその他の検査などから、内視鏡を口から挿入するか、肛門から挿入するかを判断し、場合によっては両方行うこともあります。

内視鏡で消化管を観察し、出血している場所があれば以下のような方法で止血術を行います。

  1. 内視鏡的凝固止血術:表面に露出した血管に対して、血管を直接把持して、電気を流して止血します。毛細血管の集まった粘膜より出血している場合は、ガスを噴射して止血します(アルゴンプラズマ凝固止血術)。
  2. 内視鏡的機械的止血術:表面に露出した血管や出血している部位に対して、医療用クリップを使用して止血します。
  3. その他:止血剤を出血部に撒布する薬剤撒布法や、出血している部位の周囲に薬剤を直接粘膜に注入する局注療法などがあります。

    大腸憩室出血などの場合、内視鏡で観察時には、自然に出血が止まっている場合もあります。そのような場合には止血術を行わず、絶食で治療をすることもあります。

    また、内視鏡的止血術の適応外であるような出血の時や、内視鏡的止血術では対応ができない出血の時には、緊急血管内カテーテル治療や緊急外科手術による止血術が必要となることもあります。

 

食道静脈瘤治療(EISEVL

関連病名:食道胃静脈瘤、肝硬変

多くは肝硬変が原因となり、門脈という肝臓へ流入する血管の圧が高くなり、食道や胃の粘膜下にある静脈が風船のように膨らんでしまう病気です。静脈瘤自体は無症状ですが、肝硬変が進行し、静脈瘤が大きくなると、破裂して出血を起こすことがあります

破裂して口から血を吐いたり(吐血)や肛門から黒い便、赤い便(血便)が出たりした場合には、緊急で内視鏡的止血術が必要です。破裂していない場合でも内視鏡で破裂の徴候がみられた場合、予防的に静脈瘤に対する内視鏡治療を行うことがあります。以下に代表的な静脈瘤に対する内視鏡治療法を紹介します。

 

内視鏡的静脈瘤結紮術(Endoscopic variceal ligation; EVL)

内視鏡の先端に装着した医療用ゴムバンド(Oリング)を静脈瘤の根本にかけ、血流を遮断する治療方法です。血流がなくなった静脈瘤は壊死・脱落し、消失します。比較的簡便な手技であり、出血時の緊急止血方法や予防的治療として多く使用されます。

体への負担が少ない治療であるため、肝機能が弱ってしまっている患者さんにも施行可能な治療ですが,再発が多いと言われています。また、複数回治療歴がある場合、ゴムバンドがうまくかからないこともあります。

 

内視鏡的静脈瘤硬化療法(Endoscopic injection sclerotherapy; EIS)

内視鏡の先端から出す局注針と呼ばれる注射針で静脈瘤を穿刺します。レントゲンで確認しながら静脈瘤内へ硬化剤(EO)を注入し、血管内を固めてしまう治療です。大きな静脈瘤や治療・再発を繰り返し固くなった静脈瘤には上述のゴムバンドを掛けることができず、こちらの治療法を選択することがあります。逆に、EVLよりも体への負担が大きいため、肝機能が低下した患者さんへは施行が難しい場合があります。

 

内視鏡的異物除去術

関連病名:異物誤飲、アニサキス症

不慮の事態により消化管内へ存在する薬剤シートPTP、魚骨、義歯、歯科医療器具、電池、アニサキスなどを内視鏡を用い消化管壁を傷つけないように回収します。

出血や消化管穿孔を伴っていた場合には入院が必要となることがありますが、基本的には上記の異物が除去できた後は帰宅可能です。ただし、詳細観察をしているわけではないので、後日通常の内視鏡検査を受けることが大切です。

 

胃瘻造設術(PEG

関連病名:嚥下困難、誤嚥性肺炎、食道狭窄など

胃瘻造設術は、経口摂取困難な患者様に対し、内視鏡を使用し経皮的(お腹の表面から)に胃まで栄養チューブを留置する方法です。胃瘻造設をご希望の患者様には、適応、偶発症などについてよく相談させていただいたうえで、可能な限り対応させていただいております。

 

※注 意

皮膚と胃の間に小腸や大腸が入り込む場合や、チューブが置ける場所に腫瘍や潰瘍があった場合には造設困難となりますこれは、事前のCTで予測できる時もあれば、造設当日の内視鏡挿入直後に判明することもあります。

 

内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)

内視鏡的逆行性胆道膵管造影 (ERCP endoscopic retrograde cholangiopancreatograpy) は、内視鏡を口から入れて食道・胃を通り、十二指腸まで進め、十二指腸にある乳頭部から胆管や膵管に直接細いチューブを介して造影剤を注入してレントゲン写真を撮影することです。

胆のうや胆管及び膵管の異常を詳しく調べる標準的な検査法となります。エコーやCTMRIなどでも、これらの臓器に関する情報を得ることはできますが、直接的に検査ができ必要に応じて治療を行うことも可能です。

ERCPをベースにして胆道や膵管の病気に対して行う検査、治療をERCP関連処置と呼びます。代表的なものとして胆汁や膵液を採取する培養検査(細菌の有無)や細胞診(腫瘍細胞の有無)、狭窄部から組織を採取して狭窄の原因を診断する胆管生検(組織診)、胆管結石や膵石の除去、胆汁や膵液の流れを確保するドレナージ術などがあります。

 

内視鏡的胆道ドレナージ術

関連病名:閉塞性黄疸、急性胆管炎、急性胆のう炎、胆管がん、膵頭部がん

結石や腫瘍、炎症など、胆道内やその周囲の病変により胆汁の流れが妨げられる(胆汁うっ滞)と、胆汁を産生している肝臓に負担がかかり、黄疸(皮膚や眼球が黄色くなる、尿が濃くなる)、肝障害をきたします。これを閉塞性黄疸といい、胆汁うっ滞により長期間、肝臓に負担がかかると肝不全に至ることがあります。

また。貯まった胆汁中に細菌が入ると急性胆道炎となります。急性胆道炎は血液中に細菌が移行することが多いため、敗血症や多臓器不全を合併した場合、命に関わることもある病気です。そのため、貯まった胆汁を排出する(ドレナージ)方法として、内視鏡を用いた治療がスタンダードとなっており、これを内視鏡的胆道ドレナージ術といいます。

ERCPにより胆道の病変の評価を行った後、胆汁のうっ滞を解除するために胆道内へステントと呼ばれるプラスチックのチューブもしくは金属の筒を入れ込み、胆汁を消化管内もしくは体外に排出させます。

 

内視鏡的胆管(胆のう)ドレナージ術【E(G)BD】

胆管(胆のう)に、細くて短いプラスチックのチューブを入れ、十二指腸に胆汁を流す方法です。

E(G)BDは平均3ヶ月程度でチューブ内が詰まる可能性があります。胆汁うっ滞の原因除去やチューブの定期交換、詰まった時のチューブ交換など、患者さんの病状にあわせた治療方針を決定します。

 

 

 

 

内視鏡経鼻的胆管(胆のう)ドレナージ術【EN(G)BD】

胆管(胆のう)に長いプラスチックのチューブを入れ、チューブを十二指腸、胃、食道を経由して鼻から出して、胆汁を体外へ排出する方法です。

EN(G)BDは体外へ排出した胆汁のモニタリングや検査への提出が可能です。病状の改善や診断が確定した時点で、E(G)BDへの入れ替えや抜去を行います。

 

内視鏡的胆管メタリックステント留置術【EMS】

金属製の太いステントを、胆管の狭くなって部分に入れ、十二指腸に胆汁を流す方法です。

EMSEBDと比較して太いことから詰まりにくいと言われていますが、永久的ではありません。ステントの種類によっては詰まった際に交換可能なものや、抜くことができずに内部にもう1本追加するものなど様々であり、病状にあわせて選択します。

 

内視鏡的結石除去術

関連病名:胆管結石、膵石

胆管結石は胆管内に形成された胆石であり、閉塞性黄疸や急性胆管炎、胆石性膵炎の原因となります。胆のう内に形成される胆石は、胆のう摘出術という外科的手術で胆のうごと取る治療となりますが、胆管結石は内視鏡を用いた治療がスタンダードとなります。

結石除去を行う前に、十二指腸乳頭部の胆管の出口を拡げる、内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)や乳頭バルーン拡張術(EPBD)が必要となります。

 

胆管結石除去の方法としては、バスケットカテーテルやバルーンカテーテルを用いて、拡げた胆管の出口から結石を排出させる採石術と、結石を細かく砕く砕石術があります。また、砕石術は機械的砕石具を用いるものと、胆道鏡で胆管結石を直接視ながら電気水圧衝撃波で破砕するEHLという方法があります。

患者さんの病状に合わせて最適な結石除去方法を決定しますが、結石が大きいもしくは複数個ある場合には、複数回に分けての治療になることもありますのでご了承ください。

患者さんの病状によっては、前述した内視鏡的胆道ドレナージ術を先行し、炎症が治まった後に結石除去を行う、二期的治療(2回以上に分けての治療)を行うことがあります。また、無症状で偶発的に見つかった場合であっても、胆管炎や膵炎は重症化しやすい病気であるため、発症する前に除去することをおすすめしています。

 

内視鏡的乳頭部切除術

関連病名:十二指腸乳頭部腫瘍(腺腫)

胆管と膵管の出口で、消化液である胆汁や膵液を十二指腸に排出している十二指腸乳頭部に発生した腫瘍を内視鏡的に切除する治療法です。

外科的治療と比較すると身体への負担は少ないですが、治療後の出血や膵炎、穿孔などの合併症が通常のERCP関連処置(結石除去、ステント留置)に比べると多い治療となります。

適応疾患も限られるため、生検による組織診断、胆管・膵管への拡がりの有無(EUSERCP)、十二指腸外への拡がりの有無(造影CTMRCP)など複数の検査で適応を判断し、患者さんの状態(既往症や年齢など)に合わせて相談させていただきます。

 

術後再建腸管に対するERCP

関連病名:胃切除後、膵頭十二指腸切除後、胆管空腸吻合術後

術後再建腸管とは、下図のように胃や食道,胆管,膵臓などの手術によって腸をつなぎ換えている状態です。

通常のERCPとは異なり、目的とする部位に到達するまでの距離が長いため、通常より長い内視鏡や,小腸を観察するための特殊な内視鏡(バルーン内視鏡)を使用します。

そのため、正常の胃の場合と比べると長時間となり、胆道や膵管へ辿り着くこと自体が困難な場合や、辿りついたとしても処置が難しい場合もあります。その場合は、後日の再検査や他の方法での治療法に移行する可能性があります。

 

超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD

関連病名:閉塞性黄疸、急性胆管炎、急性胆のう炎、術後再建腸管、胃十二指腸狭窄など

胆汁のうっ滞を解除する方法として、ERCPをベースとした内視鏡的胆道ドレナージ術や内視鏡的メタリックステント留置術がスタンダードとなっていますが、様々な要因で胆管の出口がある十二指腸乳頭部に到達できない(消化管狭窄、胃術後など)、到達できても胆管内に入れることができない、ということも少なくありません。

以前は腹部超音波検査を用いて体外から胆道へチューブを入れる、経皮経肝胆道ドレナージ(PTBDPTGBD)が主流でした。現在は、超音波内視鏡(EUS)の登場により、消化管内から超音波を当てて、胆管にチューブやステントを入れることが可能となっています。これを超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD)といいます。

 

 

 

 

超音波内視鏡下膵嚢胞ドレナージ(EUS-CD

関連病名:急性膵炎、膵仮性のう胞、被包化壊死(WON

急性膵炎後は様々な要因で膵臓周囲に膵仮性のう胞、被包化壊死と呼ばれる液体貯留が形成されることがあります。自然に消えていくこともありますが、中にはこの液体の貯まりに細菌がついたり、内部で出血したり、のう胞が大きくなり周囲の臓器(消化管など)を圧迫したりなど多彩な症状をきたすことがあります。

内部の液体を排出(ドレナージ)しない限りこの症状は改善しないため、以前は皮膚からチューブを入れる、外科的な手術で液体の排出と洗浄を繰り返すなど、身体への負担が大きくかつ死亡率も高い病気でありました。近年EUSを用いたドレナージ治療が確立しつつあり、液体を排出する経路として消化管を用いることで患者さんの身体への負担や外科的治療まで至ることなく改善が得られるようになりました。

 

内視鏡的消化管ステント留置術

関連病名:食道がん、胃がん、十二指腸がん、膵頭部がん、胆管がん、大腸がん

様々な理由で消化管(食道・胃・十二指腸など)が狭くなり、食べ物や消化液が通過しなくなった状態を治療する方法の1つに、内視鏡的消化管ステント留置術があります。内視鏡を狭くなった場所まで進め、内視鏡とレントゲンで見ながらステント(金属製の管)を留置し、狭くなった場所を拡げる治療法です。

食道・胃・十二指腸に留置する場合は嘔気、嘔吐などの症状緩和が主体となります。大腸に留置する場合は便秘、腹部膨満感などの症状緩和のみならず、外科的治療への橋渡しとしての役割(Bridge-To-Surgery)もあります。いずれも、胃や腸の動きが悪いなどのごく一部の方を除いて、食事摂取を目標に治療を行います。

 

 

最後に

近年、消化器内視鏡治療はスコープや医療器具の進歩により、様々な治療法が確立されています。単純で分かりやすいものから、複雑ですべてをこのページでお伝えできないものまで、どの治療方法であっても必ず担当医師から可能な限り分かりやすく説明させて頂きます。また、どのような検査、治療であっても合併症があり、それについても説明を致します。

病状、検査・治療方法、合併症、治療結果すべてにおいて、何かご不明な点がございましたら、気軽に担当医にお尋ね下さい。

 

【文責:内視鏡センター長 路川 陽介】

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