こんにちは!ツカザキ病院 整形外科の松村です。
そろそろ若手ではなくなっていると思うので、ブログタイトルの変更を希望している今日この頃です(笑)
それはさておき、今日は人工股関節置換術(以下、THA;Total Hip Arthroplasty)のお話です。股関節が痛いと感じ病院を受診され、股関節の変形、いわゆる変形性股関節症と診断された方は必読です!
この手術は主に、変形性股関節症に対する手術ですが、その他大腿骨の付け根が壊死する大腿骨頭壊死や大腿骨頸部骨折といった疾患にも施行される手術です。
おそらく手術の説明の際は「骨を削って金属に置き換えて人工関節に変えます」と言った説明を受けることが多いと思いますが、同じTHAでも様々な手術方法があります。虫垂炎の手術に「内視鏡手術」や「開腹手術」があるイメージです。
なかなか難しい話ですが、本日は具体的な手術方法を説明します。THAは患者満足度が非常に高い手術と言われておりますが、やはり手術による合併症は少なからず存在します。その中でも関節が外れてしまう「脱臼」が合併症の中では特に問題としてあげられます。手術の展開の際に関節包という関節を覆っている包みを切除して股関節内の操作を行いますが、術後にその部分が弱いために、脱臼を起こす場合があります。このTHAの術後脱臼率は手術のアプローチ方法によって違うのですが、1~10%と言われております。
私が最近取り入れている手術アプローチはSuperPath®(Supercapsular Percutaneously-
Assisted Total Hip)と言われる手術方法で筋肉を切開せず、筋肉の間から股関節に到達します(筋間アプローチ)。そして関節包を「切除」ではなく「切開」します。つまりこれまでのアプローチ方法ではほとんどの場合、関節を包んでいる関節包を「切除」して手術操作を行うことが多いのですが、本手術方法では関節包を「切開」するので最後に縫合することも可能であり、私はこの部分を縫合し修復しております。これにより脱臼するリスクは軽減されます。文献による報告では脱臼率0%の報告も多数見受けられます。
また普段、人工股関節置換術を受けた方は脱臼するリスクがあるために、禁止肢位というものを術後リハビリする際に指導されます。アプローチ方法によって違うのですが、例を挙げてみますと、横座りや足を組む、あぐら、和式トイレなどは禁止です。日常生活のふとした動作で脱臼してしまう可能性がありますので、毎日気をつけながら生活しなければいけません。私の取り入れているSuperPath®という手術方法では基本的には脱臼肢位はないために、念のため脱臼防止の指導は行いますが日常生活に対する不安感はかなり軽減されると考えております。
そして皮膚切開は約6~8cmで行なっております。一般的な後方アプローチですと、最低でも10cmは必要と思いますので、美容的な面でもメリットがあると考えています。また最近はダーマボンドと言われるもので創部表面を縫合しておりますので、抜糸の必要もなく術翌日からシャワーも許可しております。術翌日からシャワーを浴びることができるということも、術後の患者さんの気持ちの面ですごく良いのではと考えております。
ただ変形が高度な症例ではこの手術方法ではできない可能性がありますので、手術を考えられている方がおられましたら一度ご相談ください。
本日は人工股関節手術のお話をさせていただきました。同様のお話はホームページから別サイト『関節が痛い.com』もご確認ください!なかなか股関節が痛いけど、手術には踏み切れないという方がおられましたら一度受診してみてください!ではまた。