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ピックアップ Pickup / Column

楠山Dr

患者さん、頑張れ!

こんばんは。寒い日が続きます。
手術をやっておりますと色々な手術があります。
比較的普通の手術(普通を普通で終わらせるのも奥が深いです)、難しい手術、上手くいって患者さんと「やった!」という手術、祈る手術等々です。

「祈る手術」。どんな手術かって?
所詮、手術をするのは医師です。
我々の科では急性心筋梗塞症で心肺停止となった患者さんに対してもカテーテル治療を行うことがあります。

勿論、そのような手術は毎日行われるわけではなく、年に数回、もう少し多いように思いますが経験します。
残念ながら医師も人間の端くれなので完璧でもないし(結構個性的?)、全症例で満足した臨床的成功を得ることもできないのが現実であります。

成人の最大の心停止は急性心筋梗塞症による致死性不整脈とされています。
私たち循環器内科医は不整脈に対する除細動(電気ショック)で治療しながら根本原因である急性心筋梗塞症に対する血管の緊急治療を行います。

実は先日もありました。
搬送途中に心停止に至り救急車内で救命処置をされながら搬送となりました。
平和な朝飯前の回診途中にカテーテル検査室から呼び出されました。
書き出すととんでもない量になりますので途中は割愛しますが、術中複数回心停止に至りながらも応急処置として心筋梗塞の原因箇所のみ風船で広げて、補助循環(人工心肺等ですね)を確立して、出勤途中の心臓血管外科医・麻酔科医を捕まえて予定の手術に横入りさせてもらって緊急で冠動脈バイパス術をしてもらいました。

その方、今も闘っていらっしゃいます。
人工心肺からは離脱できたのですが、意識が回復してくれるかはまだ分かっていません。
根拠は全くないのですが、その時のカテーテル手術中に何とか患者さんに手が届いたような気がするのですが、結果はまだ分からない状況です。

医者も手術はしますが、それが終わると術後管理を頑張って祈るしかない職種なんですよね。
「人事を尽くして天命を待つ」とはよくいったものです。

心肺停止患者さんは当院にも搬送されることが多いですが、心臓はもう1度動いても脳を守ることができないこともあります。
当院でも微力ながら継続的に心肺蘇生の講習会を行ったり、職員の講習受講を進めてはいるのですが、なかなか100点は取れない。

医学って冷酷な部分があって、心臓が動いていれば「蘇生した」になるんです。
でも御家族から見れば「おはよう!」と言えば「おはよう!」と返事してくれないと悲しいですよね。
そうです。「蘇生成功」と「社会復帰」とは全く異なる概念なんです。

今回の症例、難しいとは思いますが、お薬をやめて目を覚ました時にどうか御家族とお話できてお家に帰ることができますように。

特定の宗教はありませんが、形而上学的な存在は実は信じている一循環器内科医の祈りです。

頑張れ!患者さん。

で、ここまで書いた後、今日集中治療室を覗きにいったら、その患者さん、目を開けているんです!
きっちりお話しでき、昔の話やおみくじのお話、伺うことができました。
ちょっと潤んでしまいました。
もしかしたら神様っているのかもしれないですね。

退院まではまだ安心できないですが、早く良くなってくださいね。

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