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ピックアップ Pickup / Column

楠山Dr

鳥が舞い降りてくるようになりました

新年の御挨拶をさせて頂きましたが、いつの間にか月の前半が過ぎておりました。
寒い日が続きますが、皆さんは体調崩されておりませんか?

私はどうやら「アホは風邪引かない」という都市伝説の通り、もしくはインフルエンザをはじめとした病原菌が「コイツ(楠山)、やっかいそうやし、感染する価値、ないわ。行こ行こ!他の人の方が居心地いーわ!」と言って私だけ避けられているのか、おかげさまで風邪をひくことなく医療行為に従事しております。何故でしょうね・・・。
これは細菌検査室(心の中では愛情込めて「バイキン部屋」と呼んでおります)で、いつも相談乗ってくれているFさんに細菌、いや最近の知見含めて聞いてみましょ。

さて、閑話休題。
当院の東側に大きな場所が出来ているのを御存知でしょうか?
別に職員福利厚生を目的としたテニスコートを作っているわけではありません。
ご覧になった方はすぐおわかりかと思いますが、ヘリポートができました。
目的はドクターヘリの運用です。

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当院には脳神経外科・心臓血管外科・当科循環器内科と血管の病気を扱っている科があります。
どうしても血管の病気となりますと「詰まる」、「出る」がテーマになりますので、発症は急激です。
それぞれ脳梗塞・脳出血や急性心筋梗塞症・急性大動脈解離・大動脈瘤破裂は御存知のように極めて救命の為に緊急を要する疾患です。

当科では主に急性心筋梗塞症があてはまります。
実は成人心停止における最大の原因は急性心筋梗塞症に合併する致死性不整脈とされています。
我々とすれば極めて緊急度の高い疾患です。
一刻でも早くカテーテル治療・バイパス術で血流を再開させなければなりません。
教科書にも「時は金なり」ではなく「Time is muscle (時は心筋なり)!」と書かれております。

今のガイドラインでは Door to Balloon time (救急外来のドアを通過してからカテーテル検査室で初めて風船で血管を拡張するまでの時間) 90分以内とされています。
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分でも短縮するようにみんな大急ぎです。

実は私、医療系ドラマを見るのが恥ずかしくて見ることができないのですが、テレビドラマのように「胸が苦しい・・」と私達に言って来てくれれば不幸中の幸いですが、少数ですが心停止で搬送されたり、私の経験では緊急カテーテル手術の説明を御本人・御家族にしている最中に致死性不整脈で心停止に至ることもあります。
ホントに崩れ落ちる感じです。
院内ですので、電気ショック(除細動といいます)をして説明を切り上げてカテーテル室に運び込んだこともあります。
あれは、映画のようにスローモーションになりますね。

ただ、院内で不整脈が起こるのは対処が早いですが、大部分の症例は院外の心停止で発症します。
そうなりますと、救命・社会復帰を目指すためには一刻も早く病院に搬送しなければなりません。

実は御存知のように我々の病院近くは医療圏が大きく、郊外での事例で当院までの搬送に時間がかかる場合もありドクターヘリが運用されております。
当院ではこの14日より運用開始となりました。

実は運用手順の確認のために訓練日が設定されていたのですが、結局その2日前に本番が先に来てしまいました。
ま、得てして世間ってこんなもんですよね。

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勿論、初ドクターへリの2日後の訓練はちゃんとしましたし、ドクターヘリの基地病院(加古川医療センターさん)の先生とも意思疎通を取ったり手順を確認したりしました。
びっくりしました。
車では1時間かかる距離が10分で飛んで来ます。
この50分の差は患者さんにとってはもしかすると生死を分けるぐらい大きなものになり得ます。

訓練中にあった会議の中で「心停止の急性心筋梗塞や大動脈解離が疑われる患者さん、搬送して良いですか?」と聞かれまして、勿論「イエス」と即答したわけです。
でも会議が終わって廊下に出た時に「ふっ」と思ったんです。

「これからもっと忙しくなるし、これまで以上に心停止対応、緊急での心肺補助装置の確立についても、今よりも質を向上させなきゃな・・・」と。

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ドクターヘリの利用がない方が患者さんには良いことですが、当科としては患者さんや御家族が喜んでもらえるような臨床をするためにも研鑽を積まなければいけないですね。

そう、この業界ってパイロットに似ていると思うんです。
パイロットってシュミレーターでシュミレーションを受けたり、緊急事態の対応を日常からトレーニングを受けていると聞きます。
我々もパイロットの方々と同じで、あまり使わないテクニック・知識ほど、日頃からトレーニングを受けていないと咄嗟の時に対応できないんですよね。
これは外来の看護部、臨床工学技士とも1度ゆっくり話す必要があるようですね。

寒い風に白衣をあおられながら、ドクターヘリの離陸を見ながら「頑張らなくては」と決意した楠山でした。
でも、ヘリコプターあっと言う間に豆粒みたいに小さくなっちゃった。

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