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ピックアップ Pickup / Column

楠山Dr

医学博士と専門医

こんばんは。朝はよく冷えますね。
暖かいお布団が恋しくなる季節です。
皆さんは朝、「ぱっ」と起きることができますか?
私は目覚ましで目が覚めるのですが、5分ぐらいはゴロゴロして少し頭が起きてから未練無く起きるようにしています。

先日もあったのですが、ここで「二度寝」はかなりヤバいです。
次に意識が回復したときは正に遅刻の時間になっています。

しかし、あの二度寝はなんであんなに気持ちいいんでしょうね?
あと当直明けの日曜日、昼ぐらいに何とか病院から脱出に成功して洗濯機を回しながらベッド上で本を読みながら意識消失・・・。
水中から浮き上がるような感触で気付くと本が横に落ちている。
なんていうのも非常に魅惑的です。
しかし時刻は夕方で1日を無駄にした感じ満載ですけどね・・。

さて以前研修医の先生から大学院(医学博士)と専門医、どっちが大切かというお話を聞きました。
医者という職業は職業の中でも「つぶしがきかない」職業のベスト3には入ると思います。
その先生なりに自分のキャリアプランを考えていたのでしょうね。

皆さんは医学博士と専門医、違いがおわかりでしょうか?

医学博士は大学院で研究して論文を書いて、査読(他の専門家に読んでもらって雑誌に掲載する価値があるかを審査すること)に通って出版されて、晴れて大学院は卒業です。
個人的には医学博士は科学者だと思っています。

専門医は例えば私の場合なら、カテーテルの学会に入会して(クラブみたい!)、学会で発表したり手術件数を積んで、筆記試験・実技試験に合格して学会が「コイツは手術である程度の水準にきてる」って証明してもらった人。

この2つは両方とも非常に大切な物ですが、全く異なるものである事がお分かりになりますか?

医学博士は学術的な実績、専門医は実臨床での実績と思っています。
実は若い先生とお話ししていると最近では専門医の方に皆さん注目されているようです。
確かに当院のホームページでも専門医などは標榜していますもんね。

実は私は研修医が終わった3年目から大学院に入学「させられて」おりました。
3
年目といえば、研修医が終わり病棟業務に関しては自立して専門家としての研修を始める時期です。
検査や手術に対する興味は強く、なんでもしたい、経験したい!と血気盛んな時期です。

医学部の大学院は4年間です。
ウチの医局では最初の1年が当院のような関連病院で臨床をして残りの3年を大学で研究生活を送ることになっていました。
3
年間臨床から離れることで臨床医として遅れを取ることが非常に恐ろしく感じました。

でも当初の予定では大学院のテーマはカテーテルの予定でした。
しかしながら人生は色々あるもので半年ぐらい宙ぶらりんで気付けばテーマは「実験」になっていました。
信じられないでしょ。

カテーテルをやっていきたくて循環器内科医になったのに・・・と最初は正直ショックを受けましたよ。
カテ持つはずが学生時代に実験で持ったピペットマンを持つことになったのですから。
ともかくメンターに初めて挨拶に伺ったとき「先生は臨床に帰るんやろ。でもそれだから実験でちゃんと勉強しとき」と言われたのを覚えています。

私、研修医時代から「愛情あるDV」で教育を受けたため、結構素直に育っています。
ですので、実験もいろんな方に教えてもらいながら、メンターと定期的に、関係した論文を教えてもらったり、実験の進め方を議論したり、結果が出れば論文の書き方を教えてもらいました。
お世辞にも真面目な大学院生とはいえず、実験助手さんに助けてもらいながら実験の待ち時間(基礎系は時間待ち結構ありますよね)にカテ室に潜り込んだりしていましたけどね。

私のモットーは「状況悪くても腐ってはいけない。至る所に青山あり」ですので、年1本は論文を書いておりました。
勿論、それは優しい包容力のあるメンターの指導の賜物でもあります。
時は流れて、めでたく大学院を卒業し結局臨床(ツカザキ)に戻ってきました。

赴任した当時はカテーテルを3年やっていないわけですから非常にコワかったし、主治医も3年ぶりです。
ただ、臨床に戻って1ヶ月ほど経って病棟を歩いている時にふと気付いたんです。

「大学院に行く前と世界が変わって見える」って。

そうですね。マトリックスの1作目で主人公が一度死んでから復活したときに世界の仕組みが分かった、というような場面があります(マトリックスって映画知ってます?)
正にそんな感じです。

大学院までは何となく決断し上司から言われたように臨床していましたが、卒業後は自分で状況を科学的に解析して治療方針を決断する、という考え方に変わったようです。

製薬会社の皆さんから頂く情報もそのままではなく、卒業後はその論文をざっと読んで自分で解釈・咀嚼して取り込むようになったようです。
嗚呼、私を学術的に燃やしてくれるMRさん募集中です。

Oh year !、そういえば現在、1人おります・・その方、東京ですが(1部、暗号)

大学院の時には自分の思考回路が変わった事なんて全く気付かず日常を送ってきたわけです。

気付かないうちに仕事で使う自分の思考回路が変えてしまう大学院って凄い所ですよ。
医師という科学者の端くれにとっては大きな変化です。

ですので、医師としては医学博士、専門医両方持った方が臨床に厚みが出るのだと思います。

そのメンターが卒業の時に「Ph.D. を持つことは自分で論文を書くことが義務だよ」と私に諭して臨床の世界に送り出してくれました。
先日、大学医局関連の研究会で発表する機会を頂きました。
演壇に立った時、メンターが会場の後方で演者から丁度視界に入る席に座って手を振って下さる。
とてもびっくりしました。

講演会の後の立食でプレゼンテーションを誉めて頂いたのは非常に嬉しかったです。
いつまで経っても先生は先生なんですよね。

そういえば最近、日常にかまけて学術的なことしてこなかったです。
医学博士の肩書きが泣きますね。
先生、ごめんなさい。反省です。

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