キービジュアルの画像

ピックアップ Pickup / Column

楠山Dr

ICLSコースでした

こんにちは。暑い日が続きます。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
7
10日、今日は天気の良い日曜日だったのですが、当院で ICLS コースを開催しておりました。

ICLS コースって何ですか?と。
日本にはいくつかの蘇生教育のプログラムがあります。
本日行ったのは日本救急医学会が行っているコースです。
目標は急変時、最初の10分に行う蘇生法を習得することです。

皆さんは10分って長いと思いますか?色々ですよね。
友人などと楽しく話しているときは、あっという間に10分どころか1時間は経ちますし、土曜日の当直明け、自宅に帰ってベッドに寝っ転がるといつの間にか意識消失し6時間ぐらい過ぎていることもあります。

一方、上司に叱られているときは10分どころか1分でも長く感じるでしょうし、来るか来ないか分からない彼女を待つ時間は宇宙の寿命ぐらいとんでもなく長いことでしょう。

さてでは、我々の業界での10分は・・・実はめっちゃ長いです。
だって、心筋梗塞の方の救急外来では10分あれば、点滴と採血して心電図取って、患者さんとお話ししながら心臓超音波検査をしている頃じゃ無いでしょうか。
カテーテル検査室も同時に準備は進みます。10分は頑張れば色々なことができます。

ICLS コースの対象は心停止です。
心停止して適切な事ができなければ10分でも残念ながらまず脳が100%機能しなくなってしまいます。
もしその後、蘇生に成功したとしても脳が機能しなかったら御本人にも御家族にも喜んでもらう事ができません。

勿論、心停止の治療成績は調べていただいても分かるように100%ではなく、かなり厳しいものがあります。
最近では病院外では難しいですが、病院内では心停止になる前の危険な状況をいち早く見分けて治療し、心停止にならないようにしよう!という考えも出てきています。

でも、医療って思っていてもなかなか上手くいきません。
ですから心停止の患者さんを見たときにちょっとでも良くなるように蘇生教育は色々なところでされてきました。

「きました」って過去形だとお気づきの方もいるでしょう。
実は新型コロナウイルスの影響でみんなが集まって off-job training を行うことができなくなってしまい、本日当院では25ヶ月ぶりに開催することができました。

冷房は入れますが、この暑い時期にマスクをして胸骨圧迫をするというのは非常に大変なことだと思います。
参加してくださった皆さんの熱意には頭が下がります。
私ですか?私の役割は挨拶ぐらいで、参加者が人形相手に真剣に胸骨圧迫をし、インストラクターと議論しているのを、徘徊しながら見ているだけです。

会場を徘徊しながら思うのですが、やはりこのような off-job の講習会は必要ですね。
実は私もこのような講習会に関与する前(12年ぐらい前)は「何で休みなのに勉強しに行かないとアカンの?」と斜に構えているところがありました。

臨床現場で実践して身体で覚えることや先輩のつぶやきを聞いて勉強する(先輩を盗む) on-job training はとても大切ですし印象深いのですが、現場と離れたところで落ち着いた状況で他の方と議論したり、教科書を見ながら日常やっていることを見つめ直したりする off-job training も非常に大切です。

だって心停止の患者さんの蘇生行為を勉強のために止めることはできないですよね。
でも今日のような off-job training では時間を止めることができます。
これは実臨床からするとかなり贅沢なことなんですよ。

そうです。ICLS を始めとした蘇生教育のプログラムって、自分を振り返る(自省、好きな言葉です)ことができるコースなんですね。
それを感じてからいつの間にか苦手だったのに気がつけば好きになっていました。
まあ、私も現金なもんです。

後、インストラクターになってからは他の方に理解してもらうためにどうやって表現したら良いか、という所に興味を持ちました。
だってどれだけ正しいことを言っても皆さんに聞いてもらえなければ意味はありません。

そしてインストラクターをしていると一生懸命勉強しますし、受講生の方に「分かった!」って思ってもらえると嬉しいですよね。

私を指導してくださった今も敬愛している教授が私の4年目の時、大学病院のエレベーターの中でたまたま二人っきりになりお話をしていると、
「先生、我々の仕事は・・See one, Do one, Teach one (訳すなら「見て、やって、教えて」でしょうか). 他人に教えることができて初めて習得したと言えるんだよ」
と素敵な笑顔で私に教えてくださったのを覚えています。

その教授の言葉は今でも私の心の中に刻まれています。
そんなこんなで蘇生教育を今でも細々と継続しています。
ま、難しいことはさておき、2年ぶりのコースで私も緊張しました。
機材のトラブルなんかもちょっとしたスパイスです。
(
おかしいなあ・・事前チェックしているはずなんだけど・・)

最初は皆さん、緊張した面持ちでした。
初めて出会った方もいるはずですが、最後には各グループで活発な議論をしていたようです。

このコースはベテランも1年目の方もそれぞれの人にそれぞれ持って帰る物が違います。
これまた面白い所です。
受講生もインストラクターも1人1人にとって意義のあるコースであったら嬉しいですね。

私が得たものですか?2年半ぶりのコースを再開してやっぱり対面での講習会の良さを再認識したことでしょうか。

最後になりましたが、御参加されましたインストラクター・受講生の皆さん、またタスクで手伝ってくださった皆さんにこの場を借りて御礼申し上げます。

実は本年2月に開催予定だったのですが、コロナでぶっ飛んだ講習会でした。
リベンジができて私は満足です。
また1週間が始まりますので、お休みなさい。

07036001d3a66344c7b7191420f03b78-1681091422.jpg

一覧へ戻る

ページトップヘ