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ピックアップ Pickup / Column

楠山Dr

仕事を楽しんでいますか?

こんばんは。楠山です。
夕方になって雨が降ってきました。
この雨で更に涼しくなってくれれば良いですね。
今日はお仕事の話をしようと思います。

実は私、まだ1枠だけ循環器の救急当番をさせてもらっています。
理由は単純です。
自分のトレーニングの為と研修医の勉強する機会提供と実際の救急現場の観察です。
どうしても専攻医以上の先生が担当すると当然ながら自分で治療をします。
私とですと私がイニシアチブは握りますが、研修医の先生が主体的に考えるのを見ることができ、教育もできます。

あと、当院救急の件数が増えておりましてちょっとでも現場に出て雰囲気を感じていないと、何かの時に現場の状況が分からないのは現場と解離した話をしてしまいそうでコワいのです。

ま、そんなこんな理由で救急担当をしております。
先日他院からホットラインで急性心筋梗塞症の紹介を受けました。
幸いその時は余裕があったので、救急隊の到着予定時刻前に救急外来に準備をしに「トコトコ」降りていきました。

すると、珍しい事に救急外来がとても静かなのです。
いつもであれば混沌としたざわつきがあることが多いのですが、静かです。
若い同期の看護師2人が受け入れ準備をしておりました。

お互い余裕がありそうでしたし、周りを見渡すと上の看護師もいません。
確か23年目だったよな~、と思い出しましたのでちょっと試してみることにしました。

心血管緊急治療において急性心筋梗塞症は救急外来到着からカテーテル検査室で治療器具を病変に通すまでを90分以内にすることを目標としています。
90
分、大学では1回の講義時間、といえば長く感じるかもしれませんが、これをしようと思うと結構やること多いですよ。

羅列してみますと・・・

患者さんの初期評価、心電図モニターつけて、12誘導心電図。
身体診察に点滴入れて採血、心臓超音波検査しながら病歴聴取して。
診断確定したらカテーテル検査室(カテ室)に準備指示。
御本人・御家族に病状説明と手術説明、看護師さんもアレルギー問診。
胸部レントゲン撮ってカテーテル検査室に移送。

カテ室では検査のベッドに移って心電図や機器の装着、手術機材の準備、消毒して覆布(おいふ)かけて、動脈の穿刺・確保。
左右冠動脈造影で病変診断し手術決定。
ガイディングカテーテル(治療用のカテーテル)冠動脈にかけて、ガイドワイヤー(0.5mm程度のワイヤー)を病変に通してバルーン拡張!

書いていても息が切れそうですし、読み上げたら呼吸困難に陥りそうですね。
先の2段落を90分以内に終わらせるのが目標です。

彼女たちも理解していると思いますので、無表情に「今日はタイムトライアルをしよう!安全にどれぐらいでできるか見せてもらおう」と言いました。

一応、おっさんが無表情で言った方がプレッシャーかかりますよね。
プレッシャーのある状況でどれだけ正しいことをし続けることができるかも救急の大切なところと思っています。
更に当科のモットーは「焦らず、急げ」です。

2人がいつも真面目に仕事をしているのは実は知っています。
さっきもいいましたように私も研修医の時に経験したのですが、実は上がいないときにそのような実力を試されるのはチャンスです。

今、読んでいる方の中で「えー」って思った方がいるかもしれません。
でもチャンスです。
だって、上の人がいたら救急ですと、やってしまうかもしれません。
でも今日は自分がやるチャンスが来たわけです(もしくはやらざるを得ない・・)

学生時代にテストは○月△日からね~、と言われるのは優しいです。
社会では自分のパフォーマンスを出す機会は予告もされませんし、チャンスは突然です。
そこで前向きにチャレンジし成功した人は更にチャンスが広がります。

2人とも良い返事をしてくれましたよ。
そんなことを言っていると救急車が着きました。
ストップウォッチがスタートします。

救急外来も比較的静かだからでしょうか。
彼女たちも着実に私の指示を聞きながらやるべき事を進めてくれました。
点滴も一瞬、ん?と思いましたが、失敗せず入れてくれましたし、書類も整っています。

私の救急外来の初期評価はいつも15から20分ぐらいで済みます。
その日も患者さんに説明して23分で救急外来を出発、カテーテル検査室内もスムーズに進んで結果的に振り返ってみると60分で治療器剤は病変を通過していました。

ま、細かい点をいうなら、石灰化を削る機械を使用するので、薬剤を看護師さんに作ってもらうのです。
最後に加圧バックの加圧が抜けた音が後ろでしたのは御愛嬌でしょう。
後ろに目が付いている私ですので勿論、愛あるツッコミは入れましたが・・・

有難いことに患者さんの手術も無事修了し集中治療室に収容しました。
翌日、救急外来の師長にこの緊急テストに関して話したところ、師長からカテーテルに付いてくれた看護師さん、自分が予測したように状況が進んで、スゴく嬉しかった?興奮?したようですね。

師長から「なんか、昼ご飯食べにくそうだったみたいよ」と言われました。
可愛いじゃないですか。
まるで子供が遊園地か映画を見て興奮している感じでしょう。
おっさんの私でも気持ちは分かります。

何より嬉しかったのが患者さん・御家族だけではなく、仕事の面で一緒に手術している職員をアツくすることができるカテができたことは私にとって嬉しかったことです。
別に狙ってする物ではないですが、みんなの心を動かすことができるカテをしていく。
どうせ仕事をしているのであれば、同僚がやりがいを感じる仕事をするのは、大切な事ですよね。

でもこの2人、2年目にしてはなかなか良い仕事をやってくれました。
多分、これまで勉強していたことが、プレッシャーの中、実地でできたことが素晴らしい。
これって意外と難しいことですよ。
彼女たちもそれを実感できたから喜んでくれたのかと思っています。

勿論2年目とのことなので、ここが2人のゴールではなく、もっと成長すると期待ではなく確信しています。
そうなると今後はもっと上のレベルで彼女たちには求めていかないと彼女たちに対して失礼になります。
2
人が揃っているときに写真を撮らせてもらいました。
素敵な笑顔ですね。
2人にはもっとカテの深みにハマってもらおうと思います。

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どうしても皆さんの病気の場面に立ち会うので、繁盛しない方が良いですが、やっぱり救急って救命・教育などいろんな意味でやりがいある分野だな~、と改めて思った楠山でした。

私もみんなに負けないようにもう少し臨床能力を磨かないと・・・。

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