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ピックアップ Pickup / Column

楠山Dr

良い一年でありますように

新年が始まりました。
皆さんはどのような年末年始を送られたでしょうか。
今回も年末にお休みを頂き、11日の朝、姫路に戻ってきました。

昨年1月のブログと同じように大晦日の午後1140分頃に自宅を出て近くの神社に歩いて行きました。
少し天気は悪かったですが、皆さん三々五々に集まってきていました。
いつものように正面の鳥居をくぐり、夜店には脇目も振らずに参拝してきました。

今年も御神酒を振る舞っていらっしゃったので、良い木の香りのする酒枡を頂いてきました。
今年の干支は辰。
枡に辰の絵が押されていました。
おみくじも頂いて(確か小吉)今年の自分の戒めにして帰ってきました。

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その後、病院に出勤し初日の出は病院の駐車場で迎えました。
富士山の初日の出等、有名な初日の出は各地にあるかと思いますが、病院での初日の出も私らしくていいものです。

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「今年も良い仕事ができますように」と心の中で呟いて病院に入り、新年の仕事を始めたのですが、結構繁盛しました。
勿論、入院されている患者さんに新年の挨拶をし、休日故のちょっとした回診と指示を出して、合間に救急外来に呼ばれるという休日日直の通常運転となりました。

夕方になり当直の先生が来て、「揺れたのを感じましたか?」と聞かれて初めて地震のことを知りました。
午後4時位も病院内でストレッチャーを押して歩いていたのですが、揺れを感じることはありませんでした。

日直が終わって病院を出てからニュースで状況を知りました。
一気に正月気分が吹き飛びました。

私は医療業界しか知らない井の中の蛙ですが、本当に悪い状況は最初は悪く見えない、という事をこの仕事で何度か体験して理解しています。
その後、夜に一度緊急カテで病院に呼ばれてその後は自宅で寝ていました。
起きてテレビをつけてみるとやはり大変なことになっていました。

「夜のニュースでも見るべい」と、テレビをつけていると羽田空港での事故のニュースを見ました。
皆さんもそうだと思いますが、あの火災を見たときに乗っている方の安否が気になりました。
残念なことに海上保安庁の方に犠牲者は出たとのことですが、幸い旅客機の方は全員無事であったとのこと。

いろんな考え方・想いはあるかと思いますし、当事者の皆さんのお気持ちはいかばかりかと思いますが自分の考えを申しますと・・・。
厳しい状況、大きな事故の時にその人のできるベストを尽くしていることは非常に重要な事だと思います。

医療でいわれている安全対策、航空業界から入ってきていると聞いたことがあります。
事故は起こらないことが一番良いですが、事故はどれだけ気をつけていても「0(ゼロ)」にはならないものです。
そうなるともし何かが起こったとき、どれだけ被害を最小化できるかが重要になります(ダメージコントロールですね)

今回の様に突発的な緊急事態は経験豊かな乗員の方でもビックリされたと思います。
専門家の皆さんがその脱出を賞賛されているところをみると、冷静に訓練の通り適切なことをやり続けることができ、それを実現されたのでしょう。
蘇生講習会などで議論になりますが、急変で訓練通りできる、これはとんでもなく大変な事です。

実は講習のテストで合格しても2週間後には同じテストに合格できない人が沢山いるという報告もあります。
講習は受けて終わりではなく、現場や適切な off-job training を繰り返して、歯磨きと同じレベルで考えなくてもできるようにならないといけません。

結局精神運動領域に叩き込まないと極限状態で正しいことができないです。
一度でそこに叩き込める人はある種の天才です。
だからくり返しの定期訓練があります。

特に今回の様な場合には、当然の反応としてパニックも起ころうとしたでしょう。
それにも関わらず負傷はされても全員無事に脱出できたのはくり返しになりますが、誰にでもできる事ではないことです。

私達の仕事でも100%は難しい。
それを達成されたことは間違いなくプロフェッショナリズムの発現であり、私は脱帽です。
多分、今は少し落ち着いてきたからこそ乗員の皆さんは身体的にも精神的にも恐怖や疲労が出てきている頃ではないかと思います。
勿論、今は事故調査に参加されていると思いますが、彼ら、彼女たちの仕事は正にプロの仕事です。

町中を歩いていますと、何となく責任論に関するお話も聞こえました。
勿論、故意や同じ事を異常に繰り返すのは個人の資質の問題ですが、本来事故調査の目的は処罰ではなく、原因究明と再発防止が目的です(そのような感情が出るのは仕方ありませんが)
当事者の方の御冥福と一日も早い快復を切に祈りながら、この経験を大切にして先で役立てて頂きたいと思います。

個人的には私がするカテーテル手術も航空機と同じだと思っています。
搭乗から降機までが飛行機です。
カテーテル検査室では入室から術後3時間ぐらいまでが1つの旅でしょうか(カテ室出てもまだ完全にはファイティングポーズを私は解いていません)

航空業界の訓練は非常に厳しいと聞いています。
ホントはカテ室・救急外来で私ももう少し厳しくしたいのですが、ハラスメントの問題もあり自分の中で躊躇してなかなか厳しさを表面に出せないこともあります。
厳しさ・真剣さの中での訓練でないと意味が無いと思っているので、もう少し厳しくピリッと対応しないといけないのかもしれないですね。
誉めて育てる、は大事ですが、ダメなときは「見逃さず」理由を述べて、怒るのではなく叱る、が大切ですもんね。

ま、嫌われたら嫌われたでしゃーないですかね。
中間管理職の悲哀ですね。ただ、適切に嫌われるように努力しましょ。

私もこの仕事をしている以上、他人事ではない、と一年の初めに強く感じた出来事でした。
また、北陸地方では私達の同業者も大変な状況で仕事をされていると想像します。
自然には勝てませんし、私個人ができる事は無いかもしれませんが、彼らの事を思いながら粛々と自分のベストで仕事をしていきたいと思います。

今年は辰年。
辰年は縁起が良いと聞きます。
皆さんにとって良い年でありますように。
今年も宜しくお願いします。

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