キービジュアルの画像

ピックアップ Pickup / Column

楠山Dr

初めてのロータブレータ

こんにちは。今日は冷たい雨が降っています。
先日まで暖かくなったと思ったのに急に寒くなると体調を崩しそうですよね。
そんなこんなで今年も年度末がやってきました。
どうしても年度末はバタバタと忙しくなります。
人の出入りもあり色々と変わることもありますから。

さてそんな少し気ぜわしいある日、ウチの井上先生と一緒にある手術をしてきました。
多分、当科のホームページでも説明がありますが、ロータブレータという手術器材です。
私は心臓の血管の工事を主な仕事としています。

c487b5543b982cda50552a16cef08503-1742865864.jpg

簡単にいってしまうと私の手術は狭いところに柔らかいワイヤーを通してそれに沿わせて風船やステントを持っていって広げてくる。ということです。
ただ、患者さんによっては詰まっていてワイヤーは通ったけど治療器剤が通らない、石灰化がスゴくて風船やステントが広がらない・・といった困ったことも出てきます。

そんな時に使う器材の1つがロータブレータです。
ダイヤモンド(残念ながら皆さんが喜ぶダイヤではない・・)をちりばめてそれを高速で回転させて削っちゃう機械です。
ダイヤモンドは石灰より固いので削れる、ということです。
でも、やっぱり危ない機械でもあるので、カテーテルの学会で術者と施設の資格が決まっています。

学会の研修施設で、専門医、もしくは専門医の指導の下にある認定医、って術者基準が決まっています。
先日当科井上先生もちゃんと認定医の資格を取ることができたので、ロータブレータを教え始めることにしました。
勿論、いきなり本番ではなく、体外の模型で機械に慣れてもらいます。
パイロットではシミュレーターでしょうか。
その後、実際に手術を行います。
誰だって初めての手術はあります。
勿論、私もありました。

今回は私が指導医で一緒に手術をさせてもらいました。
私の考えでは手術ってパズルをやっているようなもので、その手技までの経過も非常に大切です。
今回の場合は井上先生とカテーテルの種類の選定から議論させてもらいました。

私はできるだけその人の考えを聞くようにしています。
その後、私の考えとその理由を述べるように努力しています
(
時間が無くなるとできなくなりますが・・)
大切なのは「その手技をやった」ではなく、「その手技をするためには何が必要か理解する」が必要だと思っています。

井上先生、この4月から転勤が決まっていますし、まだ指導を受けるべき段階ですが、私がいなくても自分で手術を組み立てることはできないと伸びませんから。

ま、「何が良いかな?」、「どうしたら良いかな?」ということを聞いて、井上先生の考えを聞いてからコメントし、必要な部分は私が指示を出す、といった感じのことをしておりました。
ただ、実際に石を削る段階は画面を見て器材の動きから井上先生の手応えを想像しながら、削る音を聞きどう削れているかを想像します。
この部分って結構頭を使いますし、私も緊張します。

以前、他の病院に呼ばれて指導に伺ったことはありますが、その先生は経験もあったのですが、今回の様に初めての手技の場合はやっぱり緊張しますね。
でも彼は勝負強いところもありますが、慎重な人間でもありますので、指導はやりやすいですね。

教科書的な石灰化の切削を見せて頂きました。
勿論、実際の現場でしか起こりえない罠も見えましたので、その部分はしっかり議論してきました(罠は見えれば罠ではない)
やっぱりこういう現場で議論して良い手技をするというのはこの仕事のやり甲斐と楽しいところですよね。
お陰様でしっかりステントも広がり成功裏に手術は終わらせています。

aaea32b09c116cb24cc7e25f6bfed3cb-1742865931.jpg

2日後の写真ですが、井上先生の笑顔にも少し自信を感じますね。
良い意味の自信は過信とは全く以て異なります。
確かに自信と過信の境界はどこか、というのは不明ですし難しい。
ただ、最初の症例を良い形で終わらせるのは非常に重要です。

来月からは新天地で仕事をするわけですが、「ロータブレータしたことない」という人と「ロータブレータはやったことあります」というのでは全く異なります。
私も人間ですので、誰に対しても特殊工事を指導できるわけではなく、長く一緒に仕事をしているから「こそ」指導できる手技もあります。(その人の癖とか考え方とか大切にしています)

ロータブレータという手技はとても奥が深い手技と思っています。
1例目は成功。
でも積み重ねていくと徐々に分かってくることもあれば、「怖さ」を理解することもあります。手術って甘い物じゃないので一例一例大切にして、キャリアを今後も着実に積み重ねて欲しいものです。
ま、カテだけの医者も面白くないので、視野広くもう一つぐらい強みがあると格好良いですよね。

井上先生、新天地での御活躍を!

そして春は別れの季節と同時に出会いの季節でもあります。
来年度(もう再来週)の研修医の先生方も国家試験は全員合格とのこと。
「サクラ咲く」です。おめでとう。
そしてこれからの新天地での活躍を。
私は優しくないので皆さんと違うことを言いますが、最初は苦労してください。
それが将来の糧になりますので。

改めておめでとう!会えるのを楽しみにしています。

88fc5077782457dbc6e3f30e74ee79e4-1742865990.jpg

一覧へ戻る

ページトップヘ