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ピックアップ Pickup / Column

楠山Dr

集中力

こんばんは。皆さんお元気でしょうか?
私の方はまずまずといった感じでしょうか。
忙しいと言ってしまうと何かやらない理由になってしまうので言いたくは無いのですが、最近は流石に忙しかった。

どの仕事もそうかもしれませんが、波がありますよね。
僕の場合、周期は1ヶ月に1回程度でしょうか。
何故か臨床で忙しくする時期と患者さんが少なくなって書類仕事や逃げてきた仕事を処理することができる時期がきます。
波があることと無いこと、どっちが良いのでしょうね。
忙しい時は「何でこんなに忙しいねん!」とぼやき、ずっと仕事が続いている時は「何で区切りなく仕事が来るねん!」と違った不満を持っているような気がします。
まあなんと自分勝手なヤツです。

ただ人間の集中力ってずっと持続はできないものです。
最近、慢性完全閉塞病変(良ければ当科ホームページをご覧下さい)に対するカテーテル治療や重症狭心症を合併した心不全の患者さんへのカテーテル治療が続きました。
このような手術はどうしても2時間から4時間ぐらい時間がかかることもあります。

その手術の間ってどんな状況か皆さん御存知でしょうか?
まさか昔の医療ドラマみたいに「メス(私の場合は カテ)、汗」とか言って看護師さんに汗を拭いてもらっているとお考えですか?

カテーテルを受けられた方は御存知かと思いますが、そんなことはありません。
カテーテル検査は基本的には局所麻酔ですから意識があります。
できるだけ患者さんとお話しする様にしています。
勿論、患者さんが乗ってくれば世間話や趣味の話をしたり、伺ったりすることもあります。

一方、手術が佳境にさしかかったり急がないといけない状況であると無口になり集中します。
その時は患者さんとのお話も無くなっています。

そんな状況では手を休めることができないこともありますが、“フッと”手を休めて手を洗ったり目を画面から離して手を休めることもあります。
これは実は大切なことです。

術者になって気付くのですが、一生懸命集中している時間は非常に短く感じます。
ところが手術の介助についている時は非常に長く感じるんですよね。
特に完全に詰まったところを広げるときは詰まっているところにガイドワイヤーという糸みたいなワイヤーを通していくわけです。
術者本人は頑張っているけど、その他の人はやること無いときがあります。
勿論、何かあったときのために居てくれるのですが居眠りもしたくなります。
私も「楠山、アレ取って」と言われてビクッとした経験ありますよ。
居眠りしていたことバレると恥ずかしいですよ。
先輩は横目で私の顔を見て何も言いませんでしたが・・・。

集中力もトレーニングしていると持続できるようになりますが、ずっと続くわけではありません。
ある日のことです。
研修医時代からの習慣で朝回診をして9時までに指示を書いてしまいます。

その日は予定された手術・救急対応・昼ご飯抜きでカンファレンスに予定入院患者さんに御挨拶して午後に予定された手術、その間に時々電話を頂戴し、トドメに患者さんの紹介頂く・・と文字にしてみるとあっさりしていますが、例えるなら鰻重とステーキを一緒に頂くような日でした。

そんな日は休みなく分刻みで動くようなことになります。
医師の仕事は決断すること、と研修医の皆さんに申しておりますので、最初は一生懸命考えて納得している決断をしているのですが、昼下がりになりますと手を抜くわけでは無いのですが少しキレてきます。
考えているときに「ちょっとめんどくさいな・・」という悪魔の囁きが出てきます。
更に病状が進みますと決断力が落ちますし、機嫌も少し悪くなります。

昔に良い意味で厳しい先生方に育てられた私ですから基本的には「はい、先生」という返事しか知りません。
ただ、研修医2年目の時、忙しい病院で働いているときに言われるがままに患者さんを担当していつの間にか18人になっていたことがあります。

「言われたからには頑張らないと・・」と責任感をもってやっていたつもりですが、どうしても限界はあります。
ある日、「楠山君、一人緊急入院持てる?」と19人目の担当を言われた時に「無理です!」と怒って病棟長に言い返してしまいました。

「ちょっとおいで」と病棟長に連れ出され
「君、自分の限界を理解しているかい?14,15人目ぐらいから君の指示の質が落ちていたこと気付いてた?」と言われました。
「担当すれば良いという物ではなく、患者の為にも病棟の為にも自分を知ることは大切だね」と教えて頂きました。

元々凄い病棟長だな、と尊敬したのですが、失敗するまでやらせてから教育するとは、今考えるととんでもない上司です。悪い意味ではなく、「とんでもなく」尊敬する上司です。

お陰様で今では時々「今日はもう良い決断ができなさそうだから定時で帰るね」と病棟でも言えるようになりました。
できるだけ言わないように自分でコントロールするようにはしていますけど、ダメなときはダメですもんね。

同時にその状況でも逃げられないとき(心筋梗塞の発症とか)に立ち向かうときはアドレナリン出て燃えますが、先輩なら「そんな状況に追い込まれた君が悪い」と辛辣なコメントをしそうです。

ちょっと新型コロナウイルスの新規発生は減っているようですね。
実は1週間前ぐらいに我々肺炎を起こす患者さんも経験しています。
ちょっとこの2週間ぐらいはしんどかった。
自分の体力・精神力のコントロールに難渋していました。

ふと目を上げたときにトンボが居ました。
もう秋の足音が聞こえてきていますね。
まだ外の風景を見ることができている間は大丈夫かな。
また1週間が始まりますね。やりますか。

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