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慢性完全閉塞病変

慢性完全閉塞病変

慢性完全閉塞病変とは冠動脈が動脈硬化により3ヶ月以上(慢性)完全に閉塞している病変を指します。脂質に富むプラークの破綻をきっかけに血栓で閉塞する急性心筋梗塞症とは異なり、動脈硬化の進行によりゆっくりと閉塞していきます。そのため、急性心筋梗塞症の様な激しい胸痛は無く、症状では一般的な狭心症の様な症状であったり心不全で発症し、心不全治療後のカテーテル検査で見つかる場合もあります。

通常の病変であれば狭窄であり病変より先が見えているのでガイドワイヤーの通過は血管に追従することが可能ですが、慢性完全閉塞の場合は病変部以降の血管の情報が血管造影ではありません(側副血行路がありますが)。そのため、術者の感触、解剖学的な知識からの予想、術前の冠動脈CTの情報などを合わせて手技を進めガイドワイヤーの通過を目指します。
同じ狭心症に対するカテーテル治療ではありますが、成功率も狭窄病変よりはやや低くなりますし、手技時間も長くなることが多いです(カテーテル検査室の看護師にお声がけ頂ければ、可能な範囲でお手伝いをさせて頂きます)。また慢性完全閉塞病変に対する治療故に起こりうる合併症(冠動脈穿孔など)があります。

勿論、冠動脈バイパス術という選択肢も当院では選択することができますし、様々な血管に多数病変を持つ場合には複数回のカテーテル治療より1度の手術で完全血行再建を目指すことができる冠動脈バイパス術の方が有利な症例もあります。
ただカテーテル治療の長所は胸を切らなくてもよく、2泊3日で治療を行うことができることで患者さんの負担も軽減することができます。

このようにカテーテル治療・冠動脈バイパス術それぞれの長所・短所を頭に入れて、患者さん個々の冠動脈の状態を詳細に検討して治療方針を皆さんと相談することにしています。

どの手術でも当てはまることとは思いますが、カテーテル治療も「安全第一」です。最も良いのは「慢性完全閉塞病変の開大に成功する」ですが、ガイドワイヤーやバルーンなどの治療器材が慢性完全閉塞病変を通過することができない場合は、治療に成功する為に術者・スタッフが全力を尽くし頑張ることは非常に重要ですが、大きな合併症が起こらない段階で「安全に不成功で帰ってくる」ことも非常に重要だと考えています。
「成功したけれども合併症で患者さんや御家族が悲しい思いをしている」は最も避けたいことですものね。

慢性完全閉塞病変は慢性期の再狭窄率はやや高いとされておりましたが、以前と比較して薬剤溶出性ステントを使用することができるので遠隔期の治療成績は改善しております。

症例1

慢性完全閉塞病変
症例1のPCI画像(静止画)

慢性完全閉塞病変
症例1のPCI画像(動画)

治療前

治療後

症例2

慢性完全閉塞病変
症例2のPCI画像(静止画)

慢性完全閉塞病変
症例2のPCI画像(動画)

どうしても慢性完全閉塞病変の時は手技時間が長くなります(大部分では2-3時間でしょうか)。何かありましたらスタッフにお声がけ頂けると幸いです。

【文責:楠山 貴教】

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