こんにちは。楠山です。
いかがお過ごしでしょうか?
先日のブログで「もう一つの風景がある」と申しておりました。
今日は予定通りそのお話をしましょう。
時々前回のように綺麗な世界で勉強させて頂くこともありますが、あんな事は滅多にあることではなく、大部分は院内、特にカテーテル検査室という概ねモノトーンの世界で過ごしております。
だって、血管造影写真、白黒だもん。
当院有難いことに現在、心臓血管疾患は皆さんの協力を得ながら365日24時間営業をすることができています。
最近、脱水かな?と思うような心筋梗塞症の方が増えています。
気をつけてくださいね。
そんなある日、夜寝ておりますと携帯が鳴りました。
確か朝3時だったかと思います。
大体こんな時間にかかってくるのは病院です。
相手は仕事中ですので、できるだけ眠たそうで不機嫌な声は出さないようにでてみると、予想通り緊急カテーテルとのこと。
「えいっ!」て気合いを入れて起きて、手早く着替えて鞄をひっつかんで出発です。
でも実は車を出すときには凄くゆっくりしています。
まだ大体頭と身体は寝ていますし、駐車場でご近所の車と事故るのは絶対に避けたいですもんね。
研修医の期間が終わって緊急カテに呼んでもらえるようになったとき、先輩に「少し位遅れても良いので安全に着くように。着かなかったら永遠に手術は始まらないから」と言われました。
私の場合はどうしても相手が心筋梗塞症である事が多いので、時間との闘いになります。
教科書的には発症から6時間以内の再灌流を求めています。
正に「焦らず急げ」ですね。
道路に出て運転している頃にはだいぶ頭も起きてきます。
そうなってくると少し急いで病院へ夜のドライブを行うわけです。
その日もベッドから30分強で病院敷地内に到着し、救急外来で心配そうに座っている御家族に黙礼をして着替えてカテ室に早足で入ります。
扉を入ると心電図の音が聞こえてきます。
その日は普通の速さと音ですし、静かですから大丈夫。
比較的落ち着いているのでしょう。
入ってみると既に検査は始まっていました。
そこからお手伝いをさせていただき、無事に手術は終了。
患者さんを集中治療室にお連れして術者の先生が病状説明を終わらせ、病棟に行けばお役御免です。
当院のHCU は東向きです。
集中治療室の窓を見ると気持ちよい朝日が昇っています。
いつもでしたら on call の日はこのような時のために朝ご飯を買って家に帰るのですが、今日はたまたま買っていません。
後輩達も頑張って良い手術をして私も気持ちよいし、朝ご飯を買いに行きがてら朝の散歩でもするかなと思って着替えて外に出ました。
冬でしたらカテ着にコートを羽織って買い物に出たことがありますが (ある種、歩道でコートを開けたら変態かも・・)、この時期ですから流石にそれはできないですね。
病院を出てみると6月末でしたのでまだ朝の空気は爽やかです。
とても綺麗な朝日を拝みながら近くのコンビニまで歩いてサンドイッチと飲み物を買って帰ってきました。
病院へ向かって歩いていると田んぼに映る病院の姿が見えました。
「綺麗だな」と思って気付けば写真に撮っていました。
いつもはこの辺を自動車で走り抜けるだけで、こんな時間に歩くことは無いからでしょうか。
自分の足で歩いていると見える風景は異なります。
人間の眼や感覚は、歩いて変わる風景の速度でしか認識できないのかもしれないですね。
当然かもしれないですが、元々人間の感覚から眼や頭の処理速度は変わるわけないですもん。
私も5年目ぐらいで上司がいるときに、忙しい当直だった朝、上司が朝ご飯を買ってきてくれたことが凄く嬉しい記憶として残っています。
何事も自分がしてもらってきたことはできます。
気付けば今度は私が後輩にする立場になったんだな・・とサンドイッチを囓りながら苦笑いした朝でした。