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ピックアップ Pickup / Column

楠山Dr

看てもらっている優しさ

こんばんは。皆さんお元気でしょうか。
お休みの日の夜です。
休みの前日の夜、コレはコレで明日は朝決まった時間に起きなくて良い、というのは幸せなことです(ま、ただ最近ではそれでもいつもの時間に目が開いてしまいます。年を取ったということでしょうか)

でも、お休みの日の夜も静かで嫌いではありません。
仕事場から離れて、机の前に座って色々なことを思い出したりしてると心が安らぎますし良い考えも浮かぶことがあります。

いつも出勤の日の朝食は病棟回診の後、看護師休憩室のすみっこで食べることが多いです。
医局(医者の溜まり場)に居場所がないとか、ハミゴになっているわけではないですよ!
研修医の時は病棟にしかいる所はなかったですが、最近はどうしてもカテーテル検査室や他の所にいることが多く病棟にいる時間は減っています。

やはり病院の現場は病棟ですし、病棟管理ができない医者に良いカテはできないとされています。
病棟の雰囲気も知っておく必要がありますので、少しでも多く病棟で時間を過ごしています。

8時前には入院患者さんの診察を終え、カルテを書いて指示を出しまくってから朝ご飯です。
正に朝飯前の仕事です。この生活環境は24歳の時から変わりません。
いかんせん、1年目の時、先輩が830分には「楠山君、患者さんは今日も元気かな?」と聞いてきますので、それまでに報告できるようにしておかないといけません。

朝起きは大変じゃないかって?いえいえ、違うんです。
反対に全体でみると楽なんです。
朝の回診で違和感があれば朝一番で検査して必要があればしっかり対応することができます。
あと、9時になって救急外来対応をしないといけなくなると病棟に帰ることはできなくなります。

更にこれでも循環器内科医の端くれです。
病棟って時間によって表情を変えますが、朝の病棟は静かですので聴診していると良く聞こえるんですよ。

今は少し年も取りましたので上司に報告するのではなく、研修医の先生のお話を聞いて議論したり話の方向によっては緊急ミニレクチャーをしております。
同時に深夜の看護師さんからの報告や依頼を受け、日勤で出勤してきた看護師さんと挨拶したり雑談し、時には師長と懸案事項を処理しています。
色々病棟のこと、見えそうでしょ。

私にとっては大切な時間です。
研修医1年目の時に、あるCCU(冠疾患集中治療部)主任看護師さんに「くっすん、病棟は患者さんの生活の場だから看護師のもの、でも病棟の雰囲気を作るのは医者の仕事よ」と言われたことがあります。

オーケストラでステージマネージャー(裏方)をやっていました。
照明や音響など舞台スタッフ、事務方の皆さんのおかげでコンサートは運営されます。
そういう環境で育ててもらっていたので、当時もニュアンスは何となく理解できたのですが、最近は特にその言葉の大切さを実感するようになりました。

さてそんな毎日ですが、朝ご飯はコンビニで買ってきます。
ちょっと前からマイバックを持っていくようにしています。
回診を終え、休憩室に置いておいたマイバッグをゴソゴソして朝ご飯を取り出しています。

ある日、研修医の先生と今日の指示に関して議論しているときに内線が鳴り、飛び出していきました。

救急対応を終え、そのまま日常業務が始まりました。
まあいつもの如く一日は飛ぶように過ぎ、帰りにコンビニで朝ご飯を買うべい・・、と思って鞄を探ってもマイバッグが無い!
思い出したんですがどこに置いたかも覚えておらず、買い物袋をもらって(3)帰ってきました(覚えとけよ!と声が聞こえましたが覚えてないんですから・・)

日常は川の流れのように過ぎていき、コンビニで「マイバッグ、どこ行ったんだろ」と思い出しながら数日過ぎました。
マイバッグを諦めていたある日、朝コンビニのビニール袋を持って病棟に上がると・・・

「先生、いつものマイバック無いんですか?」と看護師さんに聞かれました。
よく循環器内科医のトレードマーク、聴診器でさえ忙しいと救急外来やカテ室に忘れる人間なので、「うん、どこに置いたか分からないんだ」と答えますと「休憩室に置いてありましたよ。みんな先生のってすぐ分かりました」と言ってくれました。

確かに行ってみると机の上に「いつまで忘れてんだよ・・・(-.-#)」って感じでマイバッグは綺麗にたたんでもらっていました。
ごめんごめん、置いてきぼりにして・・・と反省です。

ふとその時気付いたんです。
何で僕のマイバッグ、みんな知っているんだろ、と。何となく毎日持っている物を見てくれていたんでしょう。
朝は忙しい時間でもあるのですが、そうやって同僚に見てもらっているということ、幸せなことだな、と思いました。

だって少なくとも興味を持ってくれているわけです。
反対に人間関係の一番怖いのは無関心です。
そういう意味ではなかなか病棟に上がってこれなくても病棟の一員なんだな、と温かい気持ちになりました。
表だって分かる人間関係も良いですが、そうやって気付かない所で見てもらっている感触、毛布で包まれているような心地よさを感じました。

さすが看護師さんって感じですね。
そういう風に「看て」もらって僕は幸せかもしれません。

そろそろ寝ましょうかね。お休みなさい。良い夢を。

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