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内頚動脈閉塞症

内頚動脈閉塞症

脳に血流を送る血管のうち、非常に太く重要な役目を果たしているのが、内頚動脈と呼ばれる血管です。左右に1本ずつあり、それぞれ脳の広範囲の血流をまかなっています。そのため、この血管は血流が低下もしくは閉塞してしまうと、脳梗塞を発症することが非常に多い血管です。
内頚動脈の閉塞の原因は、一般的に多いものとして、動脈硬化(アテローム血栓性)、脳塞栓症、動脈解離などが挙げられます。突然詰まるものも徐々につまるものもあり、それぞれ発症時の症状や重症度・後遺症が変わってきます。
脳には、血流が足りない部分を自分で補おうとする働きがもともと備わっています。その予備能力でまかなえる範囲の血流低下であれば脳梗塞にならずに済みますが、血流の低下が著しく脳の働きが保てない場合、脳梗塞となってしまいます。また、血流が低下した状態にさらされ続けてしまうと、今後の脳梗塞の発症リスクが高まることも言われています。

治療

内頚動脈閉塞症を発症された場合、2つの治療法があります。それは、

  1. 外科的な治療は行わず、内服の調整で再発予防に努める
  2. 開頭手術にバイパス術

です。そのなかで、手術により脳梗塞発症リスクを軽減できる条件の一つとして

  1. 73歳以下
  2. 症状が無い、もしくは軽度で生活が自立できている
  3. 広範囲の脳梗塞に至っていない
  4. 内頚動脈もしくは中大脳動脈の閉塞、高度狭窄を認める
  5. Xe-CT、SPECT、PET(いずれも脳の血流を判断する検査)のいずれかで、CBF(脳血流)が正常値の80%以下、かつ負荷試験で反応性が10%以下

という報告があり、この条件を参考に手術の適応を判断します。
脳の中に正常に発達している血管では今必要な血流がまかなえていない状態です。そのため、頭蓋外血管(頭皮の血管)の浅側頭動脈(STA)を、脳の表面にある中大脳動脈(MCA)に繋ぐ手術を行います。

手術は、全身麻酔でおこない手術用の顕微鏡を使って手術を行います。

まず頭部を専用のピンで固定した後、皮膚を切開し、頭皮の下にある浅側頭動脈を露出します。この際、部分的に剃毛を致します。血管吻合できるだけの十分な長さを採取した後、側頭筋を切開し骨を露出、専用の道具を使って頭蓋骨を外します。骨と脳の間には硬膜という硬い膜があるので、これを切開し脳を露出します。
脳の表面の血管の走行を確認し、吻合に適した血管を選択してSTA-MCAバイパスを行います。
吻合の際は、脳表のMCAを切開する必要があるため、一時的にクリップを用い、血流を遮断します。その時間が長時間となると、遮断されている血管の領域が脳梗塞になる可能性があるため、注意深く、遮断時間を短くできるよう心がけます。吻合が終了すると、遮断した血管を解除し、問題なく血流が流れていることを確認し、問題なければ傷を閉じて手術を終了します。
硬膜を縫合し、外した頭蓋骨をチタンプレートでもとに戻し、場合によりドレーンという細いチューブを入れて、筋肉や皮膚を元通りに縫合し手術を終了します。
なお、閉創に関してですが、脳を覆っている硬膜の部分を吻合した血管が走行するため、部分的に硬膜が欠損することが予想されます。これをそのまま放置すると、髄液漏と呼ばれる状態となり、感染や傷の腫れに影響します。そのため、専用の人工硬膜などを用いて可能な限り閉鎖を行います。

左内頚動脈閉塞を認めます。灌流評価をおこなったところ、左側の脳血流量が低下しており、バイパス手術をおこないました。

脳表の血管に頭皮の血管(浅側頭動脈)を吻合しています。

吻合を完了しました。

術中ICGで吻合した血管が繋がっていることを確認しました。

術後 パイパス血管は開存しております。

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