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正常圧水頭症

正常圧水頭症

脳のなかの脳室という部位では脳脊髄液とよばれる液体が産生されており、この液体が脳と脊髄の周りを循環し、養っています。水頭症とは何らかの原因でこの脳脊髄液の吸収や循環が悪くなり、脳室が大きくなってしまい脳の機能が悪くなった状態です。
水頭症にはいくつか種類があります。脳出血やクモ膜下出血の直後におこる急性水頭症や、クモ膜下出血慢性期におこる続発性正常圧水頭症などは、水頭症の原因がはっきりしています。しかしこのような明らかな原因はわからないものの、水頭症を来し、症状を呈するものを特発性正常圧水頭症と呼びます。

脳室拡大を認めます。

円蓋部(頭頂部)は比較的密ですが、シルビウス裂の拡大を認めます。

症状

正常圧水頭症でみられる特徴的な症状は3つあります。それは、歩行障害、認知症、尿失禁です。これらの症状がすべて生じる場合もあれば、部分的に認められることがあります。

  1. 歩行障害

    小刻みで不安定な歩行になったり、うまく歩き出せないといった症状がでます。また不安定性のために、開脚歩行となったり、すり足歩行になることもあります。

  2. 認知症

    集中力が低下したり、活気がなくなったりします。自発性も損なわれるために、表情が乏しくなったり、趣味をやらなくなったりすることもあります。また、物忘れが激しくなることも特徴の一つです。

  3. 尿失禁

    頻尿となり、トイレが近くなります。また、尿を我慢できる時間が短くなり、尿失禁を来すことがあります。

治療

手術方法は脳室腹腔短絡術(VPシャント)、脳室心房短絡術(VAシャント)、腰部くも膜下腔腹腔脳脊髄液短絡術(LPシャント)があります。
当院では創部が小さく、挿入するチューブが短くなる脳室心房短絡術を多く行っております。

手術は全身麻酔下に行います。埋め込むシャントシステムは体にとっては異物であるため、感染の危険性を少しでも減らすため、頭髪は剃毛します。
その後、頭の皮膚を切開し、頭蓋骨に直径1.5cm程度の穴をあけ、ここから脳室の中にチューブを差し込みます。このチューブにあとで圧の設定を変えることにできる装置をつなぎ、頭皮の下に埋め込みます。さらに頚部に約1cmの切開を加え、頚部の静脈にチューブを挿入します。埋め込んだ装置がうまく働くことを確認して、閉創して手術は終了です。

脳室内にチューブが挿入されています。

術後のレントゲン写真です。
後頭部の皮下にシャントデバイスが挿入されています。

チューブは心房近くに留置し、髄液を排出しています。

この手術を受けた方には定期的な受診が必要です。患者さんの症状に合わせて、徐々に設定圧を下げていき、ちょうど良い圧まで調整します。圧の再設定には専用の装置を用いて行います。

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