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アレルギー性結膜疾患について

分類

季節性あるいは通年性アレルギー性結膜炎、アトピー性角結膜炎、春季カタル、巨大乳頭結膜炎の4つのタイプに分類されます。

重症度は

アトピー性角結膜炎や春季カタルは重症に分類されます。季節性あるいは通年性アレルギー性結膜炎は軽症に分類されます。 巨大乳頭結膜炎はソフトコンタクトレンズなどが関与するタイプのアレルギー性結膜疾患です。

治療法は

いずれのタイプでも基本的に抗アレルギー点眼薬を処方します。改善の無い場合はステロイド点眼薬を追加処方しますが、緑内障に注意が必要です。春季カタルには免疫抑制点眼薬がとても効果的です。

アレルギー性結膜疾患について

田淵 アレルギー性結膜疾患ですが、具体的には、どのような病気になるのでしょうか?
福島 アレルギー性結膜疾患は目に起きる、様々なアレルギー疾患の総称です。
アレルギーは、体内に異物が入ってきたときに起こる「免疫反応」の一つで、本来無害なものに対して身体が過剰に反応する結果、アレルギーを生じます。
例えば、スギやブタクサの花粉は、それ自体に毒性があるわけではありません。アレルギーの原因は、まだ分からないことが多いのですが、最近の大きな環境の変化、例えばディーゼルエンジンによる大気汚染や、密閉した住まいにダニが増えていることなどが原因ではないかと考えられています。

(写真1)

田淵 そうなんですね。
福島 また、アレルギーになりやすい体質は、遺伝しやすいこともよく知られています。後に述べるように、目はアレルギーが起こりやすい臓器です。
目のかゆみやゴロゴロする感じ(異物感)が主な症状で、強い充血や、目やにが出ることもあります。(写真1)
非常に症状が強い場合には、日常生活にも支障を来すことがあります。
田淵 確かに目は、直接、外部と触れていますから、アレルギーが起こりやすいというのも頷けますね。アレルギー性結膜疾患の中で、特に多いものは、どのような症状でしょうか?
福島 アレルギー性結膜疾患のなかでも花粉症、とりわけ春先に生じるスギ花粉症は、毎年非常に多くの方が発症します。
田淵 花粉症に悩まれている方は、本当に多いですよね。
福島 はい、花粉症の目の症状を花粉性アレルギー性結膜炎と呼んでいますが、アレルギー性結膜疾患の患者さんの約85%は、花粉性アレルギー性結膜炎だと推定されています。
我が国では約2,000万人アレルギー性結膜炎の患者さんがおり、その大半は花粉症によるものであると推測されています。
田淵 そんなに多くの方が、花粉症に悩まれているんですね。
花粉症の原因として、スギ以外には、どのようなものがありますか?
福島 カモガヤなどイネ科の雑草や、ヨモギ、ブダクサ、ヒノキなどによる花粉もあり、一年中何らかの花粉が空中を飛んでいます。

(写真2)

田淵 つまり一年中、花粉症になる可能性があるということですね。
福島

はい、アレルギー性結膜疾患にはそのほかに、アトピー性角結膜炎、春季カタル、巨大乳頭性結膜炎という3つの疾患が含まれています。
これらはアレルギー性結膜炎に比べると、はるかに少ないですが、いずれも治療の難しい疾患です。
このうち、アトピー性角結膜炎はアトピー性皮膚炎の方にみられる、慢性結膜炎を指し、春季カタルは上まぶたの裏側に、巨大な乳頭がみられ、幼稚園児から小学生の男の子に多い特徴のある疾患です。(写真2)

どちらもアトピー性皮膚炎の患者さんが増加してくるのに伴って、最近増加していると考えられています。

田淵 そうなんですね。では、アレルギー性結膜疾患の症状としては、どのようなものがありますか?
福島 目のアレルギーの症状としては、かゆみが最も代表的なものです。
目そのものが、かゆく感じる場合もありますが、まぶたやまぶたの縁の部分に特にかゆみが現れやすく、かけばかくほど症状が強くなることもあります。
次に多いのはごろごろした感じ、「異物感」というものです。
涙もよくみられる症状です。
田淵 確かに花粉症になると、目がかゆく、ごろごろしたり、涙がでたりしますね。
福島 一般的に、ある季節に毎年起きること、程度の差はあっても、両方の目に生じることもアレルギー性結膜疾患の特徴です。
一方、春季カタルなどの重症例では、角膜の合併症によって目に痛みを生じたり、角膜の濁りのために視力低下を引き起こしたりすることもあります。

(写真3)

田淵 それでは花粉症を含めた、アレルギー性結膜疾患の治療は、どのように行なうのでしょうか?
福島 目のアレルギーの治療には、抗アレルギー薬という薬が主として用いられています。
これは、先ほど述べたアレルギー反応の中で、かゆみや、くしゃみなどを引き起こす指令を伝える物質が、細胞から血液に出てこないように抑える薬です。(写真3:写真1の治療後)
田淵 なるほど。抗アレルギー薬はどのように使うのでしょうか?
福島 通常、目薬として使用します。症状が強い場合は、副腎皮質ステロイド薬も用いられることがあります。
ホルモンの薬である副腎皮質ステロイド薬は、適切に使用すればとても優れた薬ですが、目に緑内障などの副作用が現れることがあるので、使用にあたっては注意が必要です。

(写真4)

田淵 そうなんですね。
福島 それでも、強いかゆみなどで日常生活や仕事に差し支えがある場合は、抗アレルギー薬を飲み薬として服用することもあります。
最も重症な春季カタルには、臓器移植の拒絶反応を抑えるための薬である、免疫抑制薬の目薬も使われます。(写真4:写真2の治療後)
以上のような治療法は、症状を鎮めるための「対症療法」というものですが、これに対しアレルギーのもとを抑える治療(「原因療法」)に、減感作療法があります。
田淵 減感作療法(げんかんさりょうほう)という言葉がでてきましたが、これは、どのような治療法なのでしょうか?
福島 はい、原因となる抗原が検査で分かっている方に対し、その抗原を低い濃度から、徐々に高い濃度まで、時間をかけて注射することによって、身体が反応しないように慣らす方法です。
最近では治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場し、自宅で服用できるようになりました。
「舌下免疫療法」は、スギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と確定診断された患者さんが治療を受けることができます。
田淵 なるほど。では花粉症を含めたアレルギー性結膜疾患の予防としては、どのような方法があるのでしょうか?
福島 はい、花粉症の場合は、症状の出現しやすい季節に、できるだけ花粉と接しないように工夫することが重要です。
ゴーグル型の眼鏡や花粉防止用のマスクの着用が最も効果的です。
花粉が飛びやすい日は、外出や洗濯物などを外に干すことを避け、外出から帰宅したときには、服についた花粉を十分に落とすようにしましょう。
ハウスダストの場合は、部屋の清潔を心掛けたり、寝具を干したりするのも効果的です。
また動物を屋内で飼うことは避けたほうがよいでしょう。
田淵 やはり、花粉やアレルギーの元となる物質に、なるべく触れないようにすることが、最も効果的な予防法になるということですね。
福島 ここまで述べてきたように、結膜アレルギーは、全身のアレルギーの一部であると同時に、目という臓器に特有の特徴がみられます。
時期が過ぎれば治るものだけでないものや、専門医の治療を受けないと視力障害を残す可能性のあるものまで、様々な程度の病気があることもご理解頂きたいと思います。
体質だから仕方ないと諦めたり、逆に簡単に考えずに、人生を快適にそして豊かに過ごすためにも、目のアレルギーを十分知って、つきあっていくことが現代人には大切なことだといえるでしょう。
田淵 いずれにしても、予防を心掛けることが大切なのはもちろんですが、何かおかしいと思ったら、専門の医療機関を受診することが大切ですね。
福島先生、ありがとうございました。
福島 ありがとうございました。
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