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ぶどう膜炎について

ぶどう膜炎について

田淵 まず、ぶどう膜というのはどういうものでしょうか。
加藤 ぶどう膜とは虹彩・毛様体・脈絡膜の総称です。
これらの組織は血管やメラニン色素が豊富であり、色や形がぶどうの房に似ていることからこのように呼ばれています。
田淵 なるほど、眼球の一部分を示す解剖学的な名称なんですね。ぶどう膜炎の患者さんの症状としてはどのようなものがありますか。
加藤 充血や霧視(かすんで見える)、視力低下、眼痛などの症状があります。
田淵 ぶどう膜炎を起こす原因疾患として代表的な3大疾患がありますが、簡単に説明して頂けますか。
加藤 ぶどう膜炎というのはぶどう膜を主たる場として引き起こされる眼炎症の総称ですので、その中に様々な疾患が含まれています。
ぶどう膜炎を引き起こす3大疾患はベーチェット病、サルコイドーシス、Vogt-小柳-原田病であるといわれています。
これらの疾患は眼だけではなく、全身にも炎症所見が認められることが多いのが特徴です。それぞれ経過や治療方針が異なるために、正確な診断が求められます。
[急性前部ぶどう膜炎の前眼部写真]

結膜の充血と前房下方に白色沈殿物(前房蓄膿)を認める。

田淵 加藤先生は、Vogt-小柳-原田病についての臨床研究をまとめられましたが、その点についてお聞かせ下さい。
加藤 光干渉断層計(OCT)という網膜の断面を見ることができる検査機器があるのですが、Vogt-小柳-原田病では網膜の最外層である網膜色素上皮が炎症に伴い皺を生じることがあります。その所見の診断的意義をまとめました。
[ 原田病の症例のカラー眼底写真(左図)とフルオレセイン蛍光眼底写真(右図)]

同一眼、同一時の写真である。青矢印の先付近が房状の漿液性網膜剥離を呈しており、蛍光眼底造影写真でより明瞭に病変部が描出されている。

田淵 ぶどう膜炎に対してどのような治療が行われるのでしょうか。
加藤 ステロイドという薬を点眼、内服、点滴などの形で使用することが多いのですが、疾患によって投与方法や量が異なったり、そもそも使用すべきでない場合もあります。
田淵 注射療法や、場合によっては硝子体手術の選択になる事もありますよね。
加藤 薬剤の全身投与に伴う副作用を防ぐ目的で眼の注射を行ったり、ぶどう膜炎の結果生じた硝子体混濁や白内障、黄斑前膜などに対しては手術加療を行うこともあります。
田淵 3大ぶどう膜炎以外にも、予後の悪い経過をたどる疾患がたくさんある大変難しい領域ですが、そのような疾患について教えて頂けますか。
加藤 内因性眼内炎は病原体が血行性に(血液の流れに乗って)眼まで到達して感染する結果、炎症を引き起こす疾患です。主に細菌性と真菌性がありますが、一般的に細菌性の方が重症になります。患者さんの全身状態が悪いことが多いので、発見されるのが遅れて失明につながるケースがあります。その他、ヘルペスウィルスなどにより引き起こされる急性網膜壊死も重症化するケースが多く、適切な治療を行っても視機能が著しく低下する場合があります。また、腫瘍である悪性リンパ腫は一見ぶどう膜炎のように見えてしまい診断に苦慮するケースもあります。
田淵 一旦落ち着いてからも、治療を継続しなければ再発してしまう疾患もあると思いますが、その点はいかがでしょうか。
加藤 ぶどう膜炎は再発しやすいです。
なぜならば、現時点では多くのぶどう膜炎に対する治療はステロイドによる対症療法で、炎症を引き起こす根本治療が多くの疾患でできていないからです。
そのため、長期間通院になる方が大勢おられます。大変ですが、薬の副作用とのバランスを考慮の上、治療方針を立てなければなりません。
個々に応じた診療を心がけておりますので、ご理解のほど宜しくお願いします。
田淵 ツカザキ病院ぶどう膜炎外来の責任者として、この領域のツカザキ病院眼科の未来像を教えて下さい。
加藤 眼科疾患の中でも特に原因が分からない病気が多く含まれていますので、小さなことでも臨床に役立つ発見をしていきたいです。
田淵 ありがとうございました。
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