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マイボーム機能不全

マイボーム機能不全

テーマのマイボーム機能不全とはどのような疾患ですか。

マイボーム腺の機能が広く全体的に低下した状態をマイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction: MGD)といいます。
症状は様々で目の不快感、異物感、乾燥感、圧迫感などがあります。
「目がごろごろする」、「まぶたが重い」などと感じられる方が多いですね。

マイボーム腺はあまり聞き慣れない言葉だと思います。どのような器官なのでしょうか。

マイボーム腺は上下のまぶたに数十個ずつ並んでおり、マイバムと呼ばれる脂を分泌している管のような器官です。
この脂が涙の表層を形成し、涙が蒸発して乾燥しやすくなるのを防いだり、目の表面に涙が広がるのを助けたりする働きがあります。

涙の安定性を保つ働きのある大切な器官ですね。マイボーム腺に関連する疾患は他にもあるのでしょうか。

涙が乾燥しやすくなるドライアイの85%以上がMGDと関連していると考えられています。
ドライアイについては今村先生の記事もご覧になってください。
また、マイボーム腺が局所的に障害されて引き起こされる疾患もあります。
マイボーム腺に細菌が入り炎症が起こると、麦粒腫というまぶたの腫れ物ができることがあります。「めばちこ」や「ものもらい」と呼ばれるものですね。抗菌薬による治療で良くなります。
似たような疾患で、マイボーム腺が詰まり脂が溜まってできる霰粒腫があります。これは炎症を抑える薬や、手術で腫瘤を摘出して治療します。

ドライアイや麦粒腫、霰粒腫も頻度の多いありふれた疾患ですね。MGDはどのくらいの頻度で見かける疾患ですか。また発症しやすい人の特徴などがあれば教えてください。

研究では日本人の約33%がMGDを患っていると言われています。
MGDになりやすい人の特徴として、男性、高齢、肥満などがあります。
またマイボーム腺は性ホルモンと関連があり、女性であれば更年期以降に起こりやすいとされています。
他にもシェーグレン症候群や前立腺肥大症、アトピーや酒さなどの皮膚病などが関連し、MGDを促進すると考えられています。

3人に1人と考えるととても多いですね。何か日常生活でできる予防法はないのでしょうか。

日常でできる対策として温罨法(おんあんぽう)をおすすめしています。
温罨法は市販のホットアイマスクや、お湯や電子レンジで温めたタオルをまぶたの上に乗せて、目を温めることで脂の分泌を改善する方法です。タオルで行う場合は、直接まぶたが濡れないようにビニール袋に入れて行うのが良いでしょう。
1日2回各5分間行うことで十分な効果が得られます。
注意点として、目の充血やまぶたの腫れがあるときに温罨法をすると、炎症を悪化させてしまうことがあります。そのような時は先に眼科を受診するようにしてください。
他にもまぶたを清潔に保つ眼瞼清拭も効果的です。目元専用のシャンプーやぬるま湯でまつ毛の付け根を優しくマッサージしながら洗うことで、まぶた周囲の感染を予防し、古い脂を取り除くことが出来ます。

タオルを用いた温罨法

日常的な方法で十分に予防することができるのですね。他に生活習慣や食事で気をつけることはありますか。

MGDはメタボリックシンドロームなどの生活習慣病と関連していると考えられています。
適度な運動はとても大切です。
また、魚に多く含まれるω-3脂肪酸がMGDに対して予防的に働きます。普段の食事に魚を取り入れることを意識すると良いでしょう。

病院ではどのような検査がされるのでしょうか。

MGDの診断基準として、自覚症状、マイボーム腺開口部周囲の異常所見・閉塞所見があります。
まず症状についてお話を聞き、診察室の顕微鏡で目やまぶたの診察を行います。
眼瞼縁の血管拡張、粘膜皮膚移行部の移動、眼瞼縁不整などがないかを観察します。マイボーム腺の閉塞所見であるpluggingやpoutingなどを確認し、さらに圧迫でマイボーム腺からの脂の圧出が低下していることを確認します。また、涙の量を評価するために、フルオレセイン染色という方法で目の表面の観察をします。
こちらに所見の写真が掲載されておりますのでご確認ください。
検査としては、マイボグラフィやコンフォーカルマイクロスコピーという機械を用いて、マイボーム腺の形態を直接観察することができます。

正常マイボーム腺
軽度MGDのあるマイボーム腺
高度MGDのあるマイボーム腺
コンフォーカルマイクロスコープによるマイボーム腺画像

病院ではどのような治療を行っていますか。

まずは先述した日常生活での対策を試していただきます。
また、診察室でまぶたを圧迫してマイボーム腺の詰まりを定期的に取り除きます。
抗菌薬の点眼や内服が効果的な事もあり、これらを組み合わせて治療をしています。

MGDで日頃から慢性的な目の不快感を感じていらっしゃる方は多いかと思います。まずは運動や食事など生活習慣を工夫することが大切ということですね。

はい。それでも良くならない場合や、病院への受診が必要かご自身では分からないこともあるかと思います。
症状で気になることがあれば、お気軽に受診していただけたらと思います。

ありがとうございました。

参考文献
The International Workshop on Meibomian Gland Dysfunction
Kelly K. Nichols, Gary N. Foulks, Anthony J. Bron, Ben J. Glasgow, Murat Dogru, Kazuo Tsubota, Michael A. Lemp, and David A. Sullivan
Effects of Eyelid Warming Devices on Tear Film Parameters in Normal Subjects and Patients with Meibomian Gland Dysfunction.
Arita R, Morishige N, Shirakawa R, Sato Y, Amano S. Ocul Surf. 2015. Oct;13(4):321-30.

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