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手術室内医療安全管理AIシステムについて

ツカザキ病院眼科 疾患説明シリーズ 手術室内医療安全管理AIシステムについてツカザキ病院眼科 疾患説明シリーズ 手術室内医療安全管理AIシステムについて
田淵 まず、手術室内医療安全管理AIシステムとはどのようなものでしょうか。
石飛

眼科手術において間違えることができない3つの確認事項である

  1. 本人情報
  2. 左右眼情報
  3. 眼内レンズ情報
を確認する人工知能(AI)用いた安全管理システムです。
当科のAI研究チームによって独自に研究開発を行いました。
<予定通りの場合>
<間違いの場合>
田淵 なるほど、どうして手術室内医療安全管理AIシステムが必要なのでしょうか。
石飛 眼科手術は全科の中で最も手術件数が多く、白内障手術は国内で年間約170万件が行われています。
大量の手術の中で、1件のミスが患者さんに重篤な不利益を与えてしまいます。ミスを防ぐための情報確認を我々医療従事者は努めています。
しかし、ヒトは全ての情報確認をミスなく行うことが、残念ながら不可能であるという特性があります。
そこで、我々はヒト以外の機械的チェックシステムとしてAIを導入することにしました。
田淵 これまではどのような対策がとられていたのでしょうか。
石飛 当院では患者さんに本人情報の載ったネームバンドを巻いて頂き、左右シールを装着して頂いております。
また、眼内レンズは前日と当日の朝に確認を行っています。さらに、それぞれの確認を手術室に入る際や手術直前にも複数人で行っています。
この厳格な確認体制によって、ほぼ全てのミスは途中で気付く仕組みをとっています。

<ネームバンド>

<左右シール>

<眼内レンズは専用BOXにて1件ずつ準備>

田淵 これまでの仕組みだけで十分ではないでしょうか。
石飛

人間に完璧はありません。人間は適度な緊張状態であっても1000回に3回はミスをするという報告があります。また、1万回に1回は通常ありえないミスをすることも分かっています。さらに、複数人で確認した場合、3人以上からは人任せになり、ミスの検出率が下がるという報告もあります。他に、疲れや急いでいる時、一緒にいる人間関係からもミスの可能性は上がります。
ミスを必ず防ぐために、人間の行動特性を踏まえて、我々はこれまでの仕組みと人間以外のチェックシステムの両方が必要だと考えています。

田淵 ツカザキ病院眼科では、どの程度の手術件数があるのでしょうか?
石飛 注射の手技を含めることになりますが、年間で1万件を超える治療を手術室で行っています。これは、さきほどの話の繰り返しになりますが、1万回に1回のありえないミスの危機に毎年さらされていることになります。
田淵 AIの精度はどの程度なのでしょうか?
石飛 実証実験を行った結果は認証精度100%でした。この時はAIと研修医3名で本人、左右眼、眼内レンズの認証精度を比較しました。その結果、研修医はいずれも100%の結果をつくることができませんでした。この実験から、AIは正しく使用すれば人間よりも精度が高いことが分かりました。
田淵 導入から現在までの取り組みについて教えてください。
石飛 患者さんの情報をカルテ以外からも得られることで安心感に繋がる、という声をあるスタッフからは頂きました。しかし、導入当初は想定していない撮影で認証精度が下がったり、忙しい中だと実施が後回しになることもありました。
そこで、実施成績をフィードバックするミーティングを毎月行い、原因を調査しました。どのような問題があったのかを明確にすることや、現場からの要望を基に仕組みの改善を続け、現在はほぼ100%の認証精度と実施率になっています。
<ミーティングの様子>
田淵 最後に、今後の展望を教えてください。
石飛 手術室内医療安全管理AIシステムを活用する事で、より安心できる手術環境を提供できます。しかし、導入すればするほど現場からは想定外の問題が発生します。今後も地域の皆様にとって安全で安心な環境をつくり続けていく為に、スタッフ内で連携をとりながら改善に努めていきます。

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