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白内障術後の見え方について

田淵 白内障手術を受けるにあたって、術後の見え方が気になるという患者さんも多いと思われますが、実際にはどのようになるのでしょうか。すぐによく見えるようになるのでしょうか?
田邊 白内障以外に眼の病気がない場合、多くは手術翌日からよく見えるでしょう。
それでもなかなか回復しない場合は手術の影響で角膜に一時的なむくみがあることや、眼内レンズを通した見え方に脳が慣れていない可能性があります。
また黄色く濁っていた水晶体を取り去ったので、光が眩しく感じたり青みがかって見えたりすることもあります。これらは最初こそ気になりますが、長くとも数か月程度で気にならなくなることがほとんどです。
田淵 手術後の生活で気を付けるべきことはありますか?
田邊 一番気を付けて予防しなければならないのは眼にばい菌が感染しておこる眼内炎で、これは最悪の場合失明にも至る病気です。
当院では予防のために抗菌薬や炎症を抑えるステロイドの点眼薬を処方することが多いので、1週間程度はそれをしっかり使うことが大事です。
また、むやみに眼のあたりを触ることでも感染のリスクが上がってしまうので、眼を強くたたいたり擦ったりといった刺激になることは避けたほうが良いでしょう。
当院では1週間程度保護用のゴーグルをお渡ししています。
田淵 感染症はとくに気を付けないといけない合併症ですね。そのほかに術後の合併症はありますか?
田邊

手術を行ってから数年以内に視力低下や目のかすみが生じる「後発白内障」という病気があります。
白内障手術ではもともと水晶体が入っていた袋の後面の膜(後嚢)を残してレンズを入れるのですが、この膜が白く濁ることで後発白内障となります。
基本的にはレーザーを使うことで問題なく治療することができます。

また、手術後に長期間経過して眼の組織がもろくなり、一度入れた眼内レンズが傾いたり外れたりするレンズ脱臼が生じることがあります。
この場合は再び手術をして新しく交換しなおすことが治療として挙げられます。

田淵 レンズには単焦点レンズと多焦点レンズがあると言われますが、見え方に違いはあるのでしょうか?
田邊 単焦点レンズはある1点に焦点距離を合わせたレンズ、多焦点レンズは複数の距離に焦点を合わせたレンズのことです。
患者さんと事前に相談をして、日常生活でどの距離を主に見たいかによって調整していきます。
たとえば遠くに合わせた単焦点レンズを使った場合には手元をよく見たいときに老眼鏡を使う必要がありますし、近くに合わせた場合は遠くを見るために近視用眼鏡を使う必要があります。
逆に多焦点レンズでは近くと遠く両方同時にピントを合わせることも可能で、術後に眼鏡を使用しないで済む可能性が高いでしょう。

遠焦点レンズ

近焦点レンズ

多焦点レンズ

田淵 では多焦点レンズの方が優れているということでしょうか?
田邊

一概にそうともいえません。術後には夜間に信号や月など明るいものを見ると周囲に光の輪のようなものが現れるハロー現象や、車のヘッドライトなどの強い光がぎらついて見えるグレア現象というものが起こります。多焦点レンズでは単焦点レンズと比較してこれらの現象が生じやすいといわれています。この点では夜間に運転することが多い方にはやや不便なレンズであるかもしれません。

また多焦点レンズは通常の保険診療とは異なる選定医療という扱いであり、手術費用の負担が大きくなってしまう問題があります。

通常

ハロー現象・グレア現象

田淵 一長一短ということですね。
田邊 そうなります。いずれにしても患者さんの希望や生活スタイルをよく考慮したうえでレンズの種類を決めたほうがいいのは間違いないでしょう。一定のリスクや負担を負って手術を選ばれるわけなので、術後により良い見え方になるように考えていきたいですね。
田淵 それぞれの患者さんに合わせたやり方があるということですね。ありがとうございました。
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