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眼外傷について

はじめに

眼外傷について

眼外傷はその性質から、以下の3つに分類することが出来ます。

  • 鈍的外傷:眼球周囲に打撲などの鈍的な衝撃を受けることにより、眼球およびその周辺に様々な障害を生じます。
  • 鋭的外傷:鋭い刃物やガラス片などにより、眼球の壁に創を生じます。
  • 化学外傷・熱傷:洗剤、パーマ液、工業薬品などの化学薬品が飛入することにより眼表面に様々な障害を生じます。

原因は?

  • 鈍的外傷:学童期の特に球技スポーツでのボールによる打撲や、格闘技をされている方の殴られ外傷、小児期などには自分の指が目に入って来院される方が多いです。
  • 鋭的外傷高齢者の転倒、交通事故による裂傷、庭仕事時に木の枝が目に入る場合が多いです。
  • 化学外傷・熱傷:家の掃除の際や、または工場などで薬品が目に入ってしまう方がほとんどです。

治療・当科では

  • 鈍的外傷:眼内への影響によって対応が変わります。急激な眼球内圧の上昇により開放創を生じた場合には緊急で手術が必要になります。また、眼球の周囲を取り囲んでいる眼窩骨に骨折を生じた場合は、放置しておくと目の筋肉の動きが悪くなってしまうため早急に眼窩骨を整復する必要があります。
  • 鋭的外傷:鋭的な外圧が加わった部分の眼外膜(角膜、結膜、強膜)に開放創を生じる場合があり、創の縫合や、その後の網膜剥離など眼内の合併症があれば手術を行います。また、外圧の原因となった異物が眼内に存在していれば、その除去のために緊急で手術を行います。
  • 化学外傷・熱傷:可能な限り早く、かつ大量の生理食塩水で洗い流します。瞼の裏側に薬液が入ってしまうことがあり、その部分まで十分に洗浄します。

眼外傷について

田淵 今回は目に何か物が当たって起きる眼外傷について教えてください。
三好 眼外傷といっても、様々な種類があります。まずはその原因によって鈍的・鋭的・化学的な分け方が出来ます。日常生活で最も多いのは鈍的な外傷ではないでしょうか。
田淵 当院でも学童期の患者様でボールが目に当たって来られる方が多いですよね。
三好 そうですね、ボールに限らず、指が目に入ったり、格闘技をされている方では目を殴られてしまったり、車の交通事故でエアバックによるもの、稀な状況としてはゴム製のバンジージャンプの紐が目に当たったという報告もあるようです。
田淵 その時、眼内ではどのようなことが起きていますか?
三好 前眼部と後眼部、眼外に分けてご説明いたします。
前眼部では、角膜障害、前房出血、虹彩離断、外傷性散瞳・縮瞳、隅角解離、毛様体解離、外傷性白内障、水晶体脱臼などがあり、

角膜障害*

前房出血

*画像は黄色い色素(フルオロセイン)で角膜表面を染色し青い光で撮影したものです。眼表面の傷は黄色く染色されます。

虹彩離断

外傷性白内障

三好 眼外傷といっても、様々な種類があります。まずはその原因によって鈍的・鋭的・化学的な分け方が出来ます。日常生活で最も多いのは鈍的な外傷ではないでしょうか。

網膜振盪

外傷性網膜剥離

硝子体出血

三好 眼外では、打撲による衝撃で瞼が裂けてしまう眼瞼裂傷や、眼球を動かす筋肉ごと骨が折れてしまう眼窩吹き抜け骨折、視神経周囲の蝶形骨という骨が折れてしまう視神経管骨折などがあります。
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田淵 実に様々な病態が生じるんですねぇ。
三好 はい。続いて鋭的な外傷についてお話させてください。
鋭的な外傷は、ガラス片や鉄片など尖ったものが目に入ることで生じます。特に目の中に異物として残った場合、感染や潰瘍を生じるため、早期に摘出し抗菌薬点眼等による治療をする必要があります。特に鉄片は30分で上皮に錆び付き、瞬きをしても取れなくなります。その後鉄イオンが溶け出し、鉄片周囲の角膜が混濁した後、72時間で角膜が溶解していきます。 異物が角膜を超えて網膜まで到達した場合、網膜変性(視野障害・暗順応低下など)が起こり、最悪失明の恐れがあります。
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田淵 異物は確実に取り除く必要があるんですね。
三好 その通りです。当院では点眼麻酔を行い外来で対応することで、眼表面に留まった異物であれば、痛みなく迅速に摘出することができます。眼内に達する異物があれば専門医によって緊急手術を行います。
続いて化学外傷というものについてお話いたします。
化学外傷は洗剤・パーマ液・工業用薬品などの化学薬品が眼に飛入することにより生じます。一般に酸よりもアルカリの方が強い障害となります。
結膜充血・壊死、角膜上皮障害、実質混濁を来たし角膜と結膜の境目のPalisades of Vogtという領域が障害されることで、角膜が再生できず、結膜が角膜上に侵入してくることがあります。
三好 受傷直後の写真です。右の写真で角膜表面が広範囲に黄色く染まっていることから、表面が削れてしまっている様子がわかります。
田淵 なかなか衝撃的な写真ですね。
三好 これを放置していると周囲の結膜が増殖して侵入してくるため、治療はとにかく早急な洗眼が重要です。しっかり洗浄した後、感染予防・消炎・角膜上皮保護を行います。洗浄が不十分な場合、遷延すると角膜穿孔を来たすことがあるため、治療用コンタクトレンズを用いる場合もあります。
その他強い紫外線に暴露することで急性あるいは慢性の角膜上皮障害を来たします。これは「電気性眼炎」と呼ばれ、日常では溶接工の仕事に従事している方や、スキー・スノーボード等で雪山で多量の太陽光線を浴びる方に発症します。後者は俗に「ゆきめ(雪目)」と呼ばれています。
田淵 なるほど。ところで眼外傷の分類については AJO (American Journal of Ophthalmology)などでよく用いられる有名な分類があったと記憶していますが、それについても教えてください。
三好 1996年にkuhnらによって提唱されたStandardized Classification of Ocular Trauma(眼の外傷分類)のことですね。
国際眼外傷学会ではBirmingham Eye Trauma Terminology System (BETTS)と言われている分類です。
臨床的に眼外傷の明確な分類は困難で、世界的にも病態を現す共通言語が不足していることから、曖昧になっている病名を標準化しよう、という試みです。下記に原本と日本国内で使われている訳を載せましたが、まだ日本ではあまり浸透していない現状です。

【引用文献】A standardized classification of ocular trauma. Ophthalmology. 1996; 103: 240–243

田淵 最後にツカザキ病院眼外傷チームの未来像を教えてください。
三好 患者様の今後の視力を守るために迅速な対応をすることは勿論です。眼外傷の対応は多岐に渡りますし、専門的な技術が要求されます。救急疾患を受ける眼科が少ない中、当科では今後は眼内だけでなく、眼周囲及び頭蓋内疾患を含む緊急疾患に適切に対応し、迅速に専門医へコンサルトできるように取り組んで参ります。
田淵 ありがとうございました。
目の外傷は誰にでも起こり得ます。もしそうなった時できるだけ早く当科を受診してください。
診察を希望される方へ
  • 斜視検査や立体視検査などの時間のかかる特殊検査等での時間を考慮して、出来るだけ早い時間帯での受診をお勧めします。
  • セカンドオピニオンにも対応致します。
  • 終了間際の受診は、専門的な診療が困難ですので、後日の精査になることを予めご了承ください。
  • また、初診日だけで治療方針が決まることは殆どなく、基本的に複数回の受診が必要であることも予めご了承ください。

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