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弱視、およびその治療

はじめに

弱視とは?

「弱視」とは、子供の頃に何らかの理由で物をはっきりと見ることができなかった為に、目から入った映像を認識する脳の成長が止まってしまった状態をさします。
弱視の判定をするときの視力は裸眼(眼鏡なし)視力ではなく、矯正(眼鏡を掛けた)視力を用いて行います。裸眼視力が0.1でも矯正視力が1.0あれば弱視ではありません。
幼い頃に何らかの原因で視力の成長が止まってしまうと、成人になった時、一見病気がないのに眼鏡やコンタクト、レーシックなどを行っても視力がでなくなってしまいます。

視力の成長が止まることに関してもう少し詳しく教えていただけますか?

もともと人間は生まれた直後からはっきりものが見えているわけではありません。
生まれた後に鮮明な映像を見ることによって、脳の中で映像を認識する機能が発達します。その時期を「視覚の感受性」期間と呼んでいます。
視覚の感受性は、生後1か月から上昇し始め、1歳半頃ピークに達し、その後徐々に減衰して大体8歳頃までに完成すると言われています。
身体の成長をイメージしていただければと思います。身体も成長期があり、いずれ成長が止まってしまうように視覚に関しても成長期があり、その期間に脳にきちんと鮮明な映像が送られていなかった場合、映像を認識する脳の発達ができなくなってしまいます。
ただ、身体の成長と違うところは、成長期の期間に脳に適切な刺激が伝わらない場合、機能の停止だけではなく低下してしまう可能性があります。
このように、視覚の感受性期間内では、視力は変化し得る性質を持ちます。また、最近は年齢が上がっても治療によって視力が向上する可能性があると言われています。
当院でも10代から改善したケースがありますが、改善しない事もあり、感受性期の早い時期から治療をするほうが圧倒的に有利です。

治療について

弱視治療で大切なことは早期に発見して早期に治療を開始することで、治療の基本は屈折矯正、その子にあった眼鏡をかけることです。
なぜなら、弱視の原因はそれぞれが独立しているわけではなく、複合的に起こっていることもあり、いずれの原因でも眼鏡が必要になる可能性があるからです。
ピントが合わないことを直すためには、眼鏡を掛けてピントを合わせる治療をします。眼鏡を掛けても最初はよく見えませんが、続けていくと脳が成長してきて「ぼやけた像」が「はっきりした鮮明な像」として見えるようになります。
眼鏡を掛けずに「ぼやけた像」のままでは視力は良くなりませんので、眼鏡を掛け続けることがとても大切になります。
視力に左右差がある場合は、視力の悪い方の眼の成長を促すために、視力の良い方の目に眼帯のような遮閉具(アイパッチ<下写真>)を付けて治療を行うことがあります。
また、視線がずれて片眼で見ている場合は、斜視手術による眼の位置の矯正を行うことがあります。 黒目やその奥に凝りがあり、邪魔になる場合にはその原因への手術を行います。

治療開始してからの診察の頻度はどれくらいですか?

概ね1~4か月ごとの診察になると思います。
患者様それぞれの弱視の原因や年齢、視力の改善傾向など、状況に応じて判断していきます。

弱視治療は成功することが多いのでしょうか?

弱視はそれぞれの患者様で原因が異なり、発症年齢や発見される年齢もそれぞれ異なっていますので、一概には言えません。
しかし、弱視は早期に発見され適切な治療が受けられれば、その予後は概ね良好であるといえます。
ただ、弱視治療の基本は眼鏡と話しましたが、眼鏡は基本的にはお風呂に入っている時や寝ている時を除いて掛けていただく必要があります。
私たちはその子にあった眼鏡を処方はできますが、掛けているかどうかのチェックをずっとできる訳ではありません。
お家でも眼鏡を掛け続けられるかどうかはご家族の協力が不可欠ですので、当科でもご家族にお願いしております。

1度矯正視力がでれば安心なのでしょうか?

いいえ、1度の診察で視力がでたからといって安心はできません。
前述したように、視覚の感受性期間内では視力は変化し得る性質を持つので、1度矯正視力がでたからといって、すぐに治療をやめてしまうとまた視力が下がる可能性があります。
また、このように治療をやめ視力がでなくなった症例では、再度治療を開始しても視力が上がりにくい傾向にあります。
ですので、一度視力がでたからといって、受診を中断しないよう患者様にはお願いしております。

家庭でも気を付けること、発見の手掛かりになることはありますか?

受診される方の多くは、3歳時健診で眼の位置がおかしいと指摘されて受診されます。
当科の位置する姫路市では、姫路市眼科医会が中心となって、3歳児健診での弱視児童発見に熱心に取り組んでいます。
3歳児健診での眼科検査は視力検査に加えて、機器を用いた検査では遠視、乱視の程度やその左右差、眼の位置を測定しています。
詳しくは各自治体のホームページをご覧ください。
また、最近では、3歳児健診で使用する機器を設置している小児科さんもあり、発見が早くなっている傾向があります。

成人と同じような視力検査ができるのは3歳半頃からですが、それ未満でも簡易視力検査が可能です。
また、お子様の機嫌や状態によって検査に時間がかかることもあり、何度か通院して病院の雰囲気に慣れると上手に検査できるようになる場合もあります。

眼の位置がおかしい以外にも、発見のヒントはあります。
物を異常に近づけて見ていたり、顔を傾けていたり、顎をあげていたりといったことも弱視である可能性があります。
子どもは自分が弱視であることや何かおかしいことを自覚出来たり、口にしたりすることが出来ません。
ですので、ご家族がお子様の眼に関して何か気になることがあれば当院を含め近くの眼科に受診していただければと思います。

最後に

弱視は急激に悪くなる病気ではなく、一方の目がよく見えている場合が多かったり、子供なので自分が見えてないことに気付かなかったりすることもあり、成人するまで気付かれないまま過ごしてしまうこともあります。
その大部分は適切な時期に治療を行うと視力の向上が期待できるため、早期発見・早期治療を徹底していきたいと考えています。
ツカザキ病院の小児眼科を早期に受診して頂くことにより、弱視による不利益をこうむる子どもが一人でも減ることを目指します。

診察を希望される方へ
  • 斜視検査や立体視検査などの時間のかかる特殊検査等での時間を考慮して、出来るだけ早い時間帯での受診をお勧めします。
  • セカンドオピニオンにも対応致します。
  • 終了間際の受診は、専門的な診療が困難ですので、後日の精査になることを予めご了承下さい。
  • また、初診日だけで治療方針が決まることは殆どなく、基本的に複数回の受診が必要であることも予めご了承下さい。

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