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円錐角膜について

田淵 円錐角膜という病気は、コンタクトレンズ装用患者さんの中には比較的多くおられる気がしますが、どれくらいの頻度である病気なのでしょうか。
丸山 発症率は約2000人に1人と言われています。最近では、375人に1人という報告もあり、一般的な認識よりもかなり多数の患者さんがおられると思います。
コンタクトレンズ装用者に特に多いという訳ではないと思いますが、目を擦るなどの機械的な刺激が円錐角膜の発症や進行に関与している可能性が示唆されており、この事がコンタクトレンズ装用者に多いという認識を生んでいるのかもしれません。
田淵 30歳前後で進行が停止するというのは、正しい認識でしょうか。
丸山 通常、思春期(15歳頃)に発症し、20歳代までが進行しやすい時期ですが、30歳以上の中高年でも進行する症例はあります。
田淵 病気としての、良好な経過と悪い経過の両方について大まかに教えて下さい。
自覚症状についても教えて頂ければと思います。
丸山 軽症で進行しなければ、眼科に受診して詳細な検査をしない限り、発見されない場合もあります。進行して角膜の変形が強くなると、まぶしさや光に過敏になるなど、見え方に軽い変化が起こるようになります。さらに進行すると、眼鏡やソフトコンタクトレンズでの視能矯正が不可能になり、視力の低下を自覚します。またさらに進行すると、角膜の裏側のデスメ膜という膜が破れて、眼の中で産生される房水が角膜内に入り込み、角膜が腫れて突然視力が低下する事があります。これは急性水腫といって、2.3ヶ月程度で自然に修復しますが、強い混濁の残存や不正乱視によってその後視力不良になる事もあります。若年で重症な症例ほど進行する可能性が高いこと分かっています。
  • A・前眼部写真 ( 角膜中央部の白濁した領域が病変部である)
  • B・Aの症例の前眼部OCT像(Bの図中左上青枠内の方向の断層像)(角膜の中央部の厚みが極端に薄い部分と分厚い部分にでこぼこに不整になっている状態が示されている)
[ 円錐角膜眼にハードコンタクトレンズを装着した前眼部写真 ]

黄色い染色液によって、周辺部を特別にカッティングしたカスタマイズレンズが周辺部で全周で角膜にフィットしている事と、円錐状変形の下方に黄色い涙液のたまり部分がある事が分かる。

田淵 円錐角膜であるかどうかの診断が特に重要になってきたのは、 レーザー屈折矯正手術の普及によるものが大きいですが、その理由を解説していただけますか。
丸山 LASIKに代表されるレーザー屈折矯正手術ですが、おおまかにいうと眼の表面の角膜を特殊なレーザーで削り、角膜の形状を整える事によって近視・遠視・乱視を矯正する手術です。角膜は突出した部分の角膜が薄くなるので、円錐角膜の素因がある方が手術を受ける事によってさらに円錐角膜が進行する危険性があります。実際、日本眼科学会の定めた屈折矯正手術のガイドラインには円錐角膜は疑い例もふくめて屈折矯正手術の実施は禁忌とされています。
田淵 早期の段階で円錐角膜と確実に診断するためには、どんな診断装置が必要なのでしょうか。
丸山 ある程度進行した症例では、突出部の角膜の変化やその部位の混濁や非薄化が観察できるので眼科診療で通常用いる細隙灯顕微鏡でも診断する事が出来ますが、軽度の円錐角膜は、顕微鏡で診断することは困難です。当院ではTOMEY社のSS-100(前眼部OCT), OCULUS社のPentacam(シャインプルーク原理前眼部解析装置)を使用することで、極初期の症例も診断することが可能です。
[ 正常眼と円錐角膜眼の各診断機器所見 ]

円錐角膜眼では、正常眼に比べて「尖っている」事がそれぞれ診断される。

治療について

田淵 ツカザキ病院眼科での円錐角膜治療の実際の流れについて教えて下さい。
片上 軽症の円錐角膜では眼鏡による視力補正が可能です。進行して眼鏡で矯正できない不正乱視が生じてくるとハードコンタクトレンズによる矯正となります。
ハードコンタクトレンズの処方はサンコンタクトレンズ社と協力して月に2回の専門外来を設けています。重症になる程、患者さんに合ったレンズを合わせる事が困難になりますが、じっくりと時間をかけて合わせます。
また特に若年者で進行が明らかな症例には角膜クロスリンキングを検討いたします。角膜内リングや角膜移植術の治療も症例によって検討いたします。
田淵 コンタクトレンズなどによる治療が不可能な場合、最終的には角膜移植の適応だと思いますが、 ツカザキ病院での成績はいかがでしょうか。
丸山 当院にて円錐角膜に対して角膜移植を施行した症例は、現在のところ経過は良好です。
[ 円錐角膜眼に対して全層角膜移植を施行した症例]

術前の尖った角膜構造が術後に平坦化している。視力も著名に改善している。

田淵 丸山先生はツカザキ病院眼科で円錐角膜疾患に対する診療のリーダーシップを取って頂く立場ですが、 未来像を教えて下さい。
丸山 円錐角膜は従来考えられてきた以上に患者さんが存在し、また若年で重症な症例ほど進行しやすい事が分かってきています。角膜クロスリンキングが可能になりましたので、若年の進行症例に対しては積極的に施行し、若くして、円錐角膜が原因でQOVを失う事がない様にしていきたいと考えています。また、これまで通りハードコンタクトレンズによる視能矯正に力を入れてきます。これまでハードコンタクトレンズの装用でお困りの患者さんには、ぜひ当院を受診して頂きたいと思います。
円錐角膜でお悩みの方は、どうぞご気軽に当科を受診ください

H31年4月から非常勤にて円錐角膜を担当いたします。
円錐角膜は従来考えられてきた以上に患者さんが存在します。また若年で重症な症例ほど進行しやすい事が分かってきています。若くして円錐角膜が原因で大切な視力を失う事がない様、確実に診断し、治療する事が大切です。ハードコンタクトレンズの装用でお困りの患者さんにも、ぜひ当院を受診して頂きたいと思います。よろしくお願い致します。

診察を希望される方へ

受付は朝8時から夕方5時までですが、出来るだけ早い時間帯での受診をお勧めします。
セカンドオピニオンにも対応致します。

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