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緑内障の点眼薬について

田淵 緑内障の治療としてまず点眼薬を処方しますが、どのような効果があるのか教えてもらえますか?
青木 緑内障点眼薬は、眼圧を視野障害が進まないような値まで下降させるために使います。これを目標眼圧といい、目薬の最大許容量でも視野が進行し、もしくは目標眼圧に到達しない場合は手術が必要となります。作用機序は眼の中の房水という水が作られるのを抑える、もしくは房水の流出を促すことで眼圧を下げます。
田淵 目薬といっても多種多様ですがどんなものがありますか?
青木 現在使われている主な目薬は大きく分けて6種類あります。プロスタグランジン(PG)関連薬(FP2受容体作動薬)(キサラタン®、タプロス®、トラバタンズ®、ルミガン®)、β遮断薬(チモプトール®、ミケラン®など)、炭酸脱水素酵素阻害薬(トルソプト®、エイゾプト®)、α2作動薬(アイファガン®)、ROCK阻害薬(グラナテック®)、EP2受容体作動薬(エイベリス®)です。
田淵 その6種類の目薬はどのように使い分けていますか?
青木 一般的には眼圧下降効果が最も強いとされるPG関連薬を最初に使うことが多いです。1種類の目薬で効果が不十分であれば、2種類目、3種類目と追加あるいは目薬の種類を変更して目標眼圧に届くように治療していきます。
田淵 極端な話ですが、最大で6種類を点眼することはあるのでしょうか?
青木 目薬も飲み薬と同様に効果もあれば副作用もありますので、なるべく少ない本数、少ない点眼回数で目標の眼圧に届くように目薬を選んでいきます。追加しても多くて3本ぐらいまでです。副作用の問題で使いにくい目薬がある方もいますので、そのあたりも考慮しながら目薬を選ぶことになります。
田淵 目薬にも副作用はつきものなんですね。
青木 緑内障の目薬は長期間にわたって点眼を続ける必要がありますが、どの種類も長期間点眼することで、充血したり角膜の表面が荒れてきたりすることがあります。ほかにも各点眼薬に特徴的な副作用があります。
田淵 例えば、一番効果が強いというPG関連薬に特徴的な副作用にはどんなものがあるのですか?
青木 眼の周りが黒ずんできたり、睫毛が太く長くなってきたり、瞼(まぶた)が下がってきたり(眼瞼下垂)、上瞼のあたりがくぼんできたり(上眼瞼溝深化)と眼の周りに起きる副作用が多いです。これらPG関連薬特有の眼周囲の副作用をPAP (Prostaglandin-associated periorbitopathy) といい、いちばん副作用の少ないキサラタン®では1年で約10%発症します。このPAPによる外見上の変化に注意しながら毎回診察しています1-3)。
田淵 女性の患者さんではこれらの副作用を気にされる方もいるかもしれませんね。
青木 この写真のような副作用は可逆的で点眼の中止によって改善します。ですので気になる場合は他の種類の目薬に変更できます。また同じPG関連薬でもこれらの副作用が出やすいものと出にくいものがありますので、当科でははじめから副作用が出にくい種類を選んでいます。また、点眼後に顔を洗って眼の周りについた点眼液をしっかり落とすことで副作用は出にくくなります。PG関連薬は1日1回点眼なので、朝点眼するなら洗顔前に、夜なら入浴前に点眼することが望ましいとされています1)。一般的に誤解されていることが多いですが、寝る前に点眼する必要は全くありません。
田淵 最近登場したEP2受容体作動薬(エイベリス®)はこのような副作用が少ないということですが。
青木 その通りです。エイベリス®はPG関連薬と同程度の眼圧下降効果を持ちながら、眼の周りへの副作用が出ないと言われています。白内障手術を既に受けた、あるいは近いうちに白内障手術を受ける可能性がある患者さんには使えないという制限はありますが、副作用が少ないというのは大きなメリットです。
田淵 他の目薬でも副作用はあるのですか?
青木 β遮断薬の特徴としては眼だけでなく全身への副作用に注意する必要があります。具体的には呼吸器疾患(喘息やCOPD、間質性肺炎など)や循環器疾患(心不全や徐脈性の不整脈など)がある場合は、それらの疾患を増悪させる可能性があるためβ遮断薬は使えません。
ほかにもアイファガン®やグラナテック®はアレルギー性眼瞼炎をおこす患者さんもいるので注意が必要です。アレルギーは点眼開始後数か月してから出てくることもあります。
田淵 これだけ副作用が多いと目薬を使い続けるのが嫌だと感じる方もいるのでは?
青木 そうならないように眼圧が下がっているかだけでなく、副作用が出ていないかという点にも注意して毎回診察しています。その上でそれぞれの患者さんに適した種類の点眼薬を選んでいます。
田淵 丁寧かつ根気強く診察することが大事なんですね。
最後に、青木先生から患者さんへメッセージをお願いします。
青木 緑内障は長く付き合っていかなければならない病気で、毎日の点眼が煩わしく感じる方もいるかもしれません。また今回お話ししたような副作用のために目薬を使いたくないという方もいるでしょう。しかし、緑内障で一度欠けてしまった視野は元に戻せません。しかも末期まで進行してしまうと失明しうる病気ですので、定期的な視野検査と治療を継続することが非常に重要です。緑内障治療のことで不安や疑問が少しでもなくせるようにサポートしていきますので、一緒にがんばっていきましょう。
  1. 中倉俊祐. 緑内障セミナー プロスタグランジン系点眼薬の副作用総括(解説)あたらしい眼科. 33巻9号 Page1309-1310 (2016.09)
  2. 中倉俊祐. 緑内障セミナー PAP (Prostaglandin Associated Periorbitopathy) について(解説)あたらしい眼科. 33巻10号 Page1457-1458 (2016.10)
  3. Nakakura S et al. Prostaglandin-associated periorbitopathy in latanoprost users. Clin Ophthalmol. 2014 Dec 30;9:51-6. doi: 10.2147/OPTH. S75651. eCollection 2015.
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