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黄斑円孔について

はじめに

どんな病気?

ものを見るために一番大事な網膜の中心部(黄斑部)に穴があいてしまう病気です。
穴があいてしまうのは目の中のゼリー状の成分(硝子体)の牽引が原因と言われています。

症状は?

進行した場合は極端に視力が下がりますが、自覚症状のないこともあります。 一概に中心が見えなくなるという重大な症状ではなく、色の違いが分からなくなったり、すこし見にくいといった場合もあります。 当院ではOCT(黄斑部の詳細を調べる眼底写真)を用いて検査をしています。

網膜の中心部は、ちょうど盆地のような形状になっています。この中心部の網膜は非常に薄くなっており、硝子体の牽引が加わると構造的には孔が開きやすい弱い箇所と言えます。

治療・当科では

治療方法は硝子体手術(年齢により白内障同時手術)を行います。スモールゲージシステムという切開創の小さい手術方法が登場してきたため、手術時間は年々短縮しています。
ただ、術後に円孔が閉鎖しているためには、膨張性の気体を眼内に注入する必要があります。術後最低3日間は、うつ伏せ姿勢が必要です。

本日は、当科で教育担当として、
黄斑円孔に対する外科治療を積極的に行っている
野口先生にお話を伺います。
田淵 早速ですが、黄斑円孔は僕が手術を習い始めた頃、そうですねだいたい10年から15年ぐらい前には完全に大げさな病気という印象でしたが、今はそうでもないですか?
野口 そうですね。黄斑円孔という病気には硝子体手術という手術が必要となります。 この硝子体手術は眼科領域でも最も劇的な進化を遂げてきている手術であるといっても過言ではありません。黄斑というカメラのフィルムの役割をしている神経の処理は10年前は聖域とされ、手術などでは処理することが非常に困難とされていた領域です。それが、手術の進化により、より小さなキズで、負担も少なく、手術時間も短く、術後成績も向上しております。現在では日常的に行われ、視力が回復する手術として認識されています。
田淵 どんな症状があるんでしょうか?
野口 視野の真ん中が、中心に向かってひしゃげさせたようにゆがんでみえたり、真ん中が黒く視野がかけるような症状が出て、視力が低下します。
田淵 これは不躾な質問で申し訳ないんですが、治るんでしょうか?
野口 原因として神経に穴が空くので上記のような症状になるのですが、手術によってほとんどの症例で穴の閉鎖を得られることができます。
ですので高率に改善が見込まれます。完全に視力が治るとは断言できませんが、視力が改善する可能性が高いです。
田淵 なるほど、手術適応があれば、治癒の可能性が高い疾患なんですね。
診断がついた患者さんは心配である事は間違いないでしょうが、落ち着いて眼科専門医の説明を聞いてもらって、必要以上に不安になる必要はなさそうですね。
田淵 手術適応があっても、手術しないという選択を行ったらどういう予後が待っているのでしょうか。
野口 黄斑円孔は自然閉鎖することは非常にまれです。また、症状が出現してから手術するまでが早ければ早いほどよりよい視力を維持できるといわれています。逆をいえば放っておけばおくほど手術が遅れ、視力の改善度合いが悪くなるということです。
手術をしなければ視力は改善する見込みは低いと思われます。
[当科で手術加療し治癒した黄斑円孔の2症例]

手術前には、底まで抜けて孔状になっている網膜の中心部(黄斑部)の構造(青矢印)が、手術後には、孔が綺麗になくなって、
ほぼ正常の網膜構造の形態を取り戻している(緑矢印)。

田淵 となると、硝子体手術専門医が手術を勧めている場合は普通は手術を受けて下さいという事ですね。
どんな手術操作を行うんでしょうか?
野口 先ほど出てきました硝子体手術という手術を行います。眼だけの麻酔である局所麻酔で行います。
黄斑という神経の膜から、神経の細胞膜の一部である内境界膜という膜を剥いてあげ、一時的に眼球内にガスを充填させ、うつぶせでいることによって穴が閉じるというものです。
田淵 手術操作として行う手技としての術式自体は今も導入時代もあんまり変わってないと。
野口 理論はほぼ同じであると思います。
田淵 でも、相当に「普通の」病気になりましたよね。という事は、やはり手術装置自体の開発の恩恵が大きいんでしょうか?
野口 かなり大きいと思います。
器械がより小さく機能的に優秀になり、眼に作るキズも非常に小さくなりました。
それに伴って、手術がより安全に短時間で行えるようになりました。 また、手術装置のみでなく、外来などで行える検査機器も進歩してきております。
OCTという装置を用いると眼球一定の部位をあたかも眼球を切り出してスライスしたような映像を1秒ほどで簡便に撮影することができます。
しかも、細胞レベルに近い状態のスライス像です。全身でいえば、MRIやCTのイメージに近いでしょうか。
ただ、被曝などもなく検査を受けるストレスが非常に低いです。
田淵 なるほど、手術装置に加えて、診断装置の進歩で正確な解剖学的状況が把握できるようになったというのも大きいんですね。
つくづくOCTは意味があるというか。当科も全力で最新の機種を準備していますが、今後もOCTは更新し続けなければなりませんね。大変ですけど。
田淵 さて、この手術を患者さんに説明する時に大変重要なのは術後の下向き姿勢の維持ですよね。
野口 そうですね。眼の中に手術終了時にガスを入れることで眼内はガスで充満します。
その状態でうつぶせ(地面を見る方向で眼の位置を固定する)することで、ガスは天井方向に上がろうという力が働き、これが黄斑を伸ばして穴が閉じるというわけです。
ガスは自然に吸収され眼内は水で置き換えられます。また、注入するガスにも数種類あり、空気であったり、窒素ガスであったり、SF6ガスというガスがあったりします。
また、早期の黄斑円孔であれば、ガスを注入せずに手術を終了しても穴が閉鎖することもあります。
田淵 なるほど、術中にタンポナーゼ目的で使用するものがガスなのか空気なのかという事で違いもあるんですね。
野口 それぞれで眼の中に残る期間が異なりますが、理論は同じです。空気や窒素ガスは抜けるのが早いですが、SF6ガスは眼内に残る期間が長いです。最長でも2週間くらいかと思われます。
田淵 下向き姿勢の日数もいろいろな臨床研究の結果から、相当に安心して短縮できる事が分かってきましたよね。
ツカザキ病院眼科での下向き姿勢を解除する時の判断方針を教えて下さい。
野口 現在、眼内がガスであっても先述のOCTの撮影が可能となっております。
OCTにて穴が閉じているようであり、眼圧など経過良好であれば、うつぶせを解除しても問題ないという判断にしております。
田淵 この手術は入院で行いますか?
野口 日帰り手術も可能ではありますが、眼内にガスが入るため眼圧が上昇する可能性がありますので短期入院にて行っております。
田淵 よく似た名前と言うか、患者さんにはおそらく全く区別がつかない病気に「黄斑円孔網膜剥離」がありますよね。
(注・強度近視眼底疾患のページもご参照ください。)
野口 同じような名前の病気ですが、原因が違います。黄斑円孔の多くは特発性といわれ、原因が不明です。しかし先述の通り、硝子体手術療法が著効します。また、特発性黄斑円孔は網膜剥離にはなりにくいです。
しかし、強度近視が原因の黄斑円孔は硝子体手術でも改善率が低く、さらに網膜剥離を合併することがあります。
田淵 なるほど、強度近視に伴ってできる黄斑円孔はまず第一に難治性なんですね。 同じ病気だと考えるとマズイですね。ツカザキ病院硝子体チームのDrは皆さんこの手術は行ってますね。
野口 同じような名前の病気ですが、原因が違います。黄斑円孔の多くは特発性といわれ、原因が不明です。しかし先述の通り、硝子体手術療法が著効します。また、特発性黄斑円孔は網膜剥離にはなりにくいです。
しかし、強度近視が原因の黄斑円孔は硝子体手術でも改善率が低く、さらに網膜剥離を合併することがあります。
田淵 なるほど、強度近視に伴ってできる黄斑円孔はまず第一に難治性なんですね。
同じ病気だと考えるとマズイですね。ツカザキ病院硝子体チームのDrは皆さんこの手術は行ってますね。
野口 当院では姫路を中心とした広範囲の地域から手術依頼の紹介をいただいております。もちろん黄斑円孔もしかりで、ほぼ毎日の様に手術を行わせていただいております。
田淵 先生が現在取り組まれている新しい臨床研究について教えて下さい。
野口 現在のところ、外科手術治療に関するテーマについて疾患領域に関わらず調べてみたい事がたくさんあります。
具体的に言うと、多焦点眼内レンズの視機能研究、白内障手術、硝子体手術でのバイオメトリー変化研究。眼内レンズの精度研究。
角膜混濁合併白内障症例における視機能評価研究、極小切開白内障や硝子体手術の手術手技の臨床研究などです。視能訓練士さん達と一緒に一つずつ結果を出していければと思っています。
田淵 ありがとうございました。
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