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緑内障ロングチューブシャント手術について

緑内障ロングチューブシャント手術について

田淵 本日は青木先生に、緑内障チューブシャント手術についてお話をしてもらいます。
青木 近年、緑内障分野では、MIGS(minimally invasive glaucoma surgery)が流行となっており、当院でも多数施行致しております。 これらは角膜切開のみでシュレム管の内壁にアプローチする方法が主体であり、流出路再建術に当たります。 実際には、これが適応ではない、あるいは効果不十分な症例も少なくはなく、その際には、従来の濾過手術、本編でお話させていただくチューブシャント手術が選択されます。 とりわけ後者は、複数回の濾過手術によっても眼圧下降が得られない、いわゆる難治緑内障に有効です。
田淵 なるほど。初回手術時に症例によってはMIGSを選択されていますが、難治症例ではロングチューブ手術の出番ということですね。
青木 チューブシャント手術に用いられるインプラントには、バルベルト緑内障インプラント、アーメド緑内障バルブがあります。 シリコーン製のチューブとプレートで構成されており、眼内に挿入したチューブを通して眼外に水を流出させることで眼圧を下げる仕組みとなっています。

a.バルベルト緑内障インプラント(Baerveldt®Glaucoma Implant)(エイエムオー・ジャパン社)

バルベルト緑内障インプラント 添付文書より転載

b.アーメド緑内障バルブ(AhmedTM Glaucoma Valve)(New World Medical 社)

http://jfcsp.co.jp/catalog/other/ahmed-g-valve_1709.pdf
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/340375/340375_22600BZX00170000_A_01_06.pdfより転載

バルベルトの成績

難治性緑内障や小児例を対象とした成績は,成人の原発開放隅角緑内障よりやや劣るものの眼圧コントロールの成功率(※眼圧21mmHg以下、眼圧30%の下降、等、研究により異なる)が、70〜90%と良好であったと報告されています。2009年のTVT(Tube vs Trabeculectomy)studyでは、多施設無作為化臨床研究による線維柱帯切除術との比較結果が発表され、術後3年の時点におけるバルベルト緑内障インプラントによる眼圧コントロール成績(85%)は、線維柱帯切除術のそれ(69%)を上回り、また術後合併症の発生率も、線維柱帯切除術の60%に対し39%と有意に少ないものでした。また、2011年のABC(Ahmed Baerveldt Comparison)Studyでは、後述するアーメド緑内障バルブとの多施設無作為化臨床研究において、1年後の成績で86%と、アーメド緑内障バルブの84%に比べて有意差はないものの、やや良好な成績を示しています。

アーメドの成績

いわゆる難治緑内障に対する治療成績では、眼圧コントロールの成功率(※眼圧5〜21mmHg、または、術前22mmHg未満のものは20%以上の下降、等)は、 1年で76〜87%、2年で68〜82%、4年で76% 程度と報告されています。また、小児の難治性緑内障に対しても1年で85%、2年で 63%の成功率という報告があります。バルベルト緑内障インプラントとの比較試験(先述のABC Study)では、術後合併症はアーメド緑内障バルブの方が有意に少ないものの、術後1年での平均眼圧は、バルベルト緑内障インプラントの13.2mmHgに比べ、アーメド緑内障バルブが15.4mmHgと、2.2mmHg高い結果となっています。

合併症

チューブに関連した合併症として、術後の閉塞、露出、房水漏出、術後感染等があります。また、眼圧が安定するまでの期間は、術後低眼圧、術後高眼圧に注意が必要です。低眼圧となった場合には、脈絡膜剝離(漿液性、出血性)、低眼圧黄斑症等の発生のリスクがあるため、定期的な眼底検査を行います。またこの期間は、駆逐性出血の予防のため、力まないようにしてもらうことも大切です。眼圧が安定した後も、被囊濾過胞(encapsulation)、チューブ閉塞、プレート周囲の瘢痕形成による眼圧上昇が起こる場合があります。特に前房内に留置した場合には、角膜の内皮減少、機能不全の発症する可能性もあり、こちらも定期的な検査が必要となります。当院からもバルベルトの合併症とその対策について報告をしておりますが(Tanabe H, et.al. Medicine)、特にバルベルトにおいては、眼球運動制限に伴う複視、斜視等の発生にも注意を払います。

田淵 基本的にチューブシャント手術はほかの緑内障手術で効果が出づらい難治症例に対して行うものである反面、合併症にも注意が必要であるということですね。
最後に青木先生の今後の展望をお聞かせください。
青木 緑内障で悩む患者様の負担を軽減出来るように、鋭意精進してまいります。
田淵 ありがとうございました。

<参考文献>
Hirotaka Tanabe, M.D, Ph.D., Shunsuke Nakakura, M.D, Ph.D., et.al.
Plate Size Reduction Surgery for the Baerveldt 350-mm2 Glaucoma Implant for Postoperative Motor Disturbance: A Case Report.
Medicine 2019

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