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緑内障について

緑内障について

緑内障って、どんな病気?

眼が受け取った光の信号を脳へ伝える網膜神経線維が障害を受け、 視野の範囲が狭くなる病気です。

どんな人が緑内障になりやすいの?

特に近視家族歴のある人、眼圧が高い人、40歳以上の100人に5人は緑内障であると報告されています。

症状は?

開放隅角緑内障では、かなり進行するまで自覚症状がありません。急性閉塞隅角緑内障では、急速な眼圧上昇に伴い、痛みや霞目、視力低下が生じます。

原因は?

眼圧がその人の網膜神経線維の強さに対して相対的に高い場合、圧力に耐え切れず長期にわたってゆっくり網膜神経線維が障害されていきます。
また網膜の非常に細い血管の循環が低下していることも一要因だと言われています。

種類は?

主に、2種類の緑内障があります。眼の中の水分の出口である隅角と呼ばれる組織の流出路が狭くなって、急激な眼圧上昇(緑内障発作)をきたす可能性がある閉塞隅角緑内障と、隅角は広いのに視野が障害される開放隅角緑内障です。
その他にも、ぶどう膜炎と呼ばれる眼に炎症が発生することで眼圧が上昇する続発性緑内障や、主に糖尿病網膜症や網膜静脈分枝閉塞症(網膜の細い血管が高血圧や動脈硬化の影響でつまってしまう病気です。)に伴う新生血管によって急激な眼圧上昇をきたす新生血管緑内障があります。

房水の流出経路

眼内の水の流れ

房開放隅角緑内障

隅角の奥線維柱帯で水がつまる

閉塞隅角緑内障

隅角の手前(虹彩縁)と隅角で水がつまる。

治療法は?

今のところ、一度障害された網膜神経線維を回復できる治療方法はありません。ただ、眼圧を下げることで、視野の障害のスピードを遅らせることが可能です。その方法に、点眼剤、内服治療、手術治療があり、それらを効果的に組み合わせる必要があります。

どうすれば、緑内障であるかどうかわかるの?

眼科専門医の検査が必ず必要です。
さらに当科では、精密な視野検査、眼圧検査、隅角検査、網膜断層解析検査(OCT)を行います。

緑内障は、眼科専門医が長期にわたって丁寧な治療を行えば、ほとんどの患者様の視野の進行を抑制することが可能である病気であると言われています。
当科では、長い将来にわたる緑内障管理を完全に行えることを念頭においております。
そのために、精密な眼圧測定や定期的な視野検査などを行い、OCTなどできる限りの最新の装置を用いて患者様の視神経乳頭、網膜神経線維の現状を精密に把握、電子管理して将来に備えることに努めております。

緑内障について

田淵 緑内障になると一体どんな症状が生じるんでしょうか?
中倉 一部の急激に眼圧上昇を伴うタイプでない限り、かなり進行した状態にならないと、自覚症状はありません。 1/4以上視野が欠けてくると一部が白けて運転中みにくいなどの症状がゆっくり出はじめます。 進行すると、上方の視野欠損なら信号の見落とし、下方の視野欠損なら読書中の文字の飛ばしなどが現れはじめます。 自分で判定するには、片目をつぶって鼻側にスリガラスのようなものが見えたら注意が必要です。
田淵 眼圧が高い=緑内障なんでしょうか?
中倉 これは難しい質問です。正常眼圧は一般的には10~20mmHgと言われています。日本人は正常眼圧緑内障が80%を占めるため、 現在の眼圧(大概は診察時の眼圧が15~19mmHg)が、ご本人にとって高いと患者さんには説明しています。 一部の落屑緑内障や閉塞隅角緑内障、ぶどう膜炎による続発緑内障などでは30mmHgを超える高い眼圧になることもあります。 一般的な開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障含む)では眼圧だけで診断はできません。
田淵 眼圧と緑内障の症状との関係を教えて下さい
中倉 急激に40mmHg程度まで上昇すると、さすがに霧視や眼痛、充血を訴えるようになります。 ただ高齢者に多く、最近増えてきた落屑緑内障の方はゆっくりと50mmHg以上まで上がることもあり、無症状で来院されることもあります。
田淵 一般に緑内障発作と呼ばれる状態では、いったいどんな症状が生じ、治療しないとどんな後遺症が残るんでしょうか?
中倉 一般的な緑内障発作は急性閉塞隅角緑内障と呼ばれるもので、急激な50mmHgを超えるような眼圧上昇とそれに伴う眼痛、充血、霧視、吐き気、頭痛で、間違って脳外科や内科に行かれる患者さんもおられます。 多くは最初は片眼性ですから、触診で眼球を触ればゴルフボールのように硬いのでわかります。
できれば48時間以内に発作を解除し眼圧を下降させないと、瞳孔不同によるまぶしさ、視野欠損、視野が正常でも見え方の質が下がる方が多いです。
当院ではレーザー虹彩切開はせずに通常の白内障手術を施行します。
この手術で水晶体を取り除くことで眼圧を下げることができるからです。 レーザー虹彩切開では根本的な解決にはならず、角膜の状態が悪ければ二期的に白内障手術を行うこともあります。(詳細は後述)

まずは診断

田淵 一口に緑内障と言っても、いくつか種類があるという事でしょうか?
中倉 大まかにいいますと、開放隅角か閉塞隅角かですが、さらに開放隅角にも様々なタイプがあります。
田淵 ちょっと分かりにくい分類ですね。自分でどちらのタイプの緑内障であるかについて分かる方法はあるんでしょうか?
近視の方に多いとか、遠視の方は危ないかもという大ざっぱな話を聞いた事はあるんですが。
中倉 一般的には開放隅角緑内障は近視の方に多く年齢とともに発症頻度は増加します。家族歴+近視の方で20代から発症しているケースも最近は見かけます。閉塞隅角緑内障は遠視気味で、かつ水晶体が膨化し始める中年の女性に多い病気です。
もともと裸眼視力のいい方に生じやすい病気です。
後は高齢者に圧倒的に多く、現代病といえる落屑緑内障、ぶどう膜炎に伴う続発緑内障、発達緑内障でしょうか。
田淵 なるほど。いずれにせよ、眼科医によるきちんとした診断が必要だという事ですね。
中倉 視野検査、OCT、隅角検査、点眼薬の副作用などに詳しい医師にかかることをお勧めします。
田淵 ちなみに、40歳以上の日本人は5%が緑内障であるという疫学研究がありましたが、本当なんでしょうか?
中倉 多治見スタディの結果に基づくデータですが、あれから年に10%ずつ高齢者は増えているので、大勢の患者さんがいると思います。
田淵 1億2千万人の5%というと、約600万人という事になりますね。大変な数ですが、実際に病院にかかっておられる方はそのうちどれくらいだと感じておられますか?
中倉 一説では10%ですが、すぐ病院のある都会と、ない田舎ではかなりの差があるのではないかと思います。 一度診断された後にも、継続的な通院で眼圧と視野をチェックしなければ意味がありません。 あとは寿命の延長に伴い、治療期間の延長、手術回数の増加が昨今の問題です。簡潔にいいますと生涯通院が必要です。

検査

田淵 実際に緑内障と診断するために必要な検査はあるのでしょうか?
中倉 まず眼圧検査、隅角検査、さらに眼底検査で、特徴的な緑内障所見を認めれば視野検査や三次元光干渉断層撮影装置(OCT)などでも判断します。
中には先天性の上方乳頭低形成などもあるため、精査する必要があります。
田淵 視野の進行は1回だけではなかなか判断できないとも言われていますが、それはどうしてでしょうか?
中倉 特に静的視野検査には患者さんの慣れが必要です。
また、視野の進行の判定には最低6回~8回の検査が必要ですから、2~3年は同じところに通院しないと判定できません。
一般的にはMDslope(進行具合を示す傾き)で判断します。
MDslopeが-1.0 dB/年では進行は速いですし、-0.5dBではやや速い、-0.3dB/年以下ならまあ緩やかと判断できますが、後は患者さんの初診時の視野と年齢と眼圧のバランスです。
田淵 なるほど。いずれにせよ、眼科医によるきちんとした診断が必要だという事ですね。
中倉 視野検査、OCT、隅角検査、点眼薬の副作用などに詳しい医師にかかることをお勧めします。
田淵 ちなみに、40歳以上の日本人は5%が緑内障であるという疫学研究がありましたが、本当なんでしょうか?
中倉 多治見スタディの結果に基づくデータですが、あれから年に10%ずつ高齢者は増えているので、大勢の患者さんがいると思います。
田淵 1億2千万人の5%というと、約600万人という事になりますね。大変な数ですが、実際に病院にかかっておられる方はそのうちどれくらいだと感じておられますか?
中倉 一説では10%ですが、すぐ病院のある都会と、ない田舎ではかなりの差があるのではないかと思います。 一度診断された後にも、継続的な通院で眼圧と視野をチェックしなければ意味がありません。 あとは寿命の延長に伴い、治療期間の延長、手術回数の増加が昨今の問題です。簡潔にいいますと生涯通院が必要です。

治療について

田淵 緑内障の治療は、治すというよりは、進行を遅らせるものだと聞いていますが、それはどういう事でしょうか?
中倉 一度欠けてしまった視野は戻りませんが、眼圧を下げることによって視野の進行速度を遅らせることができます。 これまでの経験上、進行しにくい眼圧はやはり12mmHg以下です。感覚的には15mmHgでは半数が、18mmHg以上なら間違いなくハイリスクで進行します。
緑内障の治療目的は、生涯にわたってその患者さんの不自由のない視野を残すことです。
誤解を招くかも知れませんが、多少欠けていてもご本人が不自由なく暮らせれば、それでいいのです。
田淵 眼圧には日内変動や、日間変動、さらには姿勢や季節変動まで、大変に複雑な変動要素があるため、 診察の間隔が長期に渡って空いてしまうと眼圧の値が実際はどの程度なのか分からなくなって、 眼圧がきちんと目的の値にコントロールされているか判断が難しくなると考えられます。
中倉先生は、どれぐらいの診察間隔が適当だとお考えですか?
中倉 濾過手術術後は比較的頻回に診察しますが、進行速度をある程度把握できており眼圧も安定している方は3ヶ月に一度が適当だと思います。
また、視野検査は6ヶ月に一度しています。視野欠損がでる前の段階の人や高眼圧症のみの方はもう少し間隔をあけてもいいと思います。
田淵 緑内障点眼剤が効きにくくなると聞いたことがありますが。
中倉 薬への耐性がある場合や、病気自体が原因の場合にあります。
また、点眼剤に含まれる防腐剤が悪さをしてしまうこともあります。大事なことは通院していないとそれが判断できないということです。
また昨今は、眼瞼炎などのアレルギーが多い点眼薬も増えてきています。これは医師側がまず気づかなければいけません。
田淵 緑内障点眼剤で治療効果がなかった場合には、飲み薬、レーザー治療、そして手術という3つの追加療法がありますが、それぞれについて大まかに説明して下さい。
中倉 炭酸脱水酵素阻害薬は体調を崩しますので数週間が限界です。SLTというレーザー治療も私の経験では1/3しか効きません。
確実なのは手術ですが、主に濾過手術、流出路再建術、インプラントの3種類があります。 それぞれメリット・デメリットがありますので患者さんによって使い分けしています。
流出路手術も最近はMIGSと呼ばれる低侵襲手術が流行っていますが、低い眼圧にはなかなかなりません。

手術療法

田淵 なるほど、それぞれに一長一短があるのですね。
飲み薬が一時しのぎで、レーザー治療は効果を得る確率が低いとなると、やはり手術療法が点眼治療の次に控える事になるわけですね。
手術療法には主に3種類あるとお聞きしていますが。また選択の基準になる事があれば教えて下さい。
中倉
  • 濾過手術は主にトラベクレクトミーや、ステンレスでできたEXPRESSを入れます。結膜下に前房内からバイパス通路を作成し、房水を結膜下に流す手術です。病型を選ばず、奏功すれば12mmHg以下の低い眼圧を得られますが、たまに視力低下、眼瞼下垂20%、暫く続く充血や晩期感染症などのデメリットもあります。
    しかしながら、純粋に眼圧による視野の進行を止めるには濾過手術しかありません。
    点眼薬から開放されるのがメリットです
  • 流出路再建術は、トラベクロトミーと呼ばれる眼外から線維柱帯を切開する手術がこれまで主流でした。近年は5-0ナイロンやフックを利用した眼内から線維柱帯を切開する手術もあります。リカバリーも早く、私はほぼ日帰りで施行しています。
    デメリットは前房出血による霧視ですが自然に治ります。著効すると13mmHgになりますが、概ね1年後には15-18mmHgになります。したがって、目標眼圧の達成には点眼薬の追加が前提です。
  • インプラント手術は多重手術で改善を得られなかった患者さんへの救いの一手ですが、血管新生緑内障、ICE症候群や一部の先天性緑内障では初回から行います。時間が一番長い手術です。

図1 緑内障手術(トラベクロトミー)術中写真

下方からトラベクロトミーを施行しています。
日帰りで約20分です。

図2

術後の前房出血は必発ですが、若い人ほど早く消退します。

田淵 それぞれの手術療法を患者さんの状況に合わせて選択していくわけですね。
手術療法のメリットはどんな事なんでしょうか?
中倉 点眼薬を減らせること、患者さんのアドヒアランスを取り除けることです。
また薬剤性角膜障害が減り、眼周囲の副作用もなくなります。

緑内障発作

田淵 緑内障発作という救急疾患もありますが、当院では白内障手術が治療法になりますよね。
緑内障に対して白内障治療というと不思議に感じますが、説明して頂けますか。
中倉 一般的には「緑内障発作」は緑内障ではありません。水晶体の膨張によって急激な眼圧上昇が起きている状態を「緑内障発作」と慣用的に呼んでいるだけです。
純粋な急性閉塞隅角緑内障であれば、水晶体をとれば隅角は開大し眼圧は下降します。

図3a 前眼部OCTによる前房構造所見 緑内障発作時(3a,3bは同一患者さんの同一眼)

隅角は閉塞している。(黄色の点線円)緑内障発作の主たる原因は水晶体の膨化である。

図3b 前眼部OCTによる前房構造所見 治療後(3a,3bは同一患者さんの同一眼)

隅角は開大している。(黄色の点線円)3aの同部位との比較が分かりやすい。角膜と虹彩の間の角度が明らかに広がっている。(当院では水泡性角膜症の原因となるレーザー虹彩切開(LI)は施行しません。LIをしても水晶体を取らないと完治せず2度手間になるからです。)

田淵 なるほど、「緑内障発作」は水晶体の異常によって起きるものと考えられるんですね。その異常な水晶体を取り除くことになるので、それはすなわち白内障手術だという事ですね。
中倉 そのとおりです。「緑内障発作」は緑内障でもないし、白内障でもないわけです。
ただ異常な水晶体を摘出して、眼内レンズに入れ替える必要がある訳ですから、「白内障手術」が必要だという事です。
ちなみに、緑内障発作によって生じた眼圧上昇を1週間も放置すると、非常に高い確率で視野に恒久性の障害が生じますので、手術治療は緊急性があります。
田淵 これは、場合によっては眼圧上昇による眼痛で救急車を呼んでもおかしくないほどのひどい自覚症状を引き起こしますから、皆さん手術は納得されて受けておられますね。
中倉 熟練した医師であればたいていの手術はうまくいきますが、白内障手術の中でも難しい技術を要求されます。
できれば軽く前房が狭い時期から定期的に隅角検査を施行し、進行してきたら楽な白内障手術で完治させる事が一番です。 なぜなら閉塞隅角緑内障は唯一未然に防げる緑内障だからです。術後は受診の必要がなくなりますので、患者さんには喜ばれます。
これまで通院中の方で急性閉塞隅角緑内障を起こした例はありません。
田淵 では、先生が最も興味を持って取り組んでおられる臨床上のテーマを教えて下さい。
中倉 いつも患者さんや同業者の役に立つ新しいことを発信したいです。当院に来て10年になりますが、英文論文は70本以上、和文/総説論文は20本以上発信できました。 現在は、薬物の効果/副作用、眼圧計(リバウンドトノメーター)、緑内障手術などをメインに研究しています。
明日からの診療に役に立つ研究がモットーです。
田淵 最後に、ツカザキ病院眼科の緑内障治療の責任者としての未来像を教えて下さい。
中倉 現在、緑内障チームは医師4名と視能訓練士8名で構成しております。 研究においても他病院の医師との連携を多数行うことで、良いフィードバックが得られます。 最終的には彼らの協力なくしてはベストな治療を患者さんに提供できません。 従って若手医師、視能訓練士ならびに患者さんへの教育が大切だと考えています。 その上で難治緑内障に喜んでみなで対応できる、これが理想ですね。 難症例ウェルカムです。10年緑内障手術をしてわかったことは、「1つの手術は1000件するまで素人!」です。
修行なき医師に未来なし。

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