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1日25時間働く循環器内科部長BLOG
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2020.06.08

言葉の力

 今日は最初に長文多謝です。

 こんばんは。皆さん、お元気でしょうか?今日も暑かったですね。6月と言えば衣替えです。背広も冬から夏へ変わりますが、そのシーズン初めてズボンに足を通す瞬間、ズボンの前をとめる瞬間は正に緊張の一瞬です。もし厳しくなっていたり、前が閉まらなくなっていたとすると、私が成長した証拠で非常に悲しくなる瞬間です。

 そろそろその恐るべきテストを受験しなくてはなりません。だってもし、もしですよ、学会や講演会の日にズボンが入らないことが発覚したら、これは極めてヤバい状況です。前が閉まらない状態で発表してもプレゼンが締まるわけないですし、もし人前で「ビリッ」という音がしたら万事休すです。
 最近は、Zoom などのWeb会議などもありますが、時々自宅故の安心感で、ズボンをはかずに参加してふと立ち上がったときに見つかる、なんて事故も世界中で起こっているようです。
 そう言いながら暑さに負けてアイスクリーム食べているようではダメですね。でも、アイス美味しいですよね。コンビニのアイス売り場は危険です!

 先日、悲しい話がありました。あるプロレスラーの女性の話です。詳細は十分すぎるぐらいに報道されていますので割愛しますが、誹謗中傷で心が壊れてしまったのでしょうか。自ら世を去ったとのこと。
 テレビなどメディアにも出ている故に、本当の自分とは異なった一面を役割上見せないといけなかったんじゃないかな、と思います。最後のインスタグラム(?) の写真とコメントが報道されていましたが、御自身のことより他人、ペットへの気遣いを最後までされていて、とても優しい方かな、と思うようなお顔でもありました。
 プロレスには興味なく、芸能界にも詳しくないので初めてお目にかかった方ですが、そのような状況でも自分の事より他人の事を気遣える人、とても優しくて強くないとなかなかできませんよ。

 彼女はスポーツ選手・芸能人でもあったわけですが、他の仕事でも役割上、プライベートの自分とは別の人格を期待され、用意しないといけない場合もあります。実は医師もそういう一面がある商売と思っています。

 医者歴20年にもなりますと、ちょっとふてぶてしくなって on, off の切り替えはある程度はできますが、心が疲れてくるとリラックスできないこともあります。そんな時は、カテをしていてもいつもの如く燃えない (プロとしての仕事はします。誤解無きよう)、ピアノを弾いても楽しくないですし、本を読んでいても心が乗らない、そうなると傷が癒える時まで膝を抱えてすみっこで待つしかないんですよね。
 ただ所詮、畑の真ん中にある病院の一循環器内科医ですからその程度ですが、彼女の場合は有名人ですからある種公人ですよね。更に最近では Facebook、インスタグラム で不特定多数の方と双方向性のコミュニケーションを取ることができるので大変なことになります。

 人間とは弱い物でどんな人でも覆面をすれば、いつもであれば言えない様な他人を傷つけたり、無責任な批判をしたりすることができるようです。ただ不思議ですよね、その方も対面しているとそのような事は発言されないことが多い。匿名は理性を取り去って、残酷さ、無責任など人間の性を引き出してしまうものなのでしょう。

 投稿はパソコンの画面を見ながら一方向で自分の感情の赴くままに書くことができます。怒りが怒りを呼んで、心の中で感情だけが暴走して心ない言葉ができてしまうのでしょうか。
反対に面と向かっていると相手の表情が見えるからこそ、相手の感情を感じて双方向性に意思疎通ができるから、「言い過ぎた」とか「相手の言い分もある」と相手の気持ちを斟酌することができます。

 その上、今回は不特定多数の方が一人に集中してそのような言葉を投げつけると、イジメ、集団私刑(リンチ)になってしまいます。批判する1人1人は自分一人ですが、される方にとっては多数です。先程の私の「楽しくない」状況は心が疲れている状態ですが、人間の心にはレジリエンス(復元力)があります。嫌なこともちょっと脇に置いて日常を繰り返している間に何かをきっかけに復活する糸口が出てきます。

ただ心ない言葉に囲まれてある一定以上のダメージになると、自分だけでは回復できなかったりします。しかも匿名で正体不明ですから恐怖感はおそらく大きくなっていきます。
彼女の場合はその状況だったのでしょうか。強く見える人ほど助けを求めるのが難しかったりします。多分、自分で「強くいなきゃ!」って思ってしまって自分を縛ってしまうのかもしれません。彼女だけではなく、私の近くにも居りますよ。役割に縛られて苦しんでいる人。

 10年前まではFacebookやインスタは無かった。学生時代は電話や手紙だし、大人になってもメールです。メールは時間差がありますが、いずれも双方向性のコミュニケーションです。
 コミュニケーションで言葉はどれぐらいを占めているか御存知ですか?本にも依りますがたった30%程度だそうです。残り70%は口調・態度・表情・雰囲気など非言語的アプローチだそうです。Facebook、インスタは「字面」という言葉だけの一方向性のコミュニケーションツールです。コロナ禍をきっかけにネットでのコミュニケーションが多くなるように思います。
 これまで以上に言葉の扱いには気をつけないといけないかもしれません。インターネットは公共の場です。匿名でも自分の発言がどのように他人に受け止められるか、独りで発言するからこそ、客観的に冷静に吟味してから発言して欲しいですね。心はガラス細工です。壊れてから壊した人が破片をかき集めてオロオロしても元に戻らないのです。覆水盆に返らず、正にこのこと。

 人間は人と人の間の生物だから人間、と聞いたことがあります。人とパソコンやスマホで意思疎通していたらそりゃ人間らしさが失われることもあるかもしれません。

 実は講演会も会場での対面型からコロナのせいで Web 講演になりつつあります。以前からWeb 講演はしていましたが、実はWebの方が苦手です。だって聞いて下さっている方の反応が見えません。私を受け入れてくれているのか、面白くないのか、会場でお話ししていると皆さんの顔や場の空気を読むことができます。そこで自分のプレゼンテーションを修正して皆さんが求めるお話ができるように努力しているつもりです。

 でも、Webでは相手のお顔を見れないので難しいですね。その時は放送会場にいる方の表情を見て話しています。Zoomでも多人数になるとみなさんの表情を1画面では読めないし、直接会った方が雰囲気などが分かりますよ。絶対。

 勿論、言葉自体も大切です。今日は人を傷つける言葉が話題になってしまいましたが、良い方向にその人を変える言葉もあります。私自身も色々な方の言葉のお陰で助けられた事もあります。

 両親、小学生の時の塾の先生、ピアノの先生、研修医の時の患者さん、心臓の楽しさを教え、かわいがって下さった教授、厳しく熱血指導の指導医達、患者さん・その御家族などなどです。
 前向きで明るい言葉は時として、その人間の実力以上の結果を引き出したりする事もあります。リハビリテーションはそうじゃないかな。だって重症患者さんで「ちょっとずつリハビリ進んでますね。もっと行けますか?折角だからどこまでできるか楽しみですね!」ってお話ししていたら、私の想定以上の快復を果たされて退院された方もおいでです。
 カテーテルも経験された方は御存知でしょうが、局所麻酔です。余裕があるときは患者さんがリラックスできるように話題を探しています。声色、話の内容、大切です。

 どうやら言葉は人を伸ばしたり、助けたりする事もあれば、心を殺すこともあるようですね。正に両刃の剣。でもそれを良い剣にするのか悪い剣にするのかは剣が悪いのではなく、剣を扱う人間次第ってところでしょうか。

 私も医療従事者の端くれ、言葉を扱う仕事をしております。言葉は見えない物だからこそ気をつけて扱わないといけないですね。
 最後に、その若くして亡くなった女性の安らかな御冥福を祈ります。

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